頭頸部癌患者における重複癌の発生率は比較的高く, とくに下咽頭癌における重複癌は30%以上である。しかも食道癌を同時ないし異時重複することが多く, 下咽頭癌治療時に早期食道癌が診断されることや, 逆に食道癌治療時に早期の下咽頭癌が診断されることも報告されるようになってきた。次いで中咽頭癌も重複癌を来す率は高い。そこで, 中・下咽頭癌患者における食道癌の重複について検討を行った。奈良医大における1986年から1999年までの下咽頭癌64例と中咽頭癌37例, 大阪府立病院における2000年以降の下咽頭癌25例と中咽頭癌5例を対象とした。下咽頭癌での重複癌は28例で食道癌は13例であった。既治療例が3例, 同時8例, 治療後2例であつた。中咽頭癌では重複癌は10例で食道癌は4例であった。同時2例, 治療後2例であった。中咽頭癌患者, 下咽頭癌患者で食道癌を重複した症例の飲酒指数 (Sake index) は非重複癌例に比して有意に高かった (p<0.01) 。
中・下咽頭癌に対しては食道癌のスクリーニングはますます重要となるが, 喫煙, 飲酒歴のある高危険群においてはさらに加療後の定期的検索も重要である!
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