近年高度鼻副鼻腔炎の減少, 慢性副鼻腔炎の軽症化が唱えられるが, 尚手術療法を必要とする患者は少なくない。それ故最近では保存的手術法が増加しているとされ, 当院においても, ここ数年では根治手術は激減しており, 鼻腔側壁整復術 (高橋法) 即ち保存的鼻内経由手術が増加している。増加したもう一つの大きな理由は最近の内視鏡の発達によって, 鼻内手術に於いて今日まで最大の課題であった視野が狭いという問題から生じる粘膜遺残, 自然口開放不十分等の諸問題を解決する充分な効果が得られ微細かつ正確な手術が容易となった事, また術前においてその病態の詳細観察が可能となり以前以上にその手術法の適応が広がった事にもよると考えられるが, 今日までの単洞的な手術理論による根治的手術を主とする法では, 再発を始めとして術後治療効果には多くの問題を残してきた事も大きな理由となろう。
鼻科手術は本来高橋が指摘する様に, 鼻副鼻腔全体を鼻中隔をはさみ左右副鼻腔を一体化した一臓器としての考えの元にその機能の特性を充分理解した上に行う事が基本であるとし, その実際は鼻中隔手術を中心に左右の鼻副鼻腔側壁整復術を行う。無論鼻副鼻腔手術療法に関しては, 尚多くの問題を残しているが, 今回我々は当院における内視鏡下鼻副鼻腔手術成績 (昭和53年~63年) 555例について, 過去の整復術 (慈大) と比較検討を行った所, 自覚症状 (全般) の改善度では慈大成績をさらに上回り過去11年間の鼻手術を受けた患者のうち, その約91.5%は術後の結果に満足を示し, 不満足は6.1%である事がわかった。しかも患者の自覚症状として最も主たる鼻閉については90%以上の治療効果が10年以上に認められた。
今回の調査結果から, 内視鏡下鼻腔整復術は今日では, 最もその自覚症状を改善する上には手術侵襲の少ない, 理想的かつ有効な手術法のひとつと考える。
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