耳鼻咽喉科展望
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34 巻 , Supplement6 号
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  • 特に真珠腫発生について
    溝呂木 紀仁
    1991 年 34 巻 Supplement6 号 p. 463-487
    発行日: 1991/10/15
    公開日: 2011/09/13
    ジャーナル フリー
    中耳真珠腫, 特に上鼓室型真珠腫の成因に関しては, 古来幾多の説が述べられてきた。
    Mckenzieに始まるEpidermoidTheory, Wendtに始まるMetaplasiaTheory, Habermannに代表されるEinwanderung Theorie, Langeの主張するImmigration Theory等, 枚挙に暇がない。通常, 私達が真珠腫に接する時には, 既に成熟した段階のものであり, その成因を説く為には, 発達過程の状態を発見する事が必要である。そしてその本質は, 如何にして外耳道扁平上皮が鼓室内へ侵入したか, 鼓室内の粘膜上皮が扁平角化上皮に変性したかにつきる。この問題について, Berberichの報告以来数多くの実験が行われてきたが, 未だ結論を出す時期にはきていない。
    しかしながら, 1891年Bezoldの報告以来, 耳管機能と真珠腫の成因には深い関連がある事は万人が認める事である。
    この事より, 著者は健康家兎の耳管咽頭口を電気焼灼する事により, 閉塞を試み, 一定期間飼育後, 標本を作成し, 観察をした。使用した家兎は45匹, 88耳, 飼育期間は1日より6ヶ月である。
    その結果, 27例は鼓膜穿孔を起こし, 化膿性中耳炎へと移行したが, 61例は鼓膜穿孔を認めず, その内9例は鼓膜の陥凹を認めた。
    耳管咽頭口閉鎖後, 直ちに中耳腔内に滲出液の存在, 鼓室粘膜の浮腫, 肥厚を認め, その結果鼓室内が陰圧に成っている事が確認されると同時に, 鼓膜には内陥, 突出, 細胞増殖などが観察され, 特に弛緩部に著明である。飼育期間が長期に亘ると化膿性病変へと進行する例が多く, 滲出性中耳炎より化膿性中耳炎の移行が想定される。しかしながら, 一部の標本では, 長期間の飼育にも係らず, 鼓膜穿孔を起こさずに陥凹した病態を呈している。更にこの陥凹した鼓膜の外耳道側に多量の角化物の貯留を認め, 人の上鼓室真珠腫に極似している像を示している。家兎では, 人の鼓室に比べて, 上鼓室, 中鼓室の交通は良く乳突洞の発育もない。鼓膜弛緩部と緊張部の割合も人より大きく, この様な解剖的相違により, 耳管機能障害の影響がより強く鼓膜に現われるものと考えられる。
    耳管機能不全が起きると, 中耳内には陰圧が惹起され, 滲出性中耳炎が引き起こされる。閉塞が強ければ, 鼓膜は穿孔を起こすが, 弱ければ, 鼓膜は弛緩部より内陥し, ここに強度の炎症が加われば化膿性病変へと進行し鼓膜穿孔を起こすと思われるが, 軽度の炎症の場合には, 弛緩部上皮の細胞活性は進みデ鼓膜外耳道側に角化物の堆積を見, 鼓膜の陥凹は更に促進され, 真珠腫形成へと進む。
    以上より, 1次性真珠腫の成因につき, 次の様な結論を得た。
    1) 人の上鼓室真珠腫と思われる病態を動物実験にて再現した。
    2) 真珠腫の成立には耳管機能不全と炎症の存在が不可欠である。
    3) 鼓膜の変化は, 耳管咽頭口を閉塞した際弛緩部に強く現われる。
    4) 真珠腫は鼓膜穿孔のない鼓膜より発生するretractioncholesteatomaである。
  • 林 成彦
    1991 年 34 巻 Supplement6 号 p. 489-501
    発行日: 1991/10/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    ピアルロン酸 (以下HAと略す) は真珠腫の増殖に対して関与することが示唆されている。そこでHAがヒト真珠腫細胞の増殖に影響をもたらすかどうかを, 細胞培養を用いて検討した。
    真珠腫症例6例の真珠腫組織と外耳道組織を培養し, 増殖してきた真珠腫由来細胞, 外耳道由来細胞を分子量100万のHA存在下 (0mg/ml, 10μg/ml, 0.1mg/ml, 0.5mg/ml, 1.0mg/ml, 2.0mg/ml) に培養し, leucine, thymidineの細胞内への取り込みを指標に, HAの濃度と真珠腫由来細胞, 外耳道由来細胞のDNA合成, 蛋白合成との関連を比較検討した。その結果leucineの取り込みは, 真珠腫由来細胞, 外耳道由来細胞ともに, HAの濃度による影響を受けなかった。しかしthymidineは真珠腫由来細胞, 外耳道由来細胞ともに2.0mg/mlの濃度で取り込みが促進し, HAが真珠腫細胞のDNA合成を促進している事が示唆された。またHAの分子量の違いによる真珠腫由来細胞, 外耳道由来細胞のleucine, thymidineの取り込みの反応を検討するため, 3例の真珠腫症例について分子量4~6万のHAをもちい同様の実験を施行した。結果はleucine, thymidineともに0mg/mlから2.0mg/mlのHA濃度では変化がみられなかった。
    以上の結果より, ヒト真珠腫において高濃度の高分子HAが真珠腫細胞の増殖を促進させることが示唆された。
  • 島田 士郎
    1991 年 34 巻 Supplement6 号 p. 503-518
    発行日: 1991/10/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    乳突蜂巣の発育期において耳管機能は蜂巣の発育に影響を与えるであろう。すでに完成された乳突蜂巣では耳管機能と乳突蜂巣の間に関連があるだろうか。そこで穿孔性の慢性中耳炎の耳管換気能とその乳突蜂巣の大きさを調べた。
    外傷性鼓膜穿孔耳11耳と穿孔性慢性中耳炎耳72耳に耳管換気能検査のうち陽圧, 陰圧負荷テスト (i-d test) とopening pressureの測定を行った結果, 明らかに慢性中耳炎の耳管換気能は不良であった。
    正常者170耳と前述した72耳の慢性中耳炎の乳突蜂巣を矩形面積法で計測した。正常者170耳に対してはValsalva法とToynbee法を行った。その両方法とも不良な群と少なくとも一方が良好な群の蜂巣の面積を比較すると有意に後者の方が大きかった。慢性中耳炎72耳では, i.testもしくはd. testのそれぞれの良好群と不良群の面積を比較すると良好群の方が有意に大きく, i-d testともに不良な群の乳突蜂巣の面積は6.7cm2と抑制されていた。
    72耳のうち乳突蜂巣がある程度抑制されている場合, d.testの良好な群の乳突蜂巣より不良な群の方が小さかった。この研究は臨床的にも中耳炎症状態において抑制された乳突蜂巣の耳管は中耳陰圧状態を解除しにくいことが確認できた。
    慢性中耳炎の術前検査としての耳管換気能検査の意義を調べた。72耳のうち術後経過不良耳はi-d testが共に不良な4耳と共に良好な1耳の5耳であり, 耳管換気能不良耳の方が有意に経過不良であった。
    耳管換気能と乳突蜂巣の大きさには関連があり, 術後不良耳はi-dtestが共に不良であった。
  • 乳突腔粘膜, 鼓室粘膜を中心として
    北村 達也
    1991 年 34 巻 Supplement6 号 p. 519-538
    発行日: 1991/10/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    生理的状態下において中鼓室粘膜の杯細胞は極めて少数であり, 上鼓室, 乳突腔に至っては皆無に等しい。著者は, 中耳の慢性炎症病態下における乳突腔, 鼓室粘膜の粘液産生および炎症細胞浸潤について手術時に採取した粘膜をもとに標本を作成し光顕的に検討した。また, 中耳炎の再手術例においては主に前回openmethodが行われていた例を対象にしてradicalcavityに再生ないし移植された皮膚を剥離し, 骨面との間に存在する軟性組織 (結合組織または再生組織) についても同様に検索した。その結果, 慢性炎症下では乳突腔, 上鼓室ρ単層上皮が著明にとは言えないまでも粘液分泌機能を持つ多列性円柱上皮に分化したり, 固有層内に腺構造を形成する所見を認める。更に炎症の遷延化に伴い重層扁平上皮化生を起こしてくる。特に腔の状態 (乳突洞口, tympanic isthmusの狭窄または閉鎖および耳管鼓室口の粘膜肥厚, 肉芽形成) による中耳腔換気障害について検討すると, 乳突腔, 鼓室ともに交通不良群が良好群よりも粘液産生と炎症細胞浸潤のより増加を認める。また再手術例については, 特に前回open methodで手術されている場合のradical cavityにある再生皮膚面が肉芽性所見を示す例では皮膚の直下に粘液産生所見の増加が目立つ。
    以上の所見より次の様な臨床的意味を考えた。
    (1) 中, 上鼓室および乳突腔の上皮は換気不全や炎症に罹患すると杯細胞が増加してくる。しかし, その量は決して多いものではない。
    また, 乳突腔内では粘膜の肥厚, 肉芽増殖を示すが一方, 被覆上皮が剥脱し上皮欠損状態が多くみられる。従って産生される粘液は吸収されることも考えると, 一般の慢性中耳炎例では乳突腔より分泌過多を来して排膿の原因となることは少ないであろう。よって, 手術に際して特殊な例以外乳突腔粘膜を除去, 清掃する必要は少ない。
    (2) 同様に乳突腔が閉鎖されても嚢胞を形成することは殆どない。この点は副鼻腔と大変異なる所見といえる。
    (3) open methodの術後, radical cavityに再生した皮膚はしばしば魔燗を呈する。その多くは乳突腔に存在していた粘膜が皮下に再生し粘液産生活動を保有するためでありradical cavityに問題の多いのは自浄作用の欠落のみではない。
  • コレステリン肉芽腫形成の実験的研究
    関 哲郎
    1991 年 34 巻 Supplement6 号 p. 539-554
    発行日: 1991/10/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    耳管機能不全状態の長期の持続によって, さまざまな病変が鼓膜並びに中耳腔にもたらされる。これらの代表的な続発症, 後遺症としては癒着性中耳炎, コレステリン肉芽腫, 緊張部型真珠腫等があげられるがこれらの疾患の成因については未だ不明の点も多い。本実験ではこれらの疾患が慢性耳管機能不全の後遺症であるとしてみた観点から動物実験的に耳管機能不全状態を長期間維持した際に中耳に引き起こされる中耳の形態学的変化をとらえることによってこれらの疾患の成因について明らかにすることを目的に実験を行なった。
    耳管をブロックする方法は耳管鼓室口を電気凝固し, 自家筋肉片を同部に挿入する方法, 挿入する筋肉片自体に組織接着剤をつけて挿入する方法, 併せて中耳腔の刺激を持続させるために中耳腔にインフルエンザ死菌を注入する方法を用いた。
    実験総数56耳, うち非感染耳は43耳であった。そしてそのうち14耳にコレステリンクレフトの析出を認め, うち3例にコレステリン肉芽腫の形成を認めた。そしてコレステリンクレフトが形成されるための条件として, より完全な閉鎖腔が長期間維持されることが必要であると推察された。またコレステリンクレフトはまず中耳腔貯留液中に出現し, 次にクレフトを中心に異物細胞の浸潤がみられ, これらの細胞成分が増加し, 肉芽組織が形成されるという過程が推測された。中耳腔に肉芽組織が形成され, 鼓膜緊張部と鼓室岬部とが肉芽組織で接着しているものを3例に認めた。これらは癒着性中耳炎の初期の段階であると考えられた。鼓膜の緊張部の癒着を起こすためには鼓膜線維層の消失, 中耳腔粘膜への障害, それに伴う中耳腔, 鼓膜裏面の肉芽組織の形成が必要であると考えられた。
    以上, 耳管を長期間ブロックした際に, コレステリン肉芽腫, 癒着性中耳炎の形成をその一部に認めたということは, これらの疾患と耳管機能不全との間に強い関係があることが示唆された。
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