アレルギー性疾患の発症や増悪に対する環境汚染物質の関与を明らかにするために, 環境汚染物質の肥満細胞への影響を検討した。環境汚染物質としてデイーゼル排気粒子 (DEP) およびその構成成分であるベンゾ (a) ピレン, 1-ニトロピレンに注目し, マウス骨髄由来培養肥満細胞 (BMMC) の増殖およびサイトカイン産生に及ぼす影響を検討した。
DEP, 1-ニトロピレンはBMMCの増殖に対して促進的な作用を示さなかったが, 0.1, 0.5μg/mlベンゾ (a) ピレン存在下で72時間培養後の細胞数は有意な増加を認め, BMMCの増殖に対して促進的な作用を示した。
カルシウムイオノフォア刺激によりIgEレセプターを介さずに引き起こされたBMMCからのIL-4産生は, 0.8 μg/m
l DEP, 0.1, 0.5 μg/m
lベンゾ (a) ピレン, 0.1, 0.5, 1 μg/m
l 1-ニトロピレン存在下で有意な増加を認めた。IL-6産生はベンゾ (a) ピレン, 1-ニトロピレン存在下では増加がみられなかった。
抗原刺激によりIgEレセプターを介して引き起こされたBMMCからのIL-4産生は, 0.4, 0.8μg/ml DEP存在下で有意な増加を認め, 0.5, 1 μg/m
lベンゾ (a) ピレン, 0.1, 0.5, 1μg/m
l 1-ニトロピレン存在下で増加傾向を認めた。
DEPおよびその構成成分であるベンゾ (a) ピレン, 1-ニトロピレンなどの環境汚染物質は, 肥満細胞の増殖および機能, 特にそのサイトカイン産生に影響を及ぼし, アレルギー性疾患の発症や増悪に関与している可能性が示唆された.
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