耳鼻咽喉科展望
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55 巻, 1 号
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カラーアトラス
綜説
臨床
  • 小森 学, 谷口 雄一郎, 田中 康広, 小島 博己
    2012 年 55 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル フリー
    目 的: 初発症状に顔面神経麻痺がない側頭骨内顔面神経鞘腫の自然経過を検討した。
    対象と方法: 過去10年において初発症状に顔面神経麻痺を認めなかった側頭骨内顔面神経鞘腫11症例の初診時年齢, 性別, 初発症状, 腫瘍存在部位, 腫瘍増大の有無, 顔面神経麻痺の有無, 初診時から最終受診時までの顔面神経スコアの変化, 随伴症状の有無及び前医診断に関して検討した。
    結 果: 経過観察中に顔面神経麻痺を呈した症例は2例であったがいずれもステロイドの大量点滴加療によって改善を認めた。また, これらとは別の2症例において過去に顔面神経麻痺を呈していた (内1例は急性感音難聴の既往もあった)。腫瘍の増大を認めた症例は2症例であったが, そのいずれも経過中に顔面神経麻痺を認めることはなかった。
    結 論: 年齢と顔面神経麻痺の有無との関係, 腫瘍の増大と顔面神経麻痺の有無との関係については明らかな相関関係は認めなかった。腫瘍が膝部もしくは錐体部に存在する症例においては顔面神経麻痺を生じる可能性が高く慎重な経過観察が必要であることが, 鼓室部に存在するものは経過観察を行っても顔面神経麻痺を生じにくく, 顔面神経麻痺が生じた場合においてもステロイドによる保存的加療にて良好な予後が保てる可能性が示唆された。
  • 川口 顕一朗, 嶋根 俊和, 小林 斉, 五味 渕寛, 河村 陽二郎, 下鑪 裕子, 中村 泰介, 徳留 卓俊, 卯月 彩, 三邉 武幸
    2012 年 55 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル フリー
    当科では以前から, 食道癌合併の頭頸部扁平上皮癌に対しS-1, Nedaplatin/放射線同時併用療法を施行している。今回我々は食道癌を合併した下咽頭癌に対して有意な腫瘍縮小効果を示したにも関わらず, 治療前からCT画像上認められていた間質性変化が急激に進行し不幸な転帰を辿った症例を経験したので報告する。
    症例は72歳, 男性で咽頭痛を主訴に受診した。喉頭ファイバー上, 下咽頭後壁から喉頭を塞ぐように腫瘍を認め, また上部消化管内視鏡検査では切歯列より35cmに腫瘍を認め, どちらも生検で高分化型扁平上皮癌であった。CTにて左頸部リンパ節転移を認めたため, 下咽頭癌 (T4aN2bM0), 食道癌 (T1bN0M0) と診断し, S-1, Nedaplatin/放射線同時併用療法を行った。腫瘍は視診上complete response (CR) となったが, 2コース目終了時に間質性肺炎の急性増悪により急激な呼吸不全を呈し, 加療するも各種治療に反応せずに死亡した。
  • 宇野 匡祐, 浅香 大也, 岡野 晋, 石橋 敏寛, 森 良介, 松脇 由典
    2012 年 55 巻 1 号 p. 28-35
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル フリー
    浸潤性副鼻腔真菌症による内頸動脈仮性動脈瘤が原因で発症した大量鼻出血の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する。症例は70歳男性で, 右眼視力低下を主訴に当院を受診した。既往に原発性マクログロブリン血症があり, プレドニン15mg/dayを常用していた。画像所見で右蝶形骨洞に軟部濃度陰影と骨不整像を認めたため, 鼻性視神経炎を疑い内視鏡下鼻内副鼻腔手術を行った。病理検査にて急性浸潤性副鼻腔真菌症と診断し, 抗真菌薬と全身状態改善治療を行った。状態が改善したため退院となったが, 第82病日に鼻出血を主訴に当科を再受診した。外来処置中, 突然の大量鼻出血を認めたため手術室に移動し, ガーゼを挿入し一時的に止血した。1週間後, 手術室にてガーゼ抜去を試みたところ, 大量出血を認めたためガーゼを再度挿入し圧迫止血した。CT Angioを行ったところ, 内頸動脈の仮性動脈瘤を認めたため, 脳神経外科にて内頸動脈コイル塞栓術を行った。塞栓術後は良好であったが, 意識障害が出現し永眠された。
    蝶形骨洞内の真菌症を疑った時点で頭部MRAngioもしくはCT Angioを施行し, 動脈瘤を確認することが重要であったと思われた。
  • 志田 容子, 小森 敦史, 齊藤 孝夫
    2012 年 55 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル フリー
    顎下部に発生した粘液腫の1例を経験したので報告する。
    症例は60歳男性。右顎下部腫瘤を主訴に当科を受診した。頸部単純MRIにて, 右顎下部の広頸筋直下にT1強調画像で低信号, T2強調画像で高信号を示す20×16×12mmの境界明瞭な腫瘤を認めた。穿刺吸引細胞診にて, 脂肪肉腫 (Class V) が疑われた。局所麻酔下に周囲脂肪組織を付けて腫瘤を摘出した。術後の病理組織検査にて粘液腫と最終診断した。頭頸部領域に発生する粘液腫は稀であり, 術前診断としての穿刺吸引細胞診による確定診断が難しい良性腫瘍である。加えて被膜の部分的欠落や周囲組織への浸潤傾向を示すケースもあり, 一方で脂肪肉腫や他の粘液変性を伴った腫瘍との鑑別が必要となることから, 再発のない切除のためには, 細胞播種に配慮した切除法を選択することが望ましい。
境界領域
画像診断
薬剤の特徴と注意点
薬剤関係
  • 関根 基樹, 酒井 昭博, 槙 大輔, 塚原 桃子, 澁谷 正人, 飯田 政弘
    2012 年 55 巻 1 号 p. 55-60
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/02/15
    ジャーナル フリー
    季節性アレルギー性鼻炎 (スギ花粉症) に対するモメタゾンフランカルボン酸エステル点鼻液 (Mometasone Furoate Nasal Spray) の初期療法としての有用性を検討した。スギ花粉飛散開始日以前の来院患者 (以下, 初期投与群) およびスギ花粉飛散開始日以降来院患者 (以下, 飛散後投与群) に対し, モメタゾンフランカルボン酸エステル点鼻液を1日1回各鼻腔に2噴霧ずつ (mometasone furoateとして200μg/日) 投与し, 鼻眼症状, QOLを評価し比較検討した。スギ花粉本格飛散ピーク時における鼻眼症状スコアは飛散後投与群に比し初期投与群において低く, 鼻眼症状が抑制された結果が得られた。症状が悪化, もしくは改善しない場合には, ロラタジン10mgまたはモンテルカスト10mgの1日1回追加投与を可能としたが, 両群間で併用割合, 併用量共に差はなかった。
    以上の結果により, モメタゾンフランカルボン酸エステル点鼻液の初期療法における有用性が示唆された。
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