目 的: 初発症状に顔面神経麻痺がない側頭骨内顔面神経鞘腫の自然経過を検討した。
対象と方法: 過去10年において初発症状に顔面神経麻痺を認めなかった側頭骨内顔面神経鞘腫11症例の初診時年齢, 性別, 初発症状, 腫瘍存在部位, 腫瘍増大の有無, 顔面神経麻痺の有無, 初診時から最終受診時までの顔面神経スコアの変化, 随伴症状の有無及び前医診断に関して検討した。
結 果: 経過観察中に顔面神経麻痺を呈した症例は2例であったがいずれもステロイドの大量点滴加療によって改善を認めた。また, これらとは別の2症例において過去に顔面神経麻痺を呈していた (内1例は急性感音難聴の既往もあった)。腫瘍の増大を認めた症例は2症例であったが, そのいずれも経過中に顔面神経麻痺を認めることはなかった。
結 論: 年齢と顔面神経麻痺の有無との関係, 腫瘍の増大と顔面神経麻痺の有無との関係については明らかな相関関係は認めなかった。腫瘍が膝部もしくは錐体部に存在する症例においては顔面神経麻痺を生じる可能性が高く慎重な経過観察が必要であることが, 鼓室部に存在するものは経過観察を行っても顔面神経麻痺を生じにくく, 顔面神経麻痺が生じた場合においてもステロイドによる保存的加療にて良好な予後が保てる可能性が示唆された。
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