耳鼻咽喉科展望
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34 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 鼓膜固有層を中心に
    荒井 秀一
    1991 年 34 巻 6 号 p. 595-623
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    病理解剖の際に得られた正常鼓膜および癒着性中耳炎手術の際に得られた癒着鼓膜を光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡によって観察し, 正常鼓膜の一般微細構造を明らかにするとともに, 癒着性中耳炎における鼓膜の病理組織学的変化とくに固有層の病変に注目してこれを (i) 炎症性肉芽型,(ii) 癩痕組織型,(iii) 硝子化型の3型に分け, 各々の病理組織学的な特徴を明らかにした。正常鼓膜の緊張部固有層には, タンニン酸・ウラニール染色法 (梶川) および抗エラスチン標識抗体による免疫電子顕微鏡法により, 少量ではあるが弾性線維が存在することが確認された。また癒着性中耳炎鼓膜では, 表皮層には表皮細胞の増殖・肥厚傾向を, 基底細胞層には釘脚様構造の形成傾向が認められた。固有層では正常な鼓膜に見られる4層性構造が不明になり, 炎症性肉芽型では鼓膜の著しい肥厚と炎症性細胞浸潤および弾性線維の増生を伴う線維性肉芽増殖を, 搬痕組織型では鼓膜の肥厚と弾性線維増生を伴う不規則な膠原線維増生を, 硝子化型では鼓膜の菲薄化と膠原線維および弾性線維の崩壊, 消失ならびに硝子様変性に一致したミクロフィブリル型コラゲンを主とする微細線維状の構造と無定型基質の沈着による広範な置換が認められた。癒着性中耳炎鼓膜で表皮層の肥厚と角化充進が認められた例では, 鼓膜の癒着性内陥により鼓膜内に埋没した表皮層破片が極性を逆転して増殖している所見が認められた。これが, 緊張部型真珠腫に移行する可能性については不明である。癒着性中耳炎で症例により著しい病理組織型の相違が生じる原因は明らかではないが, 主要関連因子として炎症性肉芽型および搬痕組織型では局所生体条件の相違に基づく炎症性変化の強弱や経過の遅速が考えられ, 硝子化型では鼓膜の内陥癒着による牽引で早期から起こった強い循環障害の可能性が示唆された。癒着性中耳炎の病理発生についてはなお不明な点が多く, 各種因子の関与ならびに影響については今後の詳細な検討が必要と思われる。
  • 川名 正博, 高橋 姿, 佐藤 弥生, 佐藤 喜一, 中野 雄一
    1991 年 34 巻 6 号 p. 625-631
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    コンピュータトモグラフィー (CT) は側頭骨病変の分析に重要な役割を果たしている。私達はその膨大な二次元画像の理解を助ける方法としてパーソナルコンピュータ上での三次元化を試み, その臨床的有用性を検討した。
    3症例 (正常例として耳硬化症, 錐体部真珠腫, 巨大な乳突部真珠腫) の側頭骨CTフィルムから側頭骨内の5種類の要素 (側頭骨外縁, 中耳, 乳突蜂巣, 内耳, 真珠腫) をパーソナルコンピュータ上で三次元画像化し, CTフィルムと比較検討した。
    三次元再構築は, 側頭骨内の各器官の立体的な位置関係の理解に役立つだけでなく, 真珠腫による骨破壊の程度の分析にも有用なことがわかった。特に錐体部真珠腫など, むずかしい症例の手術的アプローチの検討に有用であり, 側頭骨病変の診断や治療に今後重要な役割を果たすと思われる。
  • 伊藤 裕之, 若盛 和雄
    1991 年 34 巻 6 号 p. 633-637
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    中枢性の声帯外転障害の3症例を報告した。症例はオリーブ, 橋, 小脳変性症, 線条体黒質変性症, アーノルドキアリ奇形各1例である。3症例ともに気管切開術を行い, 気管Tチューブあるいはレティナで気管切開孔を管理した。3症例ともにほぼ術前と同じ程度に音声が確保された。オリーブ, 橋, 小脳変性症例では気管切開術後に嚥下障害が増悪したが, 輪状咽頭筋切断術により嚥下障害は改善した。
    進行性神経疾患の耳鼻咽喉科領域の合併症を, 耳鼻咽喉科医が参加して, 関連各科の医師との協力のもとで行うシステムを作る必要がある。
  • 小野 幹夫, 若盛 和雄
    1991 年 34 巻 6 号 p. 639-645
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近年, びまん性汎細気管支炎に対するエリスロマイシン少量長期投与療法が確立され, その効果についても認識されるようになった。びまん性汎細気管支炎に副鼻腔炎が高率に合併していることはよく知られている事実であり, 両者の因果関係についても長年論じられてきた。一方慢性副鼻腔炎は時代とともに減少傾向をみせているが, 依然として耳鼻咽喉科領域では大きな比重を占める疾患であり, 保存的療法, 手術的療法ともに抵抗性の難治性副鼻腔炎がまだ多数見かけられる。今回難治性慢性副鼻腔炎に対し, エリスロマイシンの長期投与を試み, その効果および方法, 対象について検討した。33例の難治性慢性副鼻腔炎 (びまん性汎細気管支炎例, 滲出性中耳炎合併例も含む) に対し本治療を施行し, 著効, 有効をあわせて23例に有効であった。また長期使用にかかわらず副作用は極めて軽微かつ少なかった。
  • 木村 恭之, 作本 真, 山本 環, 谷内 信幸, 古川 仭
    1991 年 34 巻 6 号 p. 647-652
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    感冒罹患後の嗅覚障害患者のうちで2ヵ月以上の経過観察ができた34例を対象に臨床的検討を行った。男女比は4: 30で圧倒的に女性が多く, 40歳以上の占める割合は82.3%であった。感冒時の症状では鼻漏が長く続いた症例が多かった。前鼻鏡検査・嗅裂断層写真・針状硬性鏡検査で異常を認めない症例がほとんどで神経性の障害が示唆された。改善率は9/33 (27.3%) と悪く, 改善群と非改善群に分け, 両者間での検査結果等の相違を検討したが予後を確実に判定できるファクターは見いだせなかった。
  • 横田 雅子, 家根 旦有, 宮原 裕, 松永 喬
    1991 年 34 巻 6 号 p. 653-658
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    我々は1985年1月より1989年12月までに当科で診療した味覚障害患者, 男性55例, 女性56例, 計111例について統計的観察を試みた。
    重症度や治療は原因と関係が深く, その原因は口腔内病変, 頭部外傷, 感冒罹患後, 伝導路障害, 全身性, 嗅覚性, 薬剤性, 心因性, 脳血管障害, 原因不明である。この中で, 伝導路障害が最も多く (27%), 口腔内病変, 原因不明と続く。原因別の電気味覚閾値は, 頭部外傷と薬剤性で高く, 全身疾患や心因性では低い。
    電気味覚閾値と濾紙味覚閾値は比較的良好な正の相関を示し, 特に鼓索神経支配領域で相関性が高い。また亜鉛欠乏が検査し得た症例の60%以上で見られた。ZnSO4で治療した9例中8例で改善した。
  • 1991 年 34 巻 6 号 p. 659-670
    発行日: 1991/12/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • 1991 年 34 巻 6 号 p. e1
    発行日: 1991年
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
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