オレオサイエンス
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6 巻, 2 号
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総合論文
  • 橋本 道男
    2006 年 6 巻 2 号 p. 67-76
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    ドコサヘキサエン酸 (DHA, 22 : 6n-3) は神経細胞膜リン脂質の構築成分であるn-3系必須不飽和脂肪酸であり, 正常な脳の発達や視力を維持するのに極めて重要である。脳内のDHAが欠乏すると, 神経伝達系, 膜結合型酵素やイオンチャネル等の活性, 遺伝子発現, およびシナプスの可塑性, 等に著明に影響を及ぼし, そのためにDHA欠乏は, 加齢に伴う脳機能異常, アルツハイマー病, うつ病, ならびにペルオキシソーム病などを誘発する。また, DHAの摂取不足は認知・学習機能を低下させるが, DHA摂取によりこの機能は回復するようである。疫学的研究によると, 魚の消費が少ないとアルッハイマー病の罹患率が高いことから, 魚油, とくにその主成分であるDHAによる神経保護作用が推察される。脳機能障害に作用するDHAの分子メカニズムは不明であるが, DHAを摂取すると, 動物の学習機能障害が改善し, またアルツハイマー病モデルラットやマウスでの学習機能障害が予防, さらには改善される。本論文では, 食餌性DHAによる記憶・学習機能向上効果, さらには臨床応用として脳機能障害の代表的疾患であるアルツハイマー病やうつ病との関連性について紹介する。
  • 小林 哲幸
    2006 年 6 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    n-3系列脂肪酸のDHAは, 脳や神経組織のほか, 網膜に豊富に存在する。n-3欠乏食の摂取によってDHAが減少すると, 視覚機能に障害がでることが, 実験動物やヒトの胎仔 (児) で観察されてきた。では, どのようにDHAは網膜の構造や機能に関わっているのであろうか?n-3脂肪酸欠乏のラット由来の桿体外節では, Gタンパク質共役受容体を介する視覚のシグナル伝達系の感受性が低下していることが, 最近の研究によって示された。n-3脂肪酸欠乏膜では, リン脂質の脂肪酸鎖が高度に整列して自由度が低くなっていることも示唆された。したがって, DHAは膜の物性を最適化して, 膜結合受容体の活性化とその後のシグナル伝達を促進していると考えられる。また, DHAはロドプシンの再生にも役立っていると思われる。一方, DHAから作られる神経防御因子がヒト網膜色素上皮細胞から単離され, 10, 17S-ドコサトリエン (Neuroprotectin D1) と同定された。結論として, n-3系列脂肪酸は視覚シグナル伝達においてたいへん重要な機能を果たしており, さらには, 網膜色素変性などの網膜疾患を防ぐ作用も期待されている。
  • 矢澤 一良
    2006 年 6 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    マリンビタミンとは, ヒトの健康に関与する海産性の生理活性物質を指す。マリンビタミンの中には, DHA, アスタキサンチンやホスファチジルセリン (PS) のような脳機能の改善に役立つ成分がある。
    PSは多くの二重盲検法でのヒト臨床研究により, 脳機能低下, 脳血管型認知症やアルツハイマー病などの改善に良いことが示されている。
  • 脂質による高次脳機能異常改善作用の機序を中心に
    日比野 英彦, 西川 徹
    2006 年 6 巻 2 号 p. 93-105
    発行日: 2006/02/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    D-セリン, D-アラニン等のアミノ酸は, 記憶・学習を初めとする高次脳機能に関与するN-メチル-D-アスパラギン酸 (NMDA) 型グルタミン酸受容体の刺激を介して精神神経障害を改善することが期待されている。しかし, 血液脳関門通過性が低く, 末梢投与により臨床効果を得るためには極めて高い用量を必要とする。この難点を克服する試みとして, D-セリンに脂溶性を賦与し, その血液脳関門通過性を行動薬理学的に評価した。腹腔内投与したアシル化D-セリンは, NMDA受容体阻害剤誘発性の統合失調症モデルである中枢性の異常行動を抑制した。この抑制効果は, D-セリンが選択的に作用する本受容体アロステリック調節部位の拮抗薬を脳室内に注入することにより減弱した。以上の結果から, アシル化D-セリンが血液脳関門を通過して脳内のNMDA受容体機能を賦活することが支持され, 脂溶性を高めたアミノ酸が精神神経疾患の治療に有用な可能性が推測された。
研究備忘録
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