咽後膿瘍を疑った巨大なTornwaldt病の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告した。
症例は3歳の男児である。2007年1月終わり頃から38~39℃台の発熱および咳を訴えて近医小児科でクラリスロマイシン (CAM) を処方され通院していたが, 症状は改善せず2007年2月3日に当院小児科を紹介され初診した。外来にて抗菌薬を処方し経過観察をしていたが解熱せず, また左咽頭後壁の腫脹が出現したため2月7日当院小児科に入院となった。
2月8日に頸部CTを行い, 左上咽頭から中咽頭に内腔にlow density area を含む膿瘍と思われる所見を認めた。咽後膿瘍を強く疑い2007年2月9日に全身麻酔下に切開排膿術を施行した。
細菌学的検査では
S. aureus (
MRSA) およびα-
hemolyttic streptcocci が検出された。術後使用していたクリンダマイシン (CLDM) 1200 mg/日およびメロペネム (MEPM) 1g/日をバンコマイシン (VCM) 1g/日およびゲンタマイシン (GM) 15mg/日に変更した。しかし, 白血球数が増加したため2月15日再度CT検査を施行した。前回と同様に膿瘍を形成しており, 再度2月16日に全身麻酔下にて肥厚した嚢胞壁外で電気メスを使用し全摘出した。上咽頭は両前鼻孔から中咽頭にネラトンカテーテルを通して引っ張りながら上咽頭を明視下にして摘出した。その後再発もなく5月8日で終診とした。
この症例では, CTで巨大な膿瘍を形成しているにもかかわらず呼吸困難等の咽後膿瘍に特有な症状を認めなかった。咽後膿瘍よりもTomwaldt病のような嚢胞性疾患に炎症が加わったものと考えられた。
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