超高齢社会を迎えた本邦では, 摂食嚥下障害のある高齢者の増加が予想される。 嚥下造影検査や嚥下内視鏡検査を用いない簡易検査である, 摂食嚥下機能スクリーニング法のニーズが高まっている。 現在, 国内外で行われている摂食嚥下機能スクリーニング法に関して, 文献調査を行った。 欧米では, The Mann assessment of swallowing ability (MASA) や Gugging swallowing screen (GUSS) を用いた報告が散見される。 在宅医療が推進されている現在, 摂食嚥下機能を簡易に評価して適合した食形態を提案できるような, 日本人向けの摂食嚥下機能スクリーニング方法の開発が望まれる。
口腔インプラント治療に伴う上顎洞合併症であればこそ, 手術適応があれば, 低侵襲で患者の負担と不利益が少ない術式を可能な限り検討する必要がある。
低侵襲で患者の負担が小さい内視鏡下副鼻腔手術が, 耳鼻咽喉科では上顎洞迷入インプラント異物摘出術の第一選択であり, 耳鼻咽喉科医が果たす役割は少なくない。
局所麻酔下に下鼻道側壁から上顎洞を開窓する下鼻道経由の内視鏡下上顎洞迷入インプラント摘出術は, より低侵襲な術式である。
本術式の適応は, 上顎洞自然口が開存しており, 上顎洞炎を合併していない例, 下鼻甲介の基部が高位な例, 中鼻道自然口ルート・中鼻道が狭い例, 迷入インプラント体が上顎洞自然口・膜様部から遠位にある例, 上顎洞内側壁の骨が比較的薄い例, short type のインプラント体が上顎洞に迷入している例である。
本術式の非適応は, 上顎洞炎を合併しており, 上顎洞自然口・膜様部・中鼻道自然口ルートの開大が必要な例, long type のインプラント体が上顎洞に迷入しており, 下鼻道側壁の開窓部からインプラント体を摘出することが困難な例である。
アブミ骨手術の際, 底板開窓時に脳脊髄液が噴出してくることがあり, stapes gusher と呼ばれ, 多くの症例で高度感音難聴を来すと言われている。
今回, stapes gusher を生じたが術後聴力を温存できた症例を経験した。 症例は18歳男性で, 幼少期からの両側難聴を主訴に近医を受診, 混合性難聴の精査目的で当院を紹介受診した。 内耳や後迷路の奇形と先天性アブミ骨底板固着の合併などの病態や CT 所見からは蝸牛型耳硬化症も考え, 右アブミ骨手術を予定し手術を施行した。 手術時, 底板開窓した際に gusher を来したため, 開窓部とその周囲に筋膜を置き, 軟骨にて補強することで漏出は停止した。 術後聴力は大きな変動を認めず, 再燃を認めていない。 Retrospective に CT を確認すると内耳道の軽度拡張を認めた。 アブミ骨手術の術前に, 耳硬化症の所見だけにとらわれずに gusher 予測因子に十分注意することが必要である。