英語から韓国語に入った借用語には様々な音韻現象が観察される。本研究はこれらの現象に関する最近の研究を概観し,未解決の問題点を指摘しながら,新しい解決の方向を示唆するものである。具体的には,原語(英語)と借用語の間の音素対応関係を韓国語の音節構造と関連して考察し,借用語音韻論で常に論議される母音挿入,及びそれと関連する音節構造,挿入母音の多様性,流音の交替,音節末/r/削除などに関する先行研究を検討する。借用語で挿入される母音は,韓国語で最も有標な母音/ɨ/で,これは先行する子音の素性によって[i]または[u]と交替する。韓国語の流音の基底形は/l/ひとつであり,これは音節内の位置によって[ɾ],[n]と交替するか,あるいは削除される。また,英語の音節末/r/は韓国語の借用語表層形では実現されない。これらの問題に加えて,[t]〜[s]の交替,複数借用,硬音化をはじめとする未解決の諸問題に対する解決の糸口を模索する。
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