オレオサイエンス
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25 巻, 11 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
特集序言
特集総説論文
  • 今井 浩孝
    2025 年25 巻11 号 p. 465-472
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/02
    ジャーナル フリー

    我々はGPx4欠損細胞死が,二価鉄を介さない脂質酸化依存的細胞死を誘導することを見出し,リポキシトーシスと名付け,その細胞死実行Lipo遺伝子およびリポキシトーシス誘導剤や阻害剤を見出してきた。このようにGPx4とビタミンEにより制御される脂質酸化依存的細胞死には,少なくとも鉄の依存性の違いから,フェロトーシスとリポキシトーシスの2つの異なる経路が存在することが明らかとなりつつある。今後,病態においても,両者を区別することにより新たな治療法の選択が可能になる。

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  • 伊藤 隼哉
    2025 年25 巻11 号 p. 473-479
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/02
    ジャーナル フリー

    グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)は,リン脂質ヒドロペルオキシドを還元する酵素として細胞膜脂質を酸化から守り,フェロトーシスの中心的な制御因子として知られている。しかし,他のペルオキシダーゼがフェロトーシス防御に寄与するかどうかは不明であった。我々は,GPX4を欠損した細胞においても依然として相当量のリン脂質ヒドロペルオキシド還元活性が残存することを見出し,GPX4以外の過酸化脂質還元酵素の存在を示唆した。そして,その候補分子として,リン脂質ヒドロペルオキシド還元活性が報告されているペルオキシレドキシン6(PRDX6)に着目し,そのペルオキシダーゼ活性を評価した。その結果,PRDX6はペルオキシダーゼ活性を有するもののGPX4と比較してその活性ははるかに小さかった。一方で,PRDX6の遺伝子欠損はがん細胞のフェロトーシス感受性を著しく増加させた。その機構として,PRDX6は従来知られているペルオキシダーゼ活性に加え,セレン運搬タンパク質として機能し,細胞内セレンの取り扱いを促進し,GPX4を含むセレノプロテインへの効率的なセレン取り込みに貢献することが明らかとなった。この役割はin vivoでも裏付けられ,PRDX6欠損マウス脳でのGPX4発現低下や,PRDX6欠損腫瘍異種移植モデルでのフェロトーシス感受性上昇として確認された。これらの知見から,PRDX6は細胞内セレン運搬タンパク質としてはたらき,フェロトーシス感受性を決定する重要な因子であることが示された。

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  • 平田 祐介, 松沢 厚
    2025 年25 巻11 号 p. 481-486
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/02
    ジャーナル フリー

    共役脂肪酸は抗腫瘍作用を有することが知られてきたが,その具体的な作用機序については不明であった。本研究では,α-エレオステアリン酸などの共役脂肪酸がミトコンドリアにおける活性酸素および過酸化脂質産生を惹起することで,シャペロン介在性オートファジー(CMA)を介してグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)の分解を促進し,制御された細胞死「フェロトーシス」を誘導することを明らかにした。本作用は,CMAの必須因子であるLAMP2Aの遺伝子欠損や,ミトコンドリアROSの消去によって抑制された。免疫不全マウスへのがん細胞の皮下移植実験では,α-エレオステアリン酸を豊富に含む桐油の経口投与により,野生型細胞由来の腫瘍の増殖は抑制され,GPX4の発現減少や過酸化脂質産生の増大が認められた一方で,LAMP2A欠損細胞由来の腫瘍ではこれらの効果は認められなかったことから,本機構の個体レベルでの抗がん作用における重要性が示された。本研究成果は,世界的に注目を集めるフェロトーシスを活用した新たながん予防・治療戦略の創出に繋がる重要な基礎的知見である。

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  • 山田 直也, 唐澤 直義, 高橋 将文
    2025 年25 巻11 号 p. 487-493
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/02
    ジャーナル フリー

    フェロトーシスは鉄依存的脂質過酸化に依存する新しい細胞死であり,肝虚血再灌流障害や薬物性肝障害,脂肪性肝炎などの肝病態に深く関与する。我々は全ゲノムCRISPRライブラリースクリーニングにより,7-dehydrocholesterol reductase(DHCR7)が肝フェロトーシスの新規制御因子であることを見出した。DHCR7阻害により,基質である7-dehydrocholesterol(7-DHC)が細胞内に蓄積し,その強力なラジカル捕捉能を介して細胞膜脂質過酸化を代償することで,フェロトーシスを抑制することを示した。さらにマウス肝虚血再灌流およびアセトアミノフェン肝障害モデルで肝保護効果を確認した。これらの知見は,DHCR7/7-DHC軸が肝臓特異的なフェロトーシス制御経路であることに加えて,正常肝細胞ではDHCR7の阻害が保護的に働く一方で,悪性腫瘍ではフェロトーシス抵抗性を高め得ることを示唆する。このような細胞種特異性と二面性をいかに読み解き,病態や目的に応じて応用するかが,今後のフェロトーシスを標的とした治療戦略を考える上で不可欠な視点である。

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  • 松岡 悠太
    2025 年25 巻11 号 p. 495-502
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/02
    ジャーナル フリー

    フェロトーシスは鉄依存的に進行する細胞死機構であり,過剰な脂質過酸化を特徴とし,多くのヒト疾患や臓器病態への関与が示唆されている。しかし,脂質過酸化の評価には侵襲的な組織サンプリングを要するため,ヒトにおけるフェロトーシスの非侵襲的検出は極めて困難であった。

    本研究では,oxidative volatolomicsを用いて,フェロトーシス過程で産生される揮発性酸化脂質(volatile oxidized lipids; VOLs)の包括的解析を行った。多価不飽和脂肪酸由来VOLsは鉄依存的脂質過酸化を介して生成され,フェロトーシスの進行に伴い細胞外へ放出された。これらのVOLsはアセトアミノフェン誘発性肝障害や代謝異常関連脂肪性肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis; MASH)のマウス肝フェロトーシスにおいて特異的に生成され,さらにMASH患者の呼気中においても検出された。鉄依存的脂質過酸化により放出される特定のVOLsは,in vivoにおけるフェロトーシスの指標となり得るとともに,ヒトにおける細胞健康状態の非侵襲的モニタリングを可能にする呼気バイオマーカーとして今後の応用が期待される。

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