日本温泉気候物理医学会雑誌
Online ISSN : 1884-3697
Print ISSN : 0029-0343
ISSN-L : 0029-0343
78 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
Editorial
総説
  • 佐々木 政一
    2015 年 78 巻 2 号 p. 108-117
    発行日: 2015/02/27
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
      我が国に現存する最古の歌集で、古代の人々の暮らしぶりを今に伝える『万葉集』には、温泉地で詠んだ、あるいはそれと関係する歌が少なからず見られる。
      日本三古湯といわれる「道後温泉」、「白浜温泉」、「有馬温泉」も含まれ、その他に「伊香保温泉」、「湯河原温泉」、「二日市温泉(福岡県)」の計6ケ所の温泉地である。
      本稿ではこれら6ケ所の温泉地で詠まれた、あるいはその地と関連の深い万葉歌について歌碑とともに紹介する。
原著
  • 岩下 佳弘, 與座 嘉康, 亀山 広樹, 向山 政志, 飯山 準一, 北村 健一郎
    2015 年 78 巻 2 号 p. 118-129
    発行日: 2015/02/27
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
      一般にサウナは健康に良いとされ、腰痛や肩こりのみならず、慢性心不全など従来禁忌とされてきた疾患にも適応されるようになってきた。一方、腎不全に対するサウナの影響を検討した論文は1970年代以降みられない。本研究では、5/6腎摘除(Nx)マウスに対する低温サウナの安全性、および腎組織での内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現を確認し、サウナによる腎保護作用について検討する。
      我々は、マウス(C57BL/6)を用いて5/6腎摘除モデルを作成し、サウナ治療群、非治療群に分け、同様に偽手術を施したマウスをサウナ治療群と非治療群に分け、4群(各n=5)で実験を行った。低温サウナ治療には電熱式自然対流温熱装置を用い、41°C、15分間の加温、その後32°C、20分間の保温を12週間連日実施した。
      Nxモデル完成時の血清クレアチニンは偽手術群に比して有意な上昇を示した。12週間のサウナ治療後、サウナ治療群と非治療群でクレアチニンクリアランスに低下傾向がみられたが、統計学的有意差は認められなかった。また、体重、水分摂取量、24時間尿量、血清ナトリウムなどの電解質にも有意差はなく、今回のサウナ設定において明らかな有害事象はなかった。収縮期血圧、尿タンパクいずれも有意差は認められず、期待した尿タンパク減少効果は確認できなかった。しかし、eNOS mRNAの発現量は、サウナ治療群で有意な増加が認められた(p<0.05、Nx治療群 vs. Nx非治療群)。 腎でのeNOS mRNAの発現増は輸出入細動脈の温熱性拡張による糸球体にかかる圧ストレス軽減が期待でき、糸球体硬化を生じやすい種では尿タンパク減少が期待できるかもしれない。
  • 美和 千尋, 島崎 博也, 出口 晃, 鈴村 恵理, 川村 陽一, 前田 一範, 森 康則
    2015 年 78 巻 2 号 p. 130-137
    発行日: 2015/02/27
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
      足浴は足部を湯に浸す部分浴の一つである。その効果は暖められた足の部分の血液循環を良くし、疲労、浮腫、冷え性、睡眠に効果がある。この論文では、足浴時の自律神経の変化とその変化に加齢がどのように影響するのかを検討することである。高齢者9名(男性4名・女性5名、平均年齢73.5±8.4歳)、若年者8名(男性8名、平均年齢25.5±3.4歳)の被験者を対象とし、座位にて安静10分間、下腿部を湯温41.2±0.6°Cの湯につけた足浴20分間、足浴の終了後5分間安静を行った。測定項目は鼓膜温、皮膚血流量、血圧と心拍数とした。鼓膜温についてはサーミスターにより外耳道の皮膚温を、皮膚血流量として左側の大腿部(非浸水部)と下腿部(浸水部)をレーザードップラー血流計で、血圧(収縮期・拡張期血圧)と心拍数は自動血圧計で測定した。足浴時の鼓膜温は、若年者では高齢者に比べ、有意に上昇し、皮膚血流量は、両被験者とも下腿部において有意に増加し、若年者は高齢者に比べて有意に大きかった。大腿部の皮膚血流量は若年者のみ有意に増加した。血圧は、若年者では変化しなかったが、高齢者では下降した。心拍数は、若年者では有意な増加が示されたが、高齢者では有意な変化は認められなかった。これらの自律神経機能の変化は、加齢による、脂肪量の増加、筋肉量の低下、血管の柔軟性の低下、受容器の感受性の減弱などが関わっていると思われる。
  • 早坂 信哉, 太田 眞, 田村 京子, 田中 博史, 宮城 修, 遠藤 俊郎
    2015 年 78 巻 2 号 p. 138-146
    発行日: 2015/02/27
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
    背景:正しい入浴法として運動後30分〜1時間の安静を経て入浴することが一般的に推奨されているが、これまで、運動後、入浴する前に安静時間を取ることの有無が、疲労回復にどのような影響があるかは明らかではなかった。そこで、本研究では運動負荷の後、入浴前の安静の有無によって疲労回復、特に血中乳酸値の変化にどのような影響があるかを明らかにすることを目的とした。
    方法:健康な成人男子10名に文書による説明をし、書面に署名をして同意を得たのち、トレッドミルによる運動負荷をBruce法によって行い血中乳酸濃度を高めた後、以下の実験A、Bを行った。(A)運動負荷後60分間の安静を経た後、38°Cの水道水温水に10分間全身入浴を行う。(B)運動負荷後、直ちに38°Cの水道水温水に10分間全身入浴を行い60分の安静を取る。体温、血圧、心拍数、血中乳酸濃度を①実験開始前、②運動負荷後、③実験終了時、に測定した。さらに運動負荷後から実験終了時にかけての血中乳酸濃度低下量とその低下率を算出した。A、Bで各項目の比較をpaired-t検定を行った。
    結果:運動負荷:実験A、Bで最大収縮期血圧、最大拡張期血圧、最大負荷運動強度や最大心拍数に差はなかった。血圧:収縮期血圧、拡張期血圧とも各測定時において有意な差はなかった。脈拍:実験終了時で実験Aの方が有意に脈拍が速かった(実験A vs B: 90.4±18.2 vs 79.6±11.6 bpm、p = 0.04)。その他の測定時では差がなかった。体温:実験終了時で実験Aの方がやや体温が高かった(実験A vs B: 36.4±0.4 vs.36.1±0.3 °C、p = 0.05)。その他の測定時では差がなかった。血中乳酸濃度:実験開始前の血中乳酸濃度が実験A(6.6±4.7mmol/L)は実験B(2.0 ± 1.4 mmol/L)と比較して有意に高かったが(p = 0.02)、運動負荷後、実験終了時では差がなかった。血中乳酸低下量、血中乳酸低下率ともに実験A、Bで差はなかった。
    結論:運動負荷の後、38°Cの水道水温水への入浴前の安静の有無によって血中乳酸低下量、血中乳酸低下率ともに差は認められなかった。運動後の疲労回復には、入浴前の安静の有無は影響がない可能性がある。
報告
  • 出口 晃, 森山 俊男, 伊藤 恭, 卯津羅 雅彦, 西川 浩司, 真塩 清
    2015 年 78 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 2015/02/27
    公開日: 2015/03/25
    ジャーナル フリー
      温泉療法専門医の現状を知るために、日本温泉気候物理医学会研修指定施設にアンケート調査を行った。研修指定施設24施設中21施設(88%)から回答があった。現在、温泉療法専門医のカリキュラムには、学習すべき8つの疾患各論と8つの療法各論が記載されている。Fig. 1、Fig. 2に示すように、単独の施設で多くの疾患各論、療法各論を研修するのは困難である。より良いカリキュラムの構築と多くの施設への普及が重要である。これまで、各学会の研修施設は各学会がそれぞれの学会の基準で研修施設を指定してきた。今後は日本専門医機構の評価・認定部門が研修施設のサイトビジットを行う。カリキュラムを充実させることにより、温泉療法医制度も向上していくものと思われる。
feedback
Top