近年, 食生活においてウシやブタなどの家畜由来の脂肪を多く摂取するようになったことから, 家畜に多い飽和脂肪酸が原因の一端といわれている生活習慣病が増加している。エイコサペンタエン酸 (EPA, 20 : 5n-3) やドコサヘキサエン酸 (DHA, 22 : 6n-3) などのn-3系多価不飽和脂肪酸 (n-3PUFA) には, 動物実験や疫学的調査から, 血栓性疾患やガン, 炎症性疾患などの生活習慣病の予防効果が認められていることから, n-3PUFAを食事からより多く摂取することが推奨されている。しかしながら, n-3PUFAは魚, アザラシなどの海獣やアマニ油などの特定の植物油には多く含まれているが, 牛肉や豚肉に含まれる脂肪と置き換えられるほど多く摂取することは, 食習慣上困難である。そこで, われわれの研究グループでは, n-3PUFAを容易に摂取できるように, 遺伝子組換え技術を利用して植物のω3脂肪酸不飽和化酵素遺伝子を家畜に導入し, n-3PUFAを多く含有する家畜を作出することを考えた。ここでは, 動物への植物由来脂肪酸不飽和化酵素遺伝子の導入とその機能的発現に関するわれわれの最近の研究を中心に報告する。
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