耳鼻咽喉科展望
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58 巻, 2 号
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カラーアトラス
綜説
臨床
  • 池谷 淳, 河野 淳, 萩原 晃, 西山 信宏, 河口 幸江, 白井 杏湖, 依田 明治
    2015 年 58 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     髄膜炎は後天性難聴の原因のひとつであり, 髄膜炎後難聴は人工内耳の適応になりえるが, 内耳への炎症波及による蝸牛の線維化や骨化のため, 人工内耳の電極植込みが難しい場合や聞き取りが十分でない場合がある。 今回われわれは, 成人人工内耳症例390例中, 髄膜炎を失聴原因とする27例30耳について, 髄膜炎罹患年齢, 髄膜炎の原因となる細菌やウィルス, 手術時期, 髄膜炎罹患後から人工内耳手術までの期間, 術前の画像所見, 蝸牛内所見 (肉芽・線維化, 骨化の程度), 挿入電極数, 術後の成績についてレトロスペクティブに検討した。 術前 CT では, 異常なし23耳, 軽度石灰化5耳, 中等度石灰化2耳で, 術中蝸牛内所見では, 正常が20耳, 肉芽・線維化が5耳, 骨化が5耳であった。 蝸牛内所見別成績は, 正常群と線維化群の間には明らかな差はなかったが, 骨化群では装用閾値も聴取成績も悪かった。 今回は, 線維化や骨化により人工内耳の電極植込みができない例はなかったが, 少なくとも蝸牛内の組織変化が認められない早期の段階で手術を行うことが望ましいと思われた。
  • 西山 信宏, 河野 淳, 萩原 晃, 河口 幸江, 池谷 淳, 鈴木 衞
    2015 年 58 巻 2 号 p. 84-90
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     人工内耳手術にあたっては, 高齢の症例や全身合併症に注意を必要とするケースが増えている。 慢性腎不全で人工透析を必要とする場合の人工内耳治療について報告した。 症例は血液透析が導入されていて, 東京医科大学病院耳鼻咽喉科で人工内耳植込み術を施行した5例, 手術時年齢は30~57歳, 男性4例, 女性1例である。 失聴期間は1~45年と, きわめて長い傾向があった。 手術後の追跡期間は5年5ヵ月~14年2ヵ月で, 3例は終生人工内耳の装用を続け, 2例はなお通院中である。 いずれの症例でも人工内耳植込み術前後には血液透析を行いながら管理したが, 特別な問題はなく, 手術を行った。 失聴期間が長く, 術後の聴取は視覚併用のケースが多かったが, 術後のリハビリテーションではトータルコミュニケーションの一部として人工内耳が活用されていたことが確認できた。 これらのうち1例では, 人工内耳装用開始後に腎移植を受けている。 人工内耳装用開始後に腎移植を受けた例は渉猟しうる限り1例のみで, 稀な例と考えた。
  • 松浦 賢太郎, 新井 千昭, 長舩 大士, 志村 英二, 枝松 秀雄, 和田 弘太
    2015 年 58 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     節外性 NK/T 細胞リンパ腫, 鼻型 (ENKL) は, 鼻腔, 咽頭を病変の主体とするNK細胞由来のリンパ腫である。 鼻閉感や, 鼻出血などを主訴に耳鼻咽喉科を受診するが, 特徴的な鼻内所見に乏しく, しばしば診断に難渋する。
     今回われわれは, ENKL を2症例経験したので報告する。 症例1は45歳男性, 鼻閉を主訴に受診した。 鼻中隔が硬く, 痂皮の付着を認め, 組織診など精査を施行するも明らかな異常は認めず, 経過観察となった。 約8ヵ月後, 鼻閉が増悪し, 近医を受診したところ鼻腔内腫瘍を指摘され, 当科再診となった。 ENKL (Clinical stage IE, NK-IPI group1) と診断され, 化学療法を施行, 寛解した。
     症例2は49歳, 女性, 突然, 鼻閉, 鼻出血が増悪し, 近医より手術を勧められ, 当科を受診した。 鼻内は一見すると正常であるが, 鼻粘膜はやや硬く, 易出血性であった。 CT では副鼻腔炎の所見を呈しており, ESS に準じて手術を行い, 術中数か所から組織診を施行し, ENKL (Clinical stage IE, NK-IPI group1) と診断された。 化学療法を施行し, 寛解とされたが, 寛解確認の約5ヵ月後, 突然の全身状態悪化を来たし, 永眠した。 ENKL は限局期の症例では半数以上が治癒可能であるが, 進行すると予後不良の疾患であり, われわれ耳鼻咽喉科医が確実に診断し, 早期に治療を開始する必要があると思われた。
  • 白井 杏湖, 大塚 康司, 小川 恭生, 河口 幸江, 波岡 那由太, 小山 俊一, 赤井 知高, 羽生 春夫, 鈴木 衞
    2015 年 58 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2015/04/15
    公開日: 2016/04/15
    ジャーナル フリー
     高齢者の意識障害として発見された蝶形骨洞炎に続発した硬膜外膿瘍・髄膜脳炎の1例を報告する。
     症例は75歳, 女性。 自宅で倒れているところを発見され当院に入院した。 発熱と意識障害を認め, 感染源精査により蝶形骨洞炎と硬膜外膿瘍を認めた。 蝶形骨洞炎による頭蓋内合併症を考え, 入院7日目に内視鏡下副鼻腔手術を施行した。 術後, 解熱し意識状態の改善はみられたものの不安定であった。 画像所見では硬膜外膿瘍と蝶形骨洞炎は改善していたが, 大脳基底核に脳炎を疑う所見を認め, 脳炎の続発によって軽度意識障害が遷延していると考えられた。 その後抗菌薬投与のみで徐々に意識状態は改善した。
     本症例は感染源である蝶形骨洞炎に対し内視鏡下副鼻腔手術を施行し, 硬膜外膿瘍と脳炎に対しては保存的加療のみで軽快した。 蝶形骨洞の解剖学的特徴から, 副鼻腔炎症状が先行せず非特異的症状のみで経過し, 重篤な合併症を生じるまで発見が遅れる可能性がある。 原因不明の意識障害では副鼻腔炎による頭蓋内合併症も念頭に入れ精査を行い, 抗菌薬の投与に加え, 副鼻腔手術や頭蓋内手術, もしくはその両方の施行を検討するべきである。
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