耳鼻咽喉科展望
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56 巻, Supplement3 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
第36回 日本医用エアロゾル研究会
  • 竹内 万彦, 鈴村 恵理
    2013 年 56 巻 Supplement3 号 p. s181-s184
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/08/15
    ジャーナル フリー
    【目的】 相対湿度の低下が粘液線毛輸送機能の低下をきたすことが報告されている。そこで生理食塩水の鼻への噴霧が鼻粘膜の粘液線毛輸送機能に影響を及ぼすか否かを明らかにするために本研究を行った。
    【方法】 対象は特に鼻疾患のない健康成人13名 (男性4名, 女性9名, 平均年齢29.3歳) である。3日にわたってサッカリンテストを施行した。1日目は特に何も処置をせずに行い, 2日目には生理食塩水の鼻噴霧5分後に, 3日目には鼻噴霧15分後に施行した。
    【成績】 鼻噴霧5分後のサッカリン時間は前処置なしのそれと比べて有意に短縮していた。鼻噴霧15分後のサッカリン時間は前処置なしのそれと有意差を認めなかった。鼻噴霧5分後のサッカリン時間と鼻噴霧15分後のそれとの間にも有意差を認めなかった。室温は22.8±1.1℃, 湿度は28.8±5.1%であった。
    【結論】 生理食塩水の鼻噴霧は短時間鼻粘膜の粘液線毛輸送機能を亢進させるものと考えられる。
  • 大木 幹文, 吉川 衛, 山口 宗太, 大久保 はるか, 石井 祥子, 櫻井 秀一郎, 久保田 俊輝, 大越 俊夫
    2013 年 56 巻 Supplement3 号 p. s185-s189
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/08/15
    ジャーナル フリー
    副鼻腔炎に対する局所療法に, 最も効果的な治療法は上顎洞穿刺洗浄法と考えられるが, 最近では局所洗浄が欧米で積極的に行われている。一方エアロゾル療法は古くから日常診療において, その有用性が認められているが, その適応や使用法は必ずしも確立されていない。今回, 片側上顎洞炎で自然口の比較的開大している症例に対して, エアロゾル療法の有益性について検討をした。対象としたのは抗菌薬保存的治療に抵抗を示した, 片側の急性副鼻腔炎5症例である。保存的治療3~4週後,加圧・振動型ネブライザー装置パリ・ジーヌス (パリ・ジャパン株式会社) を自宅に持ち帰らせ, 1日2回ステロイド吸入液を吸入させ, 治療3~4週後にその治療効果を検討した。
    局所所見は改善傾向を認め, 4週後の単純XPでも上顎洞陰影の減少が確認された。加圧・振動型ネブライザー装置を用いた症例は少ないものの, 全例軽快傾向を認めた。ネブライザー療法では, 加圧振動を加えることで, 副鼻腔への沈着率が増すといわれる。中鼻道の病変が比較的軽度な片側副鼻腔炎に対して加圧・振動型ネブライザー療法は有益と考えられた。
  • 羽生 祥子, 宮崎 智子, 吉山 友二
    2013 年 56 巻 Supplement3 号 p. s190-s195
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/08/15
    ジャーナル フリー
    吸入β2作用薬はドーピング禁止薬物として常時使用禁止として注意を要する。一方, 医療用医薬品と異なり, 消費者が自己判断で購入可能な一般用医薬品にもドーピング陽性成分を含有する医薬品が存在する。競技者のうっかりドーピングを防止するために適切な支援が必須である。
    本研究は一般用医薬品第一類によるうっかりドーピングの防止を考慮した販売方法を検討することを目的とした。一般用医薬品第一類104製品を対象として, 一般用医薬品の選択・販売時にドーピング陽性成分を含有するか確認できる一覧表を作成した。また,作成した一覧表に医用エアロゾルに関連する医薬品の有無を検証した。一覧表は商品名, 含有成分, 効能・効果, 用法・用量, 使用上の注意の5項目に加え, ドーピング陽性成分が含有されるか否か, 含有される場合は使用が禁止される期間と理由を明記した。情報源として,2012年度禁止表国際基準及び薬剤師のためのドーピング防止ガイドブック2011年版を参照した。ドーピング陽性成分を含む製品は21製品で,「常に禁止」される成分が18製品,「競技会時禁止」される成分が3製品に含まれた。上記の一般用医薬品第一類21製品に医用エアロゾルに関連する医薬品は含まれなかった。本研究で作成した一覧表及び情報提供ツールは,薬剤選択においてアンチ・ドーピングを考慮する際の有用なツールとなり得ると考えられる。なお, 一般用医薬品第一類104製品に禁止薬物である糖質コルチコイドを含有する噴霧剤も含まれていたが, 鼻疾患に対する局所使用は禁止されず, TUE: 治療目的使用の適用措置 (Therapeutic Use Examptions) も不要であった。
    今回は, 第一類医薬品について検討したが, 幅広く使用される第二類医薬品にもドーピング陽性成分を含有する医薬品が数多くあるため今後の検討を要する。
  • 山本 高久, 藤井 直子, 藤澤 利行, 中田 誠一, 岩田 昇, 鈴木 賢二
    2013 年 56 巻 Supplement3 号 p. s196-s201
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/08/15
    ジャーナル フリー
    鼻疾患の治療方法の一つであるエアロゾル吸入法において, 様々な要因が薬液エアロゾルの鼻腔内輸送および副鼻腔への移行特性に影響を及ぼしていると考えられている。エアロゾル吸入法の治療条件 (薬液エアロゾルの供給流量および供給圧, エアロゾル粒子径等) のほか, 症例の鼻腔形状, 粘膜の肥厚・炎症の度合い, 自然口径などである。数値流体力学解析を用いた既往の鼻腔内エアロゾル輸送解析では, 上述の要因は深く考慮されず, 正常な鼻腔に着目したものがほとんどであった。そこで本研究では鼻中隔彎曲および副口を有する症例 (左鼻腔) を対象に数値流体解析を実施し, また, 鼻中隔彎曲のない鼻腔のエアロゾル輸送特性との比較検討を行った。その結果, 鼻中隔彎曲がない鼻腔において上顎洞自然口を介した鼻腔から上顎洞への薬液エアロゾルの移行は, 投入された全エアロゾルのおおよそ0.2%未満であること, その一方で, 鼻中隔彎曲, 副口を伴う症例では2%であることが明らかになった。後者は上顎洞自然口近傍に速い流れ場が形成されており, 加えて副口があることにより, 鼻腔―上顎洞の物質交換が促進されたものと考えられる。
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