耳鼻咽喉科展望
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52 巻 , 6 号
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カラーアトラス
綜説
  • 青柳 優
    2009 年 52 巻 6 号 p. 426-439
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/15
    ジャーナル フリー
    聴性定常反応 (auditory steady-state responce: ASSR) の歴史, 刺激音, 解析法, 起源, および臨床応用について述べた。他覚的聴力検査におけるASSRの最も重要な利点は, 正弦波的振幅変調音を用いた場合, オージオグラムの各周波数において周波数特異性の高い閾値を得ることができることである。正弦波状のその反応波形から, ASSRは高速フーリエ変換を用いたパワースペクトル解析やphase coherence法による閾値の自動解析に適している。ASSRの反応出現性は覚醒・睡眠により変化するので, 40Hz ASSRは覚醒時の成人, 80Hz ASSRは睡眠時の幼児における聴力検査に適している。それらの反応の起源については, 40Hz ASSRは聴性中間潜時反応 (MLR) の, また80Hz ASSRは聴性脳幹反応 (ABR) のsteady-state versionと考えられている。骨導ASSRは60dB以上の音圧においては信頼性は低いが, 伝音難聴の診断に有用である。80Hz ASSR閾値により500Hz以下の周波数の聴力レベルを評価することの難しさは, 聴覚フィルタによって説明できる。Multiple simultaneous stimulation techniqueを用いることによって両耳において4つの異なる周波数の聴力をABRより短い検査時間で評価することができる。さらにクリックによるASSRは新生児聴覚スクリーニングをより速く行うことができるであろう。音圧を連続的にsweepさせる刺激音 (sweep technique) によるASSRは補充現象の評価に, また音声刺激によるASSRは語音弁別能の評価に有用であると考えられる。これらのことからASSRは幼児や乳幼児における補聴器の他覚的フィッティングに役立つ。
臨床
  • 力武 正浩, 田中 康広, 小島 博己, 森山 寛
    2009 年 52 巻 6 号 p. 440-447
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/15
    ジャーナル フリー
    耳小骨奇形は手術治療により聴力改善が期待しうる疾患である。おおよそ90%以上の症例が手術で改善を認めている。耳小骨奇形の病態には多様性があるが, 船坂らの分類がよく用いられ, 今回の症例もその分類を用いた。手術は症例により単なる耳小骨再建ですむものからアブミ骨手術を行わなければならないものまで多様であり, それに応じた手術技量が必要となる。
    当科では以前に小島らが同様の耳小骨奇形72耳 (1984~1997年) について報告1) を行っているが, その後の10年間 (1998~2007年) で当施設にて, 聴力改善を目的として鼓室形成術およびアブミ骨手術を行った耳小骨奇形47例48耳を対象とした。船坂の分類ではI群 (I-S jointの離断) は25耳 (52.1%), II群 (ツチ骨またはキヌタ骨の固着のあるもの) は7耳 (14.6%), III群 (ツチ骨・キヌタ骨は正常だがアブミ骨の底板が固着しているもの) は, 8耳 (16.7%) であった。これらの合併している症例では, I+II群が4耳 (8.3%), I+III群が4耳 (8.3%) であった。以前の報告と比較するとI群が増加し, III群が減少傾向であった。
    耳小骨再建法では, I型を施行した症例は2耳 (5.1%), II型が1耳 (2.6%), III-i型が1耳 (2.6%), III-c型が10耳 (25.6%), IV-i型が11耳 (28.2%), IV-c型が14耳 (35.9%) であった。アブミ骨手術を行った9耳の内訳は, small fenestra stapedectomy (以下SFS) が8耳 (88.9%), total stapedectomy (以下TS) が1耳 (11.1%) であった。手術による聴力の改善を日本耳科学会による「聴力判定基準 (2000年)」に基づいて判定した結果, 成功率は48耳中43耳 (89.6%) であった。
    アブミ骨手術を行った症例が全体の18.8%であり, 単純な耳小骨形成から, アブミ骨手術を応用した術式まで必要になることがあるため, 術前の病態の評価と術者の技量が重要である。耳小骨奇形では手術による聴力の改善率が高頻度に得られるため, 積極的に手術加療を行うべきと考える。
  • 元山 智恵, 松脇 由典, 大櫛 哲史, 鴻 信義, 加藤 孝邦, 森山 寛
    2009 年 52 巻 6 号 p. 448-455
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/15
    ジャーナル フリー
    【目的】 Osler-Weber-Rendu病 (遺伝性出血性末梢血管拡張症) は常染色体優性遺伝疾患であり, 血管壁の形成異常により全身の末梢血管拡張などをきたす。耳鼻咽喉科領域では, しばしば反復する難治性鼻出血として遭遇する。Osler病に対し病変部位の把握のためのNarrow Band Imaging (狭帯域光観察) の有効性, 超音波凝固切開装置ソノサージ® による止血効果について検討を行う。
    【方法】 対象は,Osler病の軽症から中等症の4症例。術前にNBIにより粘膜凝固部位を決定した。ソノサージ® による粘膜凝固術を行い, 手術前後の症状の推移 (1日の出血回数, 出血時間, 出血量) を用いて評価した。
    【結果】 術前にNBIを使用することにより, 血管拡張の程度や部位を把握することができ, 手術時, 正常粘膜をできる限り残し病変部位のみ凝固することが可能であった。全項目において術前と比較し, 症状は手術直後 (1~3ヵ月) に有意に軽快した。時間の経過とともに徐々に増悪を認めたが, 術後6ヵ月は術前と比較し全体的に軽快した状態であり, 患者の自覚症状としても良好な経過を得た。
    【結論】 Osler病の軽症から中等症の鼻出血に対するNBIを併用した超音波凝固切開装置ソノサージ® による粘膜凝固術は, 非常に有効な治療法であると考えられた。
  • 森 智昭, 江川 峻哉, 小野 智裕, 門田 哲弥, 古矢 彩子, 嶋根 俊和, 寺尾 元, 三邉 武幸
    2009 年 52 巻 6 号 p. 456-460
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/15
    ジャーナル フリー
    形質細胞腫の多くは, 骨髄内で形質細胞が増殖する多発性骨髄腫の形をとる。形質細胞が髄外性に増殖する髄外性形質細胞腫は比較的少なく, 多くは鼻, 副鼻腔に発生する。今回我々は鼻腔内に発生した髄外性形質細胞腫の1例を経験したので報告する。
    症例は58歳の男性, 1988年, 2006年4月と, 11月に他院にて鼻腔腫瘍摘出術を施行され, 病理検査結果は形質細胞腫であった。2007年3月当科を紹介受診, 初診時に両側下鼻道に表面平滑で暗赤色調の腫瘍を認めた。CTでは両下鼻道に約1cm大の造影効果のある腫瘤陰影を認めた。検査所見はIgAが538mg/dlと軽度高値を認める以外に異常所見は認めなかった。また, 血中M蛋白や尿中Bence-Jones蛋白は陰性, 骨髄生検は正常であった。
    鼻腔髄外性形質細胞腫の再発を疑い, 2007年5月に腫瘍摘出術を施行した。術後の病理組織所見も形質細胞腫で矛盾しない所見であり, 鼻腔髄外性形質細胞腫の再発と診断した。術後に放射線療法 (45Gy) を施行し, 再発なく経過観察中である。
    髄外性形質細胞腫は多発性骨髄腫への移行例の報告もあり, 術後も長期にわたり経過観察が必要と考えられた。
境界領域
  • 三谷 浩樹, 鎌田 信悦
    2009 年 52 巻 6 号 p. 461-467
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/15
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科臨床医にとって頭蓋底はかつて馴染みの薄い部位であったが, 昨今では内視鏡の発達によりアプローチは比較的容易になった。しかし, 内視鏡で可視できる範囲は鼻腔から外頭蓋底までに限られており, 限局した癌腫を除いては現在でも内視鏡治療に適している対象は良性腫瘍・炎症であると考えられる。一方, 頭蓋底に浸潤する癌腫の手術治療として他の部位で施行されている基本戦略, すなわちen-bloc切除を考えれば, 手術操作は内頭蓋底を超えることになり硬膜・脳に影響を少なからず与えることは想像に難くない。そこで本稿では前頭蓋底切除術を取り上げ, 具体的手技や主な治療合併症, そして治療成績を紹介する。現在では多くの施設で頭蓋底手術が選択されるようになっているが, 実際の手術施行には耳鼻咽喉科単独では不可能である。前頭蓋底切除術は1980年代から行われている安定した術式であるが脳神経外科・形成外科的手技が不可欠であり, 各科の協調こそが安全な治療の遂行に結びついているといえる。
画像診断
薬剤の特徴と注意点
薬剤関係
  • 藤倉 輝道, 宮崎 隆, 小山 悟, 岡坂 健司
    2009 年 52 巻 6 号 p. 474-481
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/15
    ジャーナル フリー
    鼻噴霧ステロイド薬はアレルギー性鼻炎において極めて有効な治療薬であるが, 点鼻薬を好まない患者もいる。医師が実地に点鼻方法を指導する機会は少ないため, 噴霧した薬剤が適切に鼻粘膜に噴霧されているか否か十分な検討はなされていない。18例のスカイロン® 噴霧時鼻腔内視鏡観察の結果, 約半数は鼻腔底や鼻前庭に噴霧されており薬剤が有効に鼻粘膜に付着し患部に移行していないと推察された。4名のボランティアにおいて鼻腔内での薬剤の停滞時間をフルナーゼ® とスカイロン® で比較検討した。スカイロン® は広く放射状に噴霧, 付着し, 長時間停留する傾向がみられた。スカイロン® は吸着性が優れていることに加え, ノズルにも改良がなされ容易に広く均一に噴霧できた。通年性アレルギー性鼻炎患者27名における使用経験からも, においなどの使用感, デバイスの利便性から総合的にスカイロン® の方が使いやすいとした患者は多かった。今後は薬剤の薬理効果のみならず, 基剤やデバイスの特性などにも目を向ける必要がある。患者に対し, 点鼻方法, 基剤やデバイスの特性などについても説明を行うことで点鼻ステロイド薬のより有効な使用と効果発現が得られると考える。
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