好酸球性副鼻腔炎に特徴的なニカワ様鼻汁や鼻茸形成の病態に, 凝固線溶系の活性化が関わっているとの仮説をもとに研究をすすめてきた。気道炎症では血管透過性の亢進により凝固因子が血管外へ漏出し, 外因系凝固の起点である組織因子発現の亢進を介して凝固線溶系が活性化される。実際に鼻汁中にはトロンビンが高濃度に認められ, 特に好酸球性副鼻腔炎で有意に高濃度である。トロンビンは鼻粘膜上皮細胞のPAR-1受容体を介して, 粘液産生やVEGF・PDGF産生を生じ, PDGFによる線維芽細胞の増殖や細胞外マトリックスの産生, VEGFによる血管新生や血管透過性の亢進などを促して, 杯細胞化生や鼻茸形成などの組織リモデリングが生じる。
一方, 抗凝固因子である活性化プロテインC (APC) やヘパリンには多彩な抗炎症作用があり, 特にヘパリンは
in vitroで鼻粘膜上皮細胞からの粘液産生やIL-8産生を抑制し,
in vivoでラット鼻粘膜上皮の杯細胞化生や抗中球浸潤を抑制する。ヘパリンなどの抗凝固薬を利用した局所療法は, 現状ではステロイド以外に有効な薬物療法のない好酸球性副鼻腔炎に対する新たな治療法になる可能性がある。
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