インフォームド・コンセントは十分に知らされた上の同意という意味であるが, 現在の患者医者関係は大きく変貌しつつあり, インフォームド・コンセントなしの医療は不可能となった。更に, 今後は医療の自由化を控えており, インフォームド・コンセントは経営戦略としてもその重要性を増してくることが予想される。
当科では, 患者説明の工夫として, 病気の説明, 治療の目的と提供できる治療方針, 治療に伴う可能性のある危険, 患者用クリティカルパスなどが記載されている「疾患説明書」を作成し, 利用している.疾患毎に説明すべき内容があらかじめ印刷されているので, 説明漏れの防止, 省力化と効率化, 同意の確認等に有効であると考えられる。
大学病院医師に対して, 耳鼻咽喉科外来診療におけるインフォームド・コンセントについての聞き取り調査を行った。調査対象の医師の経験年数は1年から14年であった。外来診療におけるインフォームド・コンセントの達成度は70%以上が概ねできているとの回答であった。しかし, 外来診療において, 説明が求められることのある医療費についての知識は不足している傾向があった。大学では医療費に関する教育は不十分であることが多く, 質の高い説明を行うためには, 今後, 教育項目にとり入れる必要があると思われた。
耳鼻咽喉科という感覚領域の守備範囲を担当し, さらに多数の患者と接する中で, インフォームド・コンセント (十分に的確な説明による納得と同意) は常に念頭に置かなければならない。しかし, その根底には患者との信頼関係がなくてはならない。道具や技術は手段であって目的ではない。インフォームド・コンセントは医師が患者の心を掴むところから始まる。
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