ネブライザー療法は, 病変部位に薬剤が直接到達して効果を発現するという観点で理想的であり, 繁用されている。テイコプラニンはMRSA感染対策に有用な薬剤であるが, 噴霧不可能という未検証の情報のため, ネブライザー吸入療法は行われていない。本研究は, グリコペプチド系抗生物質のテイコプラニンのネブライザー療法を目的として, 薬剤特性の表面張力と超音波ネブライザー使用時における薬剤噴霧効率を比較検討した。
テイコプラニン試験液は, 従来型の超音波式ネブライザーで噴霧ができず, 高濃度ほど表面張力は減少した。新型の超音波ネブライザーにより薬剤噴霧効率97%で噴霧され, 薬剤安定性も保持された。従来からの超音波式ネブライザーで噴霧困難な原因として, 表面張力が影響することが示唆された。一方, コンプレッサー式ネブライザーでは噴霧されるものの, 噴霧効率70%以下で, 薬液層に残存薬を多く認めた。新規に開発された超音波ネブライザーでは, テイコプラニンを噴霧することを可能とした。また, 噴霧効率も格段に向上していることが併せて明らかとなり, テイコプラニン吸入療法を実践する可能性が示唆された。抗生物質の吸入療法を漫然と実施することなく, 吸入療法が必要とされる患者に新たな選択肢として活用することの意義は大きいことを強調したい。
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