耳鼻咽喉科展望
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52 巻, Supplement 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
第32回 日本医用エアロゾル研究会
  • 市村 恵一
    2009 年 52 巻 Supplement 号 p. s3-s8
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/15
    ジャーナル フリー
    副鼻腔炎治療の目的は副鼻腔炎の悪循環を断ち切ることにある。慢性副鼻腔炎の手術はこの目的を達成するための1手段であるが, 途中経過をスキップして患者の病態を急速に治癒方向に向かわせるための最も有効な手段の一つである。当然のことながら, 適切な術後治療が必要となる。線毛機能は術後6週~3ヵ月の間に回復するといわれるが, 正常化までにはもう少し時間がかかり, その間は入念な観察と必要な処置を行う。副鼻腔炎のネブライザー療法の側からみると, 副鼻腔自然口径が狭いことなど, 解剖学的問題からエアロゾル粒子は術前には副鼻腔に侵入しにくい。そのために圧をかけたり, 自然口径を拡げたりといった工夫が必要となる。ところが手術を行えば, 大きな自然口径が形成され, 粘液も処理しやすくなるのでエアロゾル粒子が副鼻腔内に沈着しやすくなる。そうなれば術後の治癒過程も円滑に進むことが期待できる。
  • 氷見 徹夫, 郷 充, 近藤 敦, 高野 賢一, 正木 智之, 小泉 純一, 亀倉 隆太, 大國 毅, 小笠原 徳子, 小島 隆, 澤田 典 ...
    2009 年 52 巻 Supplement 号 p. s9-s18
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/15
    ジャーナル フリー
    ヒト鼻粘膜上皮の初代培養系を用いたバリア機能の解析は経鼻投与による炎症制御の方法論の確立に重要である。タイト結合はバリア機能に関連し物質の透過性に関与する因子のひとつであり, この機能を調節するメカニズムを解明することは炎症制御に重要である。さらに, 樹状細胞やM細胞 (microfolds cell) のような抗原サンプリングに関与する免疫担当細胞の検討は経鼻投与によるアレルギー・感染などの免疫療法の効率化に寄与する。また, タイト結合などの細胞接着に関与する因子はウイルスの受容体であることが示されており, この意味ではウイルス感染の予防のための治療戦略としてタイト結合タンパクの研究を進めることは意義のあることと考えられる。
    ここでは鼻粘膜上皮と上皮内樹上細胞, さらに鼻粘膜のM細胞の存在について言及し, タイト結合とウイルス感染との関連, さらに, タイト結合タンパクの調節のメカニズムについても言及する。
  • 國澤 純, 清野 宏
    2009 年 52 巻 Supplement 号 p. s19-s23
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/15
    ジャーナル フリー
    粘膜免疫システムの中核をなす腸管免疫と呼吸器免疫は粘膜免疫システムとしての普遍的ユニーク性を示すと同時に, 各組織に独自の免疫制御機構を有している。花粉症や食物アレルギー, 喘息, 潰瘍性大腸炎などに代表される粘膜免疫疾患においても同様であり, 呼吸器, 腸管に共通の発症因子に加え組織特異的な発症メカニズムが存在し, それらを人為的に制御することで各種粘膜免疫疾患の予防, ならびに治療が可能となる。
    本稿では, 呼吸器免疫と腸管免疫が有する粘膜免疫システムとしての共通性に着目した粘膜免疫療法の開発について, 我々の最新の知見と他のグループからの報告を交えながら紹介したい。
  • 山本 高久, 中田 誠一, 紋谷 慎, 中島 務
    2009 年 52 巻 Supplement 号 p. s24-s29
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/15
    ジャーナル フリー
    鼻腔の形状には個体差がある。このような鼻腔形状の個体差は, そのまま鼻腔内における物質輸送現象, たとえばネビュライザーによる鼻腔内への薬液ミストの導入や呼吸に伴い吸引する微粒子・エアロゾルの輸送などに大きな影響を及ぼすと考えられる。本研究では, 形状の異なる左右鼻腔空間内の物質輸送特性を定量的に明らかにすることを目的とし, 鼻中隔彎曲症・慢性副鼻腔炎・肥厚性鼻炎・下鼻甲介腫脹の患者CTデータから鼻腔の3次元幾何形状モデルを作成, 鼻腔内の数値流体力学解析 (CFD) を行った。その結果, 鼻中隔彎曲が鼻腔内の物質輸送特性に及ぼす影響が明らかになったとともに, ネビュライザー治療においては, その流入角度を操作することにより鼻腔内の物質輸送現象を制御できることが明らかになった。
  • 角山 茜, 宮崎 智子, 城戸 美好, 野田 敏宏, 熊井 惠美, 吉山 友二
    2009 年 52 巻 Supplement 号 p. s30-s35
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/15
    ジャーナル フリー
    国民医療費抑制に後発医薬品が使用促進されている。平成20年4月の診療報酬改訂で, 処方せんの「後発医薬品への変更不可」欄に記載がない場合は, 薬剤師が患者に対して適切な後発医薬品を選択し, 患者同意のもと後発医薬品へ変更することが可能となった。後発医薬品の選択は, 価格だけではなく, 患者個々に応じた後発医薬品を選択できる利点がある。しかし, 適切な後発医薬品を迅速に検討するなど, 後発医薬品使用促進に向けては様々な問題も残る。今回の検討の目的は, 後発医薬品の選択基準の一助として付加価値型後発医薬品のデータベースを作成することにある。後発医薬品集掲載の製薬企業107社を対象とし, 各社が供給する付加価値型後発医薬品の有無, その製品名と付加価値内容をアンケート調査した。調剤性向上 (安定性改善など) や患者利便性向上 (速崩錠, 錠剤小型化など) という付加価値を考慮して付加価値型後発医薬品一覧表を作成した。アンケート回答を得た88社 (回収率82.2%) のうち52社が付加価値型後発医薬品を供給していた。アレルギー性鼻炎治療用噴霧剤のケトチフェン, フルチカゾン及びベクロメタゾンの3種製剤について付加価値型後発医薬品が供給されていることが明らかとなった。付加価値としては, メントール配合による臭い改善などが認められ, 臨床使用に供する有用なデータベースであることが示唆された。
  • 竹内 万彦, 荻原 仁美, 宮本 由起子, 竹尾 哲, 湯田 厚司, 間島 雄一
    2009 年 52 巻 Supplement 号 p. s36-s40
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/08/15
    ジャーナル フリー
    アレルギー性鼻炎患者において, 喘息合併例と非合併例で比較検討を行い, アレルギー性鼻炎患者の喘息合併例の特徴を明らかにすることを試みた。対象は, 当科鼻炎外来を受診したアレルギー性鼻炎患者567名とした。喘息合併率は17%であった。アレルギー性鼻炎の発症年齢は喘息合併例で有意に低かった。鼻粘膜の過敏性も両群で差はなかった。血清総IgE値は喘息合併群で有意に高値であった。特異的IgE抗体価の比較では, スギ・ヒノキ・カモガヤの花粉については両群で差はなかったが, ヤケヒョウヒダニについては, 喘息合併群で有意に高値であった。喘息合併率をアレルギー性鼻炎の原因抗原別に検討したところ, ハウスダストのみの群では19%に, スギ花粉のみの群では9%に, ハウスダストとスギ花粉の両者群では22%に喘息が合併していた。
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