耳鼻科領域の抗生物質の組織内移行については, 骨や軟骨などの血管の分布が少ない組織への移行を調べた報告は少ない。今回われわれは, 62例の手術症例を対象に術前にメイセリン (セフミノクスナトリウム, 以下CMNX) を投与し, 術中に得た側頭骨, 上顎骨, 鼻中隔軟骨, 口蓋扁桃を検体として組織内移行を検出し有効性を検討した。その結果, 扁桃組織への移行については他の報告と大きな差がなかった。また, 部位で比較すると, 1g投与で組織内濃度は高いものから口蓋扁桃, 鼻中隔軟骨, 側頭骨, 上顎骨の順であり, 扁桃と鼻中隔軟骨で高く, 上顎骨と側頭骨で低い値を示した。移行率は扁桃, 鼻中隔軟骨, 上顎骨, 側頭骨の順であった。側頭骨へのCMNXの移行は他の臓器と比較して低かったが, 投与量に応じて組織内濃度が増加するため目的細菌に応じた投与量の設定が可能であり, 術後感染予防としてCMNXの有効性と安全性を確認した。
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