気管支喘息では諸種の外界の刺激に対する気道反応が過敏であり, 多くの喘息症例において運動負荷による気管支攣縮の誘発がみられる。特に重症難治性喘息では, その発作は慢性持続型をとることが多く, 運動負荷や環境の変化により容易に気管支攣縮が誘発される。本論文では, 重症難治性喘息を対象に温泉プールでの30分間の水泳訓練を行い, その換気機能に及ぼす影響について検討を加えた。
30分間の水泳訓練前後の換気機能の変化は以下のごとくであった。
1. 訓練開始時には水泳訓練によるFEV
1.0%の低下傾向はみられなかったが, 訓練開始2ケ月および3ケ月後には, 副腎皮質ホルモンの減量および運動量の増加のためか, 訓練後にごく軽度の低下がみられた。
2. %V
50はFEV
1.0%とほぼ同様の傾向を示した。
3. %V
25は訓練開始時には訓線後軽度の低下傾向がみられたが, 訓練3ケ月後には水泳訓練の影響はほとんどみられなかった。
4. %FVCおよび%PEFRは訓練開始時には訓練後軽度の低下を示したが, その後はほとんど変動はみられなかった。
以上の結果より, 30分間の水泳訓練は換気機能にほとんど影響を与えないことが示された。
3ケ月間の水泳訓練の換気機能に及ぼす影響について検討した結果, FEV
1.0, V
50, V
25などの閉塞性換気障害を示す parameter はいずれも3ケ月後に有意の低下傾向を示さず, むしろ改善のみられる症例も観察された。すなわち, 温泉プールでの長期間の水泳訓練により, 自他覚症状の改善と同時に副腎皮質ホルモンの減量が可能であることがある程度示唆された。
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