耳鼻咽喉科展望
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51 巻, 1 号
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カラーアトラス
綜説
  • —環境衛生仮説から遺伝子治療まで—
    川内 秀之, 青井 典明, 片岡 真吾, 村田 明道, 山田 高也
    2008 年 51 巻 1 号 p. 8-25
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/08/06
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎・花粉症は, 宿主であるヒトにとって, 個体の生命維持を脅かす疾患ではないが, 頑固な鼻症状の発現は生活の質を低下させる大きな要因となるだけでなく, 上気道の感染性炎症性疾患の治癒の遷延化因子となりうる。さらに, 近年のARIA (allergic rhinitis and its impact on asthma) の報告によるone airway, one diseaseの概念は, 下気道における気管支喘息の発症・予後における鼻副鼻腔でのアレルギー性炎症の制御が重要であり, その相互作用には骨髄や全身性の調節機構が存在していることを再認識させた。本稿では, アレルギー性鼻炎・花粉症の病態, スギ花粉症の治療についての最近の情報を紹介すると共に, 病態解明と治療戦略の確立を目的とした研究の動向の詳細を, 我々の研究を含め, 紹介したい。
研究
  • 吉村 剛, 吉川 衛, 鴻 信義, 春名 眞一, 森山 寛
    2008 年 51 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/08/06
    ジャーナル フリー
    近年, 一部の慢性副鼻腔炎患者において鼻茸の再発を繰り返す特徴的な難治症例が存在することが次第に明らかになり, このような難治症例の臨床的な背景として, アスピリン喘息 (Aspirin intolerant asthma; AIA) を含む非アトピー性気管支喘息を合併している症例が多く, 末梢血中の好酸球増多や鼻粘膜, 鼻茸に著しい好酸球浸潤があること, ステロイドの内服が著効することなどがわかってきた。そこで慢性副鼻腔炎と喘息の病態に共通する因子としてアラキドン酸代謝産物のCysteinyl leukotrienes (CysLTs) が難治化に関与している可能性を考えた。
    今回我々は, 慢性副鼻腔炎患者をAIA合併症例群 (CRS-AIA), 気管支喘息合併症例群 (CRS-BA), 気管支喘息を合併しない群 (CRS-NA) の3群に分類し, 手術時に採取した鼻茸を用いてCysLTsおよびその受容体について検討を行った。鼻茸中のCysLTsをC18 Sep-Pakカラム (Waters) で抽出したのち定量し, またCysLTsの受容体であるCysLT1受容体とCysLT2受容体は, 鼻茸組織において免疫組織化学的検討を行った。その結果, 鼻茸中のCysLTs濃度は, CRS-AIA群においてCRS-BA群とCRS-NA群と比較し有意に高かった。一方, CRS-BA群とCRS-NA群の間には有意差は認められなかった。受容体の発現については, CysLT1受容体, CysLT2受容体ともに, 主に好酸球に発現しており, 他の群よりもCRS-AIA群において強く発現していた。これらの結果から, 慢性副鼻腔炎の中でも特にAIA合併症例においては, CysLTsが難治化の病態に関与している可能性が示唆された。
臨床
  • 小島 博己, 山本 和央, 力武 正浩, 山口 展正, 田中 康広
    2008 年 51 巻 1 号 p. 33-42
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/08/06
    ジャーナル フリー
    中耳結核の臨床症状は近年, 従来考えられていた古典的な症状から変遷してきている。このためしばしば中耳結核の診断と治療が遅れることが問題となり, 最近の臨床症状を把握し, 早期に診断をすることは重要である。東京慈恵会医科大学附属病院で過去6年間に経験した7例の中耳結核症例の臨床所見を解析した。平均年齢は31.6歳で女性が多かった。耳漏と中等度の難聴を呈した症例が多く, 壊死状の鼓膜と単発性穿孔が認められた。多発性穿孔をおこしたものはなかった。5例に活動性肺結核を, 3例に上咽頭結核を合併しており, ごく初期には滲出性中耳炎を経て発症した例が認められた。耳漏の塗抹・培養検査での診断率は低かったが, 中耳または上咽頭の肉芽組織の病理組織検査での診断率は高かった。側頭骨CTの所見では比較的含気化は良好で鼓室から乳突蜂巣全体のびまん性陰影を認めたが, 骨破壊を伴ったものはなかった。
  • 吉福 孝介, 永野 広海, 黒野 祐一
    2008 年 51 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/08/06
    ジャーナル フリー
    咽後膿瘍により心肺停止したが, 幸いに救命し得た1症例を経験したので報告する。症例は57歳男性である。2007年9月4日から発熱, 咽頭痛が出現し, 9月5日近医耳鼻咽喉科を受診し, 扁桃周囲炎の診断のもとにLevofloxacin (LVFX) (300mg/day) を処方された。しかし, その翌日, 咽頭痛がさらに増悪し嚥下時痛も伴ったため, 9月6日当科紹介受診となった。左扁桃周囲膿瘍 (下極型) から波及した左喉頭浮腫と診断し, 即時膿瘍扁桃摘出術の準備をすすめたが, 2時間後心肺停止状態となった。ただちに経口挿管し心肺蘇生術を施行したところ心機能の改善を認めた。CTにて, 左扁桃周囲膿瘍に加えて咽後膿瘍の合併が確認された。同日, 下気管切開術を行ったのち, 左膿瘍扁桃摘出および咽後膿瘍切開排膿術を施行し, 経過良好にて術後23日目に退院した。本症例ではCT検査後に初めて咽後膿瘍と診断し得た。下極型扁桃周囲膿瘍では, 急性喉頭蓋炎や咽後膿瘍などの危険な合併症を生じやすく, 気道管理に慎重な対応が求められる。後口蓋弓の腫脹した扁桃周囲膿瘍症例に対しては, 咽後膿瘍の可能性を十分念頭に置く必要性を認識した。
  • 小林 俊樹, 平澤 良征, 宇田川 友克, 歌橋 弘哉, 飯田 誠
    2008 年 51 巻 1 号 p. 49-51
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/08/06
    ジャーナル フリー
    今回我々は喉頭浮腫を合併したムンプス感染症の1症例を経験したので報告する。
    症例は23歳女性で, 発熱, 頸部腫脹, 呼吸困難を主訴に近医耳鼻咽喉科を受診し, 喉頭浮腫を指摘され, 当科紹介受診となった。初診時, 触診にて両側耳下腺, 顎下腺の腫脹を認めた。また喉頭ファイバースコープにて喉頭浮腫による上気道狭窄を認めたため, 即日入院とし, ステロイド点滴およびエピネフリン吸入を施行した。入院後, 喉頭浮腫の改善がみられたため, 気管切開は施行しなかった。血液検査でムンプス抗体価の上昇を認めムンプス感染症と診断した。耳下腺, 顎下腺の腫脹が軽減し, 全身状態も改善したため退院となった。
    ムンプス感染症に喉頭浮腫を合併する例は多くはないが, ムンプス感染症で顎下腺腫脹を認めた場合は, 喉頭ファイバースコープにて上気道の状態を評価することは極めて重要であると考えた。
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