鼻アレルギーにおける抗原に対する鼻粘膜の過敏性を, 感受性と反応性に分けて考えることができる。この反応性を非飛散期のスギ花粉症における鼻粘膜誘発試験により検討した。また, 実際の季節時の症状との相関についても検討した。
同一抗原量に1日のうちに何度も反復曝露されることを想定し, スギ花粉非飛散期に18名のボランティアを対象に1時間毎6回の連続誘発試験を行った。有意差はないものの誘発ごとに症状はやや軽減化傾向を示した。6時間までの鼻洗浄液中のトリプターゼ値に変化はみられなかったが, ECP値は誘発高度群において5時間目, 6時問目に有意な上昇を認めた。
同一抗原量が連日反復曝露されることを想定し, スギ花粉非飛散期に23名のボランティアを対象に6日間連続誘発試験を行った。誘発症状は経日的に有意な上昇を示し, 鼻洗浄液中のトリプターゼ値は誘発高度群で有意な上昇を認め, 誘発症状の高度化と一致した。ECP値は誘発高度群で有意な上昇を認め, 反応性の充進に関与するものと思われた。また, スギ花粉季節時に約3ヵ月間6日問連続誘発を行った者のうち8名を対象に無治療で観察した。この飛散期における無治療での経過観察を自然経過とした。くしゃみ回数の変化は誘発高度群と軽度群は明らかに分離し, 軽度群では飛散数に応じた症状を呈するのに比べ, 高度群では症状は有意に高度で飛散ピーク後の減少期にも症状は持続しており, 反応性の充進によるものと思われた。
反応性および反応性充進の個人差は, 非飛散期の連続誘発によって知りうることを証明し, 誘発高度群, 軽度群の分類は実際の花粉飛散時の症状経過と一致するものであった。
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