耳鼻咽喉科展望
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53 巻, Supplement2 号
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第33回 日本医用エアロゾル研究会
  • 内藤 健晴
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s35-s39
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    エアロゾル吸入療法は今からおよそ2500年前の紀元前500年ごろヒポクラテスの時代からすでに鼻疾患に応用されていた。その治療法が今日の日本の耳鼻咽喉科治療の大きな部分を占めるまでに発展してきた。著者らは薬剤をまったく含まない温熱蒸気 (43°C) を鼻に吸入するだけでアレルギー性鼻炎患者に有用であることを臨床的基礎的研究で証明した。また, 副鼻腔炎や喉頭炎への有効性に関する臨床的基礎的研究を継続的に行い, いくつかの成果を示してきたが, 本療法は, エアロゾル粒子の平均粒子径, 粒度分布, 霧化量, 治療中の加圧, 薬剤の有効性, 副作用, 保存法, 保険適用, EBMに基づいた有効性, 使用に際する細菌汚染など解決すべき問題も多く残されている。また, エアロゾル吸入療法の今後の新しい展開として嚥下障害への治療, 感染性疾患に対する予防接種, 上気道悪性腫瘍への応用が標的として開発されていく可能性が秘められている。
  • 増田 敬
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s40-s45
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    小児科的治療における吸入療法は気道全域に存在するさまざまな病態に対して考慮される治療であり, 気道の保護, 酸素の供給, 薬剤の投与を目的とする。吸入療法を導入するにあたり, まず小児期の解剖学的, 生理学的特長を知ることが必要である。吸入効率を良好にするための条件や手技の検討がなされており, 最適な方法が選択されるべきである。また, 患者教育なしに効果的な吸入はできない。
    耳鼻咽喉科でも小児の受診頻度が多い症状として咳嗽がある。慢性咳嗽として吸入療法が行われることも多いが, 診断に至るには困難も多く十分な聴診, 経過観察が重要である。小児科では気管支喘息が吸入療法の適応として十分なエビデンスもあり, 筆頭に挙げることができる。病態の理解とともに, 治療が確立されガイドラインも整備されてきた。小児でも吸入ステロイドを軸に治療を進めることが推奨されているが問題も多い。小児の吸入療法が発展するために検討すべき課題は残されており, さらなるエビデンスの蓄積が望まれる。
  • 今井 透, 大木 幹文
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s46-s48
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
  • 小池 卓二, 原島 立成, 大城 越美
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s49-s54
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    現在, 点鼻スプレーやネブライザー等により, 局所療法が行われているが, 実際に薬剤が付着する部位は必ずしも明確でなく, 必要部位に十分薬剤を噴霧できていない可能性がある。本報告では, 液体定量噴霧器, および超音波霧化装置による薬剤の鼻腔内散布範囲の検証を行うとともに, 様々な使用条件下で散布範囲がどのように変化するのかについて検討を行った。その結果, 液体定量噴霧器では, 噴霧角度により鼻腔内薬剤付着範囲に大きな違いが出ることが明らかとなった。
  • 松根 彰志
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s55-s58
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    近年, 鼻噴霧用ステロイドが, アレルギー性鼻炎に大変有効であり, Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma (ARIA) では薬物治療の第1選択薬と扱われている。一方, これまで, 我々はアレルギー性鼻炎の病態において, 血管内皮細胞増殖因子 (VEGF) が重要な役割をはたしていることを報告してきた。今回, 鼻噴霧用ステロイド, モメタゾンの臨床効果と併せてVEGF産生に対する作用を検討した。2週間のモメタゾン使用で, 通年性アレルギー性鼻炎のくしゃみ, 水様性鼻漏, 鼻閉は明らかに減少し, 誘発試験後の鼻腔洗浄液中のVEGFも減少傾向を認めた。また, 手術で得られたアレルギー性鼻炎例の下鼻甲介粘膜由来の培養繊維芽細胞を用いた検討で, VEGF刺激にて増加したVEGF産生が, モメタゾンの投与によりmRNAレベルで抑制される結果を得た。モメタゾンによる鼻粘膜線維芽細胞からのVEGF産生抑制が, 臨床効果の機序の一つとして重要であると考えた。
  • 藤倉 輝道
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s59-s63
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    耳鼻科の医療機関中の約90%の施設でアレルギー性鼻炎に対するネブライザー治療が行われていると考えられる。しかしアレルギー性鼻炎治療の中にあってネブライザー治療の有する意義についてはその位置づけは不明確である。通年性アレルギー性鼻炎でネブライザー治療を受けている患者にアンケートを行ったが, 患者の多くはその治療効果を体感することなく, 単に医師の指示で行っているという現状がうかがわれた。鼻噴霧ステロイドの鼻腔内付着状態をみると, 半数の患者は鼻前庭や鼻腔底など吸収効率の悪い部分に噴霧していることがわかった。局所点鼻薬がすべての患者において適切に噴霧投薬されているかどうかは疑問である。そこでスギ花粉症シーズンに自宅で行える携帯用ネブライザーを用いた試験を行ったが, 鼻の総症状スコアは季節中概ね3未満と軽症で推移し, 患者の満足度も大変高く, 有用な治療法であることがわかった。Drug Delivery Systemとして考えた場合, ネブライザー治療というものは再評価されるに値する治療であると考える。1日1回型の鼻噴霧ステロイド薬が発売されたことも考慮すると, アレルギー性鼻炎におけるネブライザー治療は, 今後リリーバーとしてよりもコントローラーとしての意義に重きをおくことになろう。
  • 大久保 はるか, 大木 幹文, 山口 宗太, 石井 祥子, 櫻井 秀一郎, 大越 俊夫, 今井 透
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s64-s69
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    花粉症をはじめ鼻アレルギーは今や国民病といわれる重要な疾患である。鼻アレルギーの治療はアレルギー学会ガイドラインに示されるように薬物治療が中心であり, その中で局所療法は有効性が高いと考えられている。
    近年, 携帯型ネブライザー装置が開発され上気道疾患に有用性が認められている。今回, この携帯型ネブライザーが花粉症の治療に有益であるかを点鼻と比較検討した。その結果, ネブライザー療法と点鼻療法はともに改善傾向であった。
    そのことを踏まえて, 鼻副鼻腔に異常のみられない成人に今回使用したネブライザー装置と点鼻によって鼻腔内にどのように薬剤が沈着するかも検討した。その結果, ネブライザー装置による薬液は鼻腔内に広く沈着しているのに対し点鼻では頭部の傾きによって沈着部位の限局が認められた。
    これらの結果より携帯型ネブライザー療法は鼻アレルギーに対しても有効と考える。
  • 山口 宗太, 大木 幹文, 大久保 はるか, 石井 祥子, 櫻井 秀一郎, 大越 俊夫
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s70-s74
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    今回, メッシュ式ネブライザーの鼻疾患への有用性を探るべく, 鼻副鼻腔に異常の見られない成人ボランティア2名で実験を行った。メッシュ式ネブライザーはOMRON NE-U22® とPARI eMotion® の2機種に経鼻ノズルを使用した。核医学検査を用いてエアロゾル粒子の気道内分布を検討した。
    OMRON NE-U22® は広く鼻腔内に分布していた。PARI eMotion® は鼻腔以外に咽喉頭, 気管内にエアロゾルが分布していた。エアロゾルの分布の違いは分時霧化量の違いによるものと考えられた。
    今回の実験では経鼻ノズルを使用した。鼻腔内への沈着にはノズルの形態が関係するため, ノズルを装着することにより霧化された薬液の沈着量が変化すると考えられる。経鼻に使用する場合, ノズルの形態を検討する必要がある。
  • 大沢 光行, 青木 文明, 平尾 健, 岡本 裕美, 日野 由香里, 加藤 文彦, 別所 郁夫, 森下 正樹, 大越 俊夫
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s75-s78
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    当院では, 各部署が共有して使用できる小型タイプのネブライザは, 超音波式, ジェット式共に, 臨床工学部で保守点検に関し一括管理を行っている。
    ネブライザ装置は他の医療機器と比較した場合に, その構造や操作性はシンプルである。このため使用に際し, 誤操作が問題で使用できないことはないと推察されるが, 実際の現場で超音波式の場合では, 水槽内への水の注入忘れや量の不足などがあり, ジェット式の場合では, 動作圧力によりチューブが外れるなど, よく報告される事例である。
    そこで今回, ネブライザの使用に際し, 各部署から当部に点検や修理依頼のあった過去5年間のデータを分析し, 操作上の問題点や故障の起きやすい箇所などを検討する。
  • 柴崎 修, 加瀬 康弘
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s79-s84
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    本邦における外耳道局所への薬液投与方法は, 点耳液の滴下と軟膏剤の塗布に限られている。本研究では, 外耳道への的確で簡便な薬液投与方法として外耳スプレーの可能性を検討した。外耳へスプレーする器具は試作モデルを用いた。点耳液と外耳スプレーそれぞれについて, 円筒状の外耳モデルへの噴霧およびボランティアでの外耳への使用感についてのアンケートを行い, 比較検討した。その結果, 外耳スプレーは点耳液に比較して, 外耳道全周に薬液が噴霧されることが確認された。また, 使用感については, 圧迫感などの回答が得られたが, 利便性のメリットを上回る程の障害ではない点が確認できた。外耳スプレーは外耳への新たな薬液投与方法として, 本邦でも今後十分に臨床応用が検討されるべき手段であると考える。
  • 角山 茜, 玉城 武範, 飯塚 敏美, 有海 秀人, 宮崎 智子, 城戸 美好, 熊井 惠美, 野田 敏宏, 大戸 茂弘, 吉山 友二
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s85-s89
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    先発医薬品との同等性を持ちながら, 味や大きさなど製剤学的あるいは包装に関する工夫が施された後発医薬品である付加価値型後発医薬品が注目されている。我々は付加価値GEの情報を提供するため, 付加価値型後発医薬品データベースを作成した。
    今回は, 作成したデータべースの臨床における有用性を明らかにするために, アレルギー性鼻炎治療用噴霧剤のフルチカゾンの付加価値型後発医薬品に変更した患者を対象とし, 変更後の治療効果と使用感向上について検討した。
    付加価値型後発医薬品は先発医薬品と同等の治療効果を有していることが示唆された。また, 付加価値型後発医薬品の使用を望む患者の存在がアンケートにより明らかとなった。後発医薬品の選択時に選択肢の一つとして付加価値型後発医薬品を考慮することで, より患者のニーズにあった後発医薬品を選択できる可能性が示唆された。総じて作成した付加価値型後発医薬品データベースは臨床使用に供する有用な情報源であるといえる。
  • 荒木 進, 鈴木 衞
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s90-s96
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎に対して, ネブライザー療法は通常行われている。一方, 同時期のアレルギー性結膜炎やアレルギー性接触皮膚炎に対しての有効な局所療法はない。私たちは, 眼と顔面にも外来で治療ができる蒸気と薬液による顔スチームミストネブライザーを考案した。スギ花粉症患者には平成20年に38例に対して施行し, 不変: 改善の比は, 眼の痒み (1:3.7), 涙目 (1:3.1), 顔の乾燥感 (1:2.2) の順であった。イネ科花粉症患者には平成21年に3例に対して施行した。改善率は眼の痒みと涙目が100%, 顔の乾燥感が75%であった。超微粒子による蒸気の加温, 加湿効果と薬により, 花粉症患者の眼と顔面皮膚に対する外来治療ができると考えられた。
  • 樫葉 恵子, 小森 正博, 表原 慶典, 柳原 尚明, 阪上 雅史
    2010 年 53 巻 Supplement2 号 p. s97-s100
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/08/15
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科処置用スプレーの使用においては患者に不快感, 恐怖感などを与えることがある。患者の不快感を軽減し噴霧効果をより高めることを目的として, 噴霧粒子を細かくするというスプレーの改良が行われた。新スプレー (改良したスプレー) と旧スプレー (従来のスプレー) について, 成人20名に対し鼻腔内にスプレーした時の不快感の程度を比較検討した。新スプレーは旧スプレーに比べて不快感が有意に少なくなった。
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