日本温泉気候物理医学会雑誌
Online ISSN : 1884-3697
Print ISSN : 0029-0343
ISSN-L : 0029-0343
78 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
Editorial
総説
  • —第80回日本温泉気候物理医学会総会記念講演—
    東 威
    2015 年 78 巻 4 号 p. 326-332
    発行日: 2015/10/27
    公開日: 2015/11/12
    ジャーナル フリー
      年1回の学術集会は昭和10年(1935年)に第1回が開かれ、昭和20年は戦争で開かれなかったため今回(2015年)が80回目の集会に当たる。昭和50年に大島良雄教授の40周年記念講演(学会誌39巻)があり、昭和61年には学会より「50年のあゆみ」が出版されているのでその後を中心に述べる。
      組織:大学紛争などがあって昭和40年代に会員数は300名以下にまで減少したが、昭和51年に温泉療法医制度が出来て徐々に増加し、平成27年には1,914名、うち温泉療法医976名、温泉療法専門医221名になった。学会は平成17年に任意団体から有限責任中間法人となり、平成21年に一般社団法人となって「専門医の育成」が目的に付け加えられた。平成16年には温泉療法医に加えて温泉療法専門医制度が始まった。
      学術活動:学会誌は会員数の減少で一時年2回発行になっていたが、会員数の増加に伴って昭和60年度からは年4回発行に復した。学会誌の傾向を見ると、50周年以前に比べて気候医学、温泉化学に関する論文が減り、温熱生理、鍼灸、運動・物理療法、健康増進に関する内容が多くなってきている。平成26年には京都で国際温泉医学会(ISMH)を主催した。
      温泉療法医会は「QOLから見た短期温泉療養の効果」、「入浴習慣と要介護認定者数に関する研究」を行い、それぞれ学会誌65巻、74巻に報告した。
      社会活動:学会が法人として社会的に認知されたことにより、平成17年には環境省より「温泉の禁忌・適応文献調査」を委嘱された。5年にわたり提出した調査報告に基づいて環境省局長通知の「禁忌・適応、入浴の注意事項」が平成26年に改訂された。平成24年には厚労省の科研費により、日本法医学会、日本救急医学会とともに「入浴関連事故調査」を行った。
  • —第80回日本温泉気候物理医学会総会温泉療法医会講演—
    永田 勝太郎
    2015 年 78 巻 4 号 p. 333-340
    発行日: 2015/10/27
    公開日: 2015/11/12
    ジャーナル フリー
原著
  • 安田 大典, 久保 高明, 益満 美寿, 岩下 佳弘, 渡邊 智, 石澤 太市, 綱川 光男, 谷野 伸吾, 飯山 準一
    2015 年 78 巻 4 号 p. 341-352
    発行日: 2015/10/27
    公開日: 2015/11/12
    ジャーナル フリー
    目的:本研究の目的は、大学生の入浴スタイルの違いが、睡眠と作業効率に及ぼす影響を検討すること。さらに、保温増強が作業効率に及ぼす影響を検討することである。
    方法:対象は、普段シャワー浴のみの健常学生18名とした(19.6±0.7歳、平均年齢±SD)。41°Cの浴槽に肩まで浸漬し10分間入浴する群(保温無群:BB)と、入浴後に保温シートと寝袋にて身体を被覆し30分間保温する群(保温群:BBW)について、各々を2週間で実施するcrossover研究を行った。なおWash-out(シャワー浴)期間は2週間とし、平成24年11月〜12月の6週間実施した。測定した項目は、起床時の起床時睡眠感(Oguri-Shirakawa-Azumi sleep inventory MA version; OSA-MA)、主観的入浴効果(Visual Analog Scale; VAS)、作業効率検査(パデューペグボードのアセンブリー課題)の3項目について測定を実施した。起床時の主観的評価は6週間毎朝記載してもらった。作業効率検査は2週間ごとに4回行った。
    結果:OSA-MAのBBおよびBBWは、シャワー浴と比較して有意差はなかった。VASの結果は、BBおよびBBWは、シャワー浴と比較して、熟睡感、身体疲労感、身体の軽快感が有意に高値を示した。パデューペグボードテストは、BBおよびBBWはシャワー浴に比べて有意に高値を示した。
    考察:シャワー浴からバスタブ浴へ入浴スタイルを変えることで睡眠の質が良好となり疲労回復がなされ、その結果、パデューペグボードの作業効率が向上したと考えられる。
  • 渡部 一郎, 渡部 朋子
    2015 年 78 巻 4 号 p. 353-362
    発行日: 2015/10/27
    公開日: 2015/11/12
    ジャーナル フリー
      有酸素運動は、生活習慣病予防や糖尿病治療で有用である。近年、末梢毛細血管観察装置(M320、JMC社、京都)による鮮明な毛細血管血流のリアルタイム動画の観察や血流速度測定が可能となった。健常男子7名に自転車エルゴメーターによる有酸素運動を施行し、皮膚温、手指爪上皮部毛細血管平均血流速度(以下平均血流速度)の測定、毛細血管血流と有酸素運動の関係を検討した。有酸素運動は呼気代謝装置(VMAX29c、Sensormedics社、米国)を用いV-slope法で求めた嫌気性呼吸代謝閾値の90%の運動強度の有酸素運動を20分間施行した。平均血流速度には、運動前後で対応のあるt-検定を用いた。皮膚温はサーモグラフィ(FLIR SC620、FLIR Systems Inc.,米国)による高解像度の全身動画を用いた。心拍数と皮膚温の統計学的検討には、one-way repeated-measure ANOVA、下位検定としてBonferroniの多重比較検定を用いた。有意水準はP<0.05とした。心拍数は、運動前と比較し、運動後4分、7分、10分、11分、13分から20分に有意の増加を認めた。左手第4指温は、運動開始時と比較し、運動終了後6分から10分に有意の上昇を認めた。母趾温は、運動開始時と比較し、運動8分に有意の低下を認めたがその後徐々に改善した。毛細血管血流速度は、運動前124.6±3.4μm/s(平均値±標準誤差;以下同様)、運動後133.1±2.2μm/sと有意の増加を示した。対面で可能な、非侵襲性のサーモグラフィや手指毛細血管血流のリアルタイム動画観察は、患者自身が、運動療法の有効性を理解し、そのモチベーションを高める可能性がある。
feedback
Top