本稿では,乳幼児の母音弁別に関するこれまでの研究を,四つのテーマに沿ってレビューする。まず方法論的な問題を取り上げ,母音の提示方法の違いによって実験結果がどのように変化するかを明らかにする。次に,広範な言語経験にさらされる以前の母音表象に関する研究に触れ,この時期においてさえ,母音弁別が頑健に行われていること,しかし母音コントラストの種類によって弁別の正確性に差がある場合もあること,さらに,乳幼児はカテゴリー内の変化も知覚可能だが,その弁別成績は,二音間の物理的性質の差に対して線形に変化するわけではないことを示す。続いて発達に関する研究をまとめ,発達経験による変化の存在は,行動および神経指標の双方から明らかだが,その変化が生じる正確な年齢については,研究間でいくらかのばらつきがあることを示す。最後に,標準的な発達とそれ以外のケース(言語発達障害リスクとバイリンガル)との比較について述べる。
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