耳鼻咽喉科展望
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35 巻, Supplement5 号
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  • 鼻腔整復術の検討
    大前 隆
    1992 年 35 巻 Supplement5 号 p. 371-393
    発行日: 1992/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    近年高度鼻副鼻腔炎の減少, 慢性副鼻腔炎の軽症化が唱えられるが, 尚手術療法を必要とする患者は少なくない。それ故最近では保存的手術法が増加しているとされ, 当院においても, ここ数年では根治手術は激減しており, 鼻腔側壁整復術 (高橋法) 即ち保存的鼻内経由手術が増加している。増加したもう一つの大きな理由は最近の内視鏡の発達によって, 鼻内手術に於いて今日まで最大の課題であった視野が狭いという問題から生じる粘膜遺残, 自然口開放不十分等の諸問題を解決する充分な効果が得られ微細かつ正確な手術が容易となった事, また術前においてその病態の詳細観察が可能となり以前以上にその手術法の適応が広がった事にもよると考えられるが, 今日までの単洞的な手術理論による根治的手術を主とする法では, 再発を始めとして術後治療効果には多くの問題を残してきた事も大きな理由となろう。
    鼻科手術は本来高橋が指摘する様に, 鼻副鼻腔全体を鼻中隔をはさみ左右副鼻腔を一体化した一臓器としての考えの元にその機能の特性を充分理解した上に行う事が基本であるとし, その実際は鼻中隔手術を中心に左右の鼻副鼻腔側壁整復術を行う。無論鼻副鼻腔手術療法に関しては, 尚多くの問題を残しているが, 今回我々は当院における内視鏡下鼻副鼻腔手術成績 (昭和53年~63年) 555例について, 過去の整復術 (慈大) と比較検討を行った所, 自覚症状 (全般) の改善度では慈大成績をさらに上回り過去11年間の鼻手術を受けた患者のうち, その約91.5%は術後の結果に満足を示し, 不満足は6.1%である事がわかった。しかも患者の自覚症状として最も主たる鼻閉については90%以上の治療効果が10年以上に認められた。
    今回の調査結果から, 内視鏡下鼻腔整復術は今日では, 最もその自覚症状を改善する上には手術侵襲の少ない, 理想的かつ有効な手術法のひとつと考える。
  • 沖中 芳彦, 関谷 透, 猪熊 哲彦, 遠藤 史郎, 平田 哲康
    1992 年 35 巻 Supplement5 号 p. 395-398
    発行日: 1992/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    小児滲出性中耳炎症例に対し, 鼓膜穿刺・切開を行わずに, S-CMCシロップを30mg/kg/日4週間連続投与し, その臨床的効果を検討した。対象は25名49耳で, 年齢は11ケ月から7歳で, 平均年齢は4.3歳であった。
    1) 鼓膜の色調は35%で正常となり, 鼓膜の陥凹は38%で改善を認めた。
    2) 標準純音聴力検査で10dB以上の改善を認めたものは43%であった。
    3) ティンパノグラムでは58%に所見の改善を認めた。
    4) 総合改善度は, 中等度改善以上で40%, 軽度改善以上で64%であった。
    5) 副作用は全例に認めなかった。
    以上の成績より, S-CMCシロップは小児滲出性中耳炎の保存的治療に有用な薬剤であると考えられた。
  • 塩酸アゼラスチンの有効性について
    森本 賢治, 成田 慎一郎, 鈴木 敏夫, 形浦 昭克, 砂金 秀充, 上村 正晃, 東 英二, 木村 徹男, 萩原 秀夫
    1992 年 35 巻 Supplement5 号 p. 399-407
    発行日: 1992/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    小児滲出性中耳炎に対する抗アレルギー剤塩酸アゼラスチンの臨床的有効性, 安全性について検討した。小児滲出性中耳炎患児66例に対し, 塩酸アゼラスチン2mgを8週投与し, 自覚症状 (耳鳴, 難聴, 耳閉感), 他覚所見 (内陥, 発赤, 貯溜液, 可動性, ティンパノグラム, 気導聴力) から, 改善率を5段階に評価し検討したところ,「中等度改善」以上は48.5%,「軽度改善」以上は68.2%であった。アレルギー性疾患, アデノイド, 慢性副鼻腔炎の合併の有無による改善率の比較を行ったが, これらの合併症があることにより, 改善率の低下を見た。
    これらの結果から, 塩酸アゼラスチンの滲出性中耳炎に対する働きは, 単に1型アレルギーに作用するだけではなく, むしろそれ以外の作用, たとえばIII型アレルギーへ関与の可能性が推察された。以上より小児滲出性中耳炎の保存的治療のひとつとして, 塩酸アゼラスチンは充分に期待しうる薬剤であることが認められた。
  • 高坂 知節, 柴原 義博, 稲村 直樹, 富岡 幸子, 田中 正浩, 丹野 哲子, 湯浅 涼, 末武 光子, 小野寺 亮, 荒井 英爾, 古 ...
    1992 年 35 巻 Supplement5 号 p. 409-422
    発行日: 1992/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    通年性鼻アレルギーに対するWAL 801 CL (塩酸epinastine) 10mg1日1回の長期投与を含めた有効性および安全性を検討した。
    解析対象症例は31例で, 本剤を原則として4週間投与し, 可能な症例でより長期間追跡調査を行ったところ, 最長10週間に達し, 8週間以上の長期追跡調査が出来た症例は10例であった。
    最終全般改善度は,「著明改善」7/29例 (24.1%) 「中等度改善」以上17/29例 (58.6%) であった。最終時点での鼻症状の改善率はくしゃみ発作56.0%, 鼻汁44.8%および鼻閉60.7%であった。
    副作用は1/31例 (3.2%) に眠気が見られ, 一過性で投与継続中自然に消失し, 安全性に「問題なし」であった。
    以上より, WAL801CLは通年性鼻アレルギーに対して1日1回1錠の投与で高い有効性が期待でき, 長期間投与に耐えられる有用性の高い薬剤であると考えられた。
  • 山崎 勤, 林 光夫
    1992 年 35 巻 Supplement5 号 p. 423-435
    発行日: 1992/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    新しい中枢筋弛緩剤チザニジンを, 肩凝りを訴えていたメニエール病患者34名と11名の末梢前庭神経障害患者に投与し, 肩凝りに対する効果を検討した。その結果, 最終全般改善度で, 著明改善例, 中等度改善例の合計が, メニエール病患者で67.6%, 末梢前庭障害患者では45.5%であった。有用度についても, 同様な結果が得られた。以上の結果から, チザニジンはメニエール病患者の肩凝りに対して特に有効であり, 更にめまいを訴える末梢前庭障害患者の肩凝りに対しても有効であることが実証された。
  • 石田 正直, 鵜飼 幸太郎, 坂倉 康夫
    1992 年 35 巻 Supplement5 号 p. 437-445
    発行日: 1992/08/15
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    能動的感作モルモットの実験的アレルギー性鼻炎に及ぼす麻黄附子細辛湯エキスの影響について検討した。得られた成績を以下に示す。
    1) 麻黄附子細辛湯エキス30~1000mg/kg/time/dayの18日間連日経口投与は, 用量依存的にhistamine点鼻に対する鼻粘膜過敏性閾値を上昇させ, 特に300および1000mg/kgでは有意であった。
    2) 麻黄附子細辛湯エキス30~1000mg/kg/time/dayの21日間連日経口投与は,
    (1) 鼻粘膜からのhistamine遊離に対しほぼ用量依存的に抑制を示し, 特に300mg/kgで有意に強い抑制を示した。
    (2) 鼻粘膜からの色素漏出に対し抗原誘発後0~10分および10~20分でほぼ用量依存的に抑制を示し, 特に1000mg/kgでは強い抑制を示した。
    (3) 鼻腔抵抗の上昇に対しても, 反応惹起後10, 20および30分のいずれにおいても, ほぼ用量依存的に強い抑制を示した。
    以上の成績から, 麻黄附子細辛湯の臨床におけるアレルギー性鼻炎に対する有効性が示唆された。
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