耳鼻咽喉科展望
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58 巻, 6 号
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カラーアトラス
綜説
臨床
  • 松浦 賢太郎, 和田 弘太, 志村 英二, 武田 鉄平, 新井 千昭, 長舩 大士, 枝松 秀雄
    2015 年 58 巻 6 号 p. 297-303
    発行日: 2015/12/15
    公開日: 2016/12/15
    ジャーナル フリー

     頭蓋底骨髄炎は, 外耳道や中耳, 副鼻腔などに生じた炎症の直接的な波及, または遠隔臓器からの血行性の波及による, 頭蓋底および側頭骨の骨髄炎を特徴とする病態である。 今回われわれは, 上咽頭癌との鑑別に苦慮した頭蓋底骨髄炎の症例を1例経験したため, 若干の文献的考察を加えて報告する。
     症例は66歳, 男性。 左耳痛を主訴に前医を受診した。 左急性中耳炎と診断され, 内服加療を開始したが, 耳痛が増悪するため, CT, MRI を含め精査が施行された。 画像所見で上咽頭腫瘍が疑われたため, さらなる精査, 加療を目的に当院当科紹介となった。 当科受診後, 局所麻酔下に複数回生検を行うも, 悪性所見は得られなかった。 しかし, 耳痛に加え頭痛も出現したため, 全身麻酔下に生検を施行した。 生検時, 上咽頭組織をかなり深部まで採取したところ, 内部から大量の排膿を認めた。 病理検査では悪性所見は認められず, 同時に施行した培養検査, グラム染色では明らかな起因菌は同定できなかった。 術後, 耳痛および頭痛は著明に改善した。 臨床経過, 検査所見から総合的に頭蓋底骨髄炎と診断し, 治療を開始した。 6週間の抗菌薬投与を行い, 現在症状の再燃なく, 外来経過観察となっている。
     頭蓋底骨髄炎は予後不良な疾患であり, 早期診断, 早期治療が求められる。 本症例のように腫瘍との鑑別が困難であるケースや, 培養陰性のケースなど診断に難渋する場合があり, 十分に注意を要する疾患であると考える。 診断にあたっては, 全身麻酔下で十分な組織を採取するために, 積極的に手術も検討すべきと考える。

境界領域
画像診断
薬剤の特徴と注意点
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