生体分子の圧力感受性と構成単位の多様性との相関性は,生物の環境適応には生体膜脂質が大きな役割を果たしていることを明示する。典型的な生体膜脂質であるリン脂質が形成する二重膜は,様々な外的環境因子に応答して相転移を起こし,その膜状態を変化させることから,リン脂質二重膜の環境適応は,二重膜相転移に関して構築された熱力学的相図により特徴づけられる。リン脂質は,その分子中における官能基(モジュール)部分の構造変化により多種存在するが,基準脂質を選択し,その相図に基づき,分子構造が変化した他のリン脂質のものと比較を行うことで,各リン脂質の分子構造とその二重膜の環境適応の関係を系統的に明らかにできる。本稿では,リン脂質分子へ種々のモジュール構造変化(疎水鎖,鎖結合様式,極性頭部)を導入することにより,高圧力下において見出されるリン脂質二重膜の相変化,すなわち高圧環境適応について説明する。

亜臨界水・超臨界水は,水の反応溶媒としての可能性を,高温・高圧の利用によって大幅に拡張した溶媒である。高速な反応,特殊な溶媒特性,温度・圧力に応じた溶媒特性の調節可能性といった特徴を利用することで,グリーンケミストリーに関わる多彩な反応・反応プロセスを実現出来る。本稿は,亜臨界・超臨界水中ではどのような化学反応が起きるのか,それらが溶媒特性とどのように関わっているのかを述べる。また,有機合成,バイオマスの化学変換,プラスチックの分解といった有機反応や金属酸化物微粒子の合成への応用を紹介する。さらに,溶媒特性の変化を利用した反応プロセスについて述べる。

食品高圧加工技術は,高品質製品を実現する非熱的殺菌を実現する非熱的加工技術として実用化した。国内での発展は遅々としたものであるが,海外では,欧米諸国を中心にこの新技術を積極的に活用し,肉製品,ジュース,ペースト類の殺菌の他,ロブスター/貝類の開脱殻等にも活用され,装置の導入も順調に進み,受託加工事業も発展した。この間,食品高圧科学は,食品高圧加工の発展と共に,基礎的知見を集積し,澱粉,蛋白質,脂質,DNA等への影響,微生物不活性化機構等の解明が進むと共に,食品高圧加工技術としての実用化事例を増やした。本稿では,食品高圧加工の特徴について,基礎及び応用の両面から概説した。
