耳鼻咽喉科展望
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35 巻, 3 号
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  • 森山 寛, 柳 清, 春名 真一, 金田 健作, 鴻 信義
    1992 年 35 巻 3 号 p. 195-203
    発行日: 1992/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    1985年から1991年までの問に内視鏡下の鼻腔整復術を施行した15歳以上の慢性副鼻腔炎 (初回手術例) の術後1年以上経過した112例182側における術後の自覚症状の改善度, 上顎洞病変の改善度, 上顎洞膜様部や節骨洞の治癒状態, 前頭洞開口部などの術後所見ならびに成績について検討した。内視鏡下の鼻内手術は, 節骨洞内の術後所見も良好で上顎洞陰影の改善率も良く, 開放した上顎洞膜様部も広く開存しており, 複雑な形態を有する副鼻腔の病変の手術的治療に内視鏡は欠くことのできないものであることが再認識された。また内視鏡下鼻腔整復術の自覚症状の改善度は, 過去の当教室の裸眼による鼻腔整復術のそれと比較してより良い改善度を示したが, 症状別では鼻漏, 後鼻漏において症状の残る例が見られた。症状や所見の不変例に対する治療をいかに行うかが今後の検討課題として挙げられる。
  • 大西 俊郎, 兼子 幸恵, 橘 敏郎, 江崎 史朗, 府川 和希子
    1992 年 35 巻 3 号 p. 205-213
    発行日: 1992/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    従来の鼻内的副鼻腔手術において最も大切で困難な点は鼻前頭管部の処置であった。内視鏡的鼻内手術の導入により, 初めてこの部を明視下に操作することが可能となり, この部の手術を確実かつ安全に施行するための手技を確立することが必要となっている。この報告は先ず内視鏡的手術に必要な節骨洞の解剖学的事項を示し, 内視鏡的節骨洞微細手術の経験を通じ, 鼻前頭管部の開放の方法について検討し, その手順を報告した。全体で190例 (男136例, 女54例) の慢性副鼻腔炎症例に対し311件の内視鏡的節骨洞微細手術を施行したが, その中, 177件 (57%) において鼻前頭管部の開放を施行した。術前に前頭洞の病変は190例中の67例 (36%) に認めた。術後反応が落ち着いた3ヵ月以降において, 前頭洞孔の開通を視認できたのは開放側177側中の32側 (18%) であったが, 術後に前頭洞炎の症状を呈した症例は皆無で, この術式による前頭洞孔の術後閉塞は起こり難いと思われ, 前頭洞炎の治療手段として有用であると思われた。
  • 伊藤 裕之, 白沢 昭弘, 八代 利伸, 小林 毅, 金田 健策
    1992 年 35 巻 3 号 p. 215-219
    発行日: 1992/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    外来を訪れた眩量患者79例を対象として, 受診時の日常生活上の障害について面接により調査した。79例中25例 (31.6%) は12項目の全てで障害となることはなかった。「細かい物をみる」に障害があったものが27例 (34.2%),「ゆっくり動くものを見る」に障害があったものが4例 (5.1%),「速く動くものを見る」に障害があったものが30例 (38.0%) であった〇また,「テレビで動きの速いものを見る」に障害があったものが22例 (27.8%),「テレビで動きの遅いものを見る」に障害があったものが4例 (5.1%),「縦縞のカーテンを見る」に障害があったものは19例 (24.1%) であった。「からだをゆっくり動かす」ことに障害があったのは9例 (11.3%),「からだをはやく動かす」に障害があった症例は30例 (38.0%),「ゆっくり歩く」に障害があったものが6例 (7.6%),「速く歩く」に障害があったもの21例 (26.5%),「階段の昇降」に障害があったものは23例 (29.1%) が障害となると答えた。「ワープロやコンピューターの操作」に障害があったものは15例 (19.0%) であった。眩量のリハにおいても, 日常生活における動作や行為の障害の面からの自覚的評価が必要である。評価をリハビリテーションに有効に活用するためには, 患者の職業や日常生活, 障害の程度に対する満足度, 障害となる理由なども調査すべきである。
  • 平均値, 標準偏差, 最頻値, 中央値について
    桐谷 伸彦, 井上 秀朗, 浅野 容子, 関 博之, 本多 芳男, 池田 義雄, 堂満 憲一
    1992 年 35 巻 3 号 p. 221-228
    発行日: 1992/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    加齢による聴力変化については過去に多くの報告があったが, 1982年にオージオメータのJIS規格が改訂されてからの報告は少ない。東京慈恵会医科大学健康医学センター相談部を訪れた, 人間ドックならびに入社検診受診者6922人 (13844耳) の気導純音聴力検査データについて, 平均値, 標準偏差, 最頻値, 中央値を求め, 検討した。
    いずれの値も高年齢, 高音域ほど増加し, 中-低音域では加齢変化は少なかった。
    平均値, 最頻値, 中央値ともに代表値として一長一短があった。平均値, 標準偏差は他の報告と比較してやや大きい場合が多かったが, 大差はなかった。最頻値は特に高年齢, 高音域で二峰性を示すものがみられた。
  • 松根 彰志, 内薗 明裕, 島 哲也, 清田 隆二, 古田 茂, 大山 勝
    1992 年 35 巻 3 号 p. 229-235
    発行日: 1992/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    涙嚢ないしは下顎原発の悪性黒色腫は, 文献的には比較的稀で, 過去14年間に当科で経験した12例の悪性黒色腫の中でも経験していない。今回の症例を通じて, MRIが悪性黒色腫の画像診断に有効性が高いことが窺われた。すなわち, パルス系列の変化により, 悪性黒色腫に特徴的な信号強度が得られ, 従来のX線CTと比べ腫瘍の特徴と進展範囲がより正確に診断できることが再確認された。これら稀有な悪性黒色腫の治療例を中心に, MRIの診断的評価について若干の考察を加えて報告した。
  • 擬声語の母音・子音と, 耳鳴周波数及び耳鳴同定音の純音・雑音性との関係
    増野 博康, 大内 利昭, 小形 章, 吉原 重光, 佐藤 靖夫, 神崎 仁, 國弘 幸伸, 佐藤 彰芳
    1992 年 35 巻 3 号 p. 237-244
    発行日: 1992/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    無難聴性及び内耳性難聴に伴う耳鳴計370を対象として, 耳鳴患者自身の擬声語表現 (自発的擬声語) を母音別, 子音別に分析して, ピッチ・マッチ検査で同定された耳鳴周波数及び耳鳴同定音の純音・雑音性との対応を検討した。得られた結果は以下の通りである。
    1) 自発的擬声語の母音で最も使用頻度が高かったのは (イ): 64.3%, 次いで (ア): 20.3%であった。
    2) 自発的擬声語の子音で最も使用頻度が高かったのは (Z): 31.1%, 次いで (K): 22.2%であった。
    3) 自発的擬声語の母音は主に耳鳴周波数と関係があると考えられた。
    4) 自発的擬声語の子音は主に耳鳴同定音の純音・雑音性と関係があると考えられた。
  • 1992 年 35 巻 3 号 p. 245-252
    発行日: 1992/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
  • その研究からみた使用上の諸問題
    真崎 正美
    1992 年 35 巻 3 号 p. 253-258
    発行日: 1992/06/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    現在, 市販されている点耳薬の有効主成分は抗菌剤とステロイドであるがそれ以外の配合成分の物理的, 化学的性状にも注意を払う必要がある。動物実験で中耳腔に注入された点耳薬は形態的にも, 機能的にもかなり強い障害を鼓膜, 中耳腔, 前庭, 蝸牛に惹起する。そのため鼓膜穿孔耳や鼓膜チューブを挿入した症例で耳管機能の良好な場合には点耳薬が容易に中耳, 内耳へ到達することを充分考慮して使用する必要がある。中耳, 内耳へ影響を及ぼす薬剤はアミノ配糖体をはじめとする抗菌剤, propyleneglycolなどの配合成分や消毒剤も報告されており, 安易な局所投与は慎まなけれぼならない。
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