ハウスダストが原因抗原である気管支喘息12例を対象に, 温泉療法の血清IgE値および吸入抗原に対するIgE抗体価におよぼす影響について検討を加えた。対象を, 1年間温泉療法を施行したグループ (study group) (6例) と温泉療法を行わず経過観察のみ行ったグループ (control group) (6例) に分け, それぞれのグループでIgE値およびIgE抗体価を比較検討した。
1. 平均血清IgE値は, study group では416IU/mlから404IU/mlへと軽度ながら低下する傾向が見られたが, 推計学的有意差は見られなかった。一方, control group では前値408IU/ml, 1年後437IU/mlと少なくても低下する傾向は見られなかった。
2. ハウスダストのRAST score が2+以上の症例数は, study group では1年間の温泉療法により6例から4例に減少したが, control group では変化が見られなかった。
3. ハウスダストに対するIgE抗体価は, study group では, 1年間の温泉療法後8.83±8.23PRU/mlから5.56±6.17PRU/mlへと低下する傾向を示した。一方, control group では, 前値20.2±18.6PRU/ml, 1年後20.6±17.4PRU/mlでは, 変化は見られなかった。
4. ゴキブリに対するRAST score 陽性例は, study group では温泉療法後6例中2例で減少傾向が見られたが, カンジダのRAST陽性例は, study group, control group いずれにおいても変化が見られなかった。
以上の結果より, 温泉療法によりIgE系アレルギー反応はある程度抑制されることが示唆された。
抄録全体を表示