スギ花粉症は, 毎年2月から4月の間, 日本全国の社会生活に影響を及ぼす代表的な季節性アレルギー性鼻炎である。そのため治療法も様々に工夫されている。その中でロイコトリエン受容体拮抗薬は有力なスギ花粉症治療薬にあげられる。ロイコトリエン受容体拮抗薬の季節性アレルギー性鼻炎に対する有効性は, いくつかのプラセボ対照二重盲検試験で確認されている。しかし, 薬剤投与開始時期や期間など, 実際の臨床の場で必要な情報はまだ十分に集積できていない状況である。
本試験では, スギ花粉症初期の病態を再現し, ロイコトリエン受容体拮抗薬であるモンテルカストの有効性を, スギ花粉症患者51名を対象としたプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験により検討した。試験デザインとしてスギ花粉非飛散期にモンテルカストを1週間投与し, その後スギ抗原ディスクを用いた鼻炎症状を誘発する方法にて, 鼻炎症状および日常生活の支障度に関する評価を行った。その結果, モンテルカストでは鼻閉症状をプラセボ群に比べて有意に抑制するとともに, くしゃみ, 鼻汁に対しても抑制傾向を示し, 鼻症状全般を有意に抑制した。また, モンテルカストでは, スギ抗原負荷後に日常生活の支障度の悪化を認めず, QOLの維持につながることが示された。また, 今回のモンテルカスト投与期間中に副作用は1例も認められなかった。
以上より, スギ花粉症の初期療法においてモンテルカストの有効性および安全性が示唆された。
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