目的: 鼻副鼻腔悪性腫瘍に対して内視鏡下腫瘍切除術を施行した症例を対象として, 腫瘍の局在および進展範囲別に施行された術式を分類しその有用性を検討した。
対象と方法: 対象は東京慈恵会医科大学附属第三病院耳鼻咽喉科において鼻副鼻腔悪性腫瘍に対して内視鏡下腫瘍切除術を施行した7症例。 各症例の臨床経過と共に, 術前内視鏡検査と画像検査より腫瘍の発生基部とその進展範囲を評価し腫瘍の発生パターン別に施行した術式の評価を行い, グループ分けを行う等の臨床的検討を行った。
結果: TNM 分類では, 鼻腔 T1N0 2例, T2N0 3例, T4aN0 1例, 篩骨洞 T2N0 1例であり, 全例 M0であった。 術前検査として画像検査 (CT, MRI) および内視鏡検査をもとに腫瘍の発生基部とその進展範囲を評価し安全域を持った腫瘍の一塊切除の術式を検討し, 鼻内操作にて切除可能と思われた症例を厳選したうえで内視鏡下切除術を行った。 腫瘍の局在と施行術式をもとに, 1) 鼻中隔から発生した内側側方型, 2) 中鼻甲介から発生した上方型, 3) 蝶形骨洞前壁より前方の後方型に分類され, すべて一塊切除が施行された。 安全域が十分に確保できなかった症例に対しては術後放射線治療が施行された。 観察期間中 (12~125ヵ月, 平均41.1ヵ月), 鼻腔腫瘍 (T2N0) の1例が局所再発及び遠隔転移制御ができず死亡し, 篩骨洞腫瘍 (T2N0 神経内分泌癌) の1例が骨転移のため担癌生存中である。
結語: 鼻副鼻腔悪性腫瘍の手術においては, 腫瘍の発生基部と進展範囲によっては内視鏡手術で対応可能なものも認められた。 一方, 症例によってはワーキングスペースおよびアングルが制限されるため, 安全域をつけた腫瘍の一塊切除を安全かつ確実に行うためには鼻内アプローチのみに固執することなく外切開を伴う術式への変更を含めた術式を選択することが重要と考えられた。
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