乳様突起炎に対する外科的治療には鼓膜切開, 鼓膜換気チューブ留置, 乳突洞開放術, 乳突削開術等があるが手術の適応や選択についての明確な基準はない。 今回当院で耳後部切開による手術加療を行った小児3例を提示し, その治療について考察する。
症例1は発症後5日の骨膜下膿瘍を伴う乳様突起炎の5歳女児であり, 膿瘍切開排膿と鼓膜換気チューブ留置術を施行した。 症例2は保存的加療に抵抗性を示す発症後14日の乳様突起炎の2歳女児であり, 乳突洞開放術, 鼓膜換気チューブ留置術を施行した。 症例3は顔面神経麻痺を伴う発症後4日の乳様突起炎の3歳男児であり, 乳突洞開放術, 鼓膜換気チューブ留置術を施行した。 いずれの症例も経過良好で, 術後の乳突腔の再含気化も確認された。 一般に骨破壊を伴う乳様突起炎の場合に乳突削開術の適応となることが多いとされているが, 骨破壊がある場合に限らず抗菌薬投与に抵抗する場合や顔面神経麻痺などの耳性合併症がある場合は躊躇なく乳突洞開放術を行う必要があると考える。
硬化性線維腫は線維腫の範疇に含まれる良性腫瘍であるが, 本邦における頭頸部領域からの発生報告は, われわれの渉猟し得た範囲では見当たらなかった。
今回われわれは鎖骨上窩の腫瘤を主訴とした, 斜角筋内に発生した硬化性線維腫の1例を経験した。
患者は66歳の男性で, 主訴は右頸部のしこりと肩の違和感である。 胸部単純レントゲン写真や頸部 MRI 画像において, 右鎖骨上窩に石灰化領域を有する円形の腫瘤が確認された。 腫瘤摘出時の術中所見において, 右中斜角筋内に厚い被膜に包まれた白色の腫瘤が確認された。 病理所見において, 腫瘤の内部はほぼすべてが膠原線維束で構成されていた。 また個々の線維は肥厚・変性しており, その走行に明らかな方向性はなく密に渦巻状に配列していた。 さらに細胞成分は乏しく硝子化や石灰化が著明であったことから, 最終的に硬化性線維腫と診断された。
今回われわれは, 経口ステロイド内服で改善を認めず再発・長期経過を辿る難治性口腔咽頭潰瘍症例に対して, コルヒチンが奏功したと考えられた1例を経験したので若干の文献的考察をふまえて報告する。
症例は47歳男性。 1ヵ月前からの咽頭痛を主訴に当科を紹介受診し, 精査の結果難治性口腔咽頭潰瘍と診断した。 経口ステロイドの内服加療では改善を認めなかったが, コルヒチンの内服加療により症状および所見ともに改善を認めた。 その後の症状所見再燃時も同治療で軽快したため, 本症例ではコルヒチンが奏功したと考えられた。 コルヒチンは痛風の治療薬であるが難治性口腔咽頭潰瘍に有効な場合があるとされており, その機序は好中球の機能を制御することに由来するといわれている。 またコルヒチンは同じく口腔内病変を有するベーチェット病の有力な治療薬としても確立されており, 使用に際しては, ベーチェット病を考慮しながら診療にあたる必要がある。
近年, 薬疹の分野では新薬が増えてくるにつれて今までとは異なる薬疹が増えてきた。 これまでに薬疹報告されている薬剤の傾向として, 最近は使われなくなった薬剤, 報告が増えた薬剤, 近年続々と増えている分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬や新規薬剤の糖尿病薬に分けて検討した。 また, 薬疹の診断, そして被疑薬検索の検査を有意義なものにするために, 検査を施行する時期を理解することが重要であると考えた。