耳鼻咽喉科展望
Online ISSN : 1883-6429
Print ISSN : 0386-9687
ISSN-L : 0386-9687
63 巻, 4 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
カラーアトラス
綜説
  • 松浦 一登
    原稿種別: 総説
    2020 年 63 巻 4 号 p. 140-151
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2021/08/15
    ジャーナル フリー

     下咽頭癌治療では, 早期癌に対しては喉頭温存を目指して根治照射や喉頭温存手術が選択されている。 一方, 進行癌に対しては手術治療が主体となるが, 喉頭摘出を余儀なくされることが多い。 そのため喉頭温存を図る場合には, 導入化学療法や化学放射線同時併用療法が選択されている。

     下咽頭癌患者では食道癌をしばしば併発する。 食道癌に対してすでに放射線治療を行っている場合, 下咽頭癌に対してはそれを選択できないことがある。 したがって, 下咽頭癌治療における喉頭温存手術は重要な戦術である。 近年は経口腔手術や内視鏡的咽喉頭手術が増加している。 一方で, 外切開による喉頭温存・下咽頭癌部分切除術はあまり行われていない。 われわれは2004年より46件の外切開による喉頭温存手術を行い, 5年疾患特異的生存率 90%, 喉頭機能温存率 83% を得ることができた。 切除範囲の決定が難しいことから, 適切な切除をするために, 内視鏡を用いて切除範囲を決めて咽頭粘膜切開を施行し, 頸部からアプローチして腫瘍を取り出す方法を考案した。 この方法では全例病理学的完全切除が得られ, 戦術として有用な手技であると考えている。

臨床
  • 大戸 弘人, 森野 常太郎, 小森 学, 近澤 仁志, 小島 博己
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 4 号 p. 152-157
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2021/08/15
    ジャーナル フリー

     アブミ骨上部構造と底板の離断所見を合併した耳硬化症の1例を経験したので報告する。 症例は34歳男性。 3ヵ月前より左難聴を自覚し受診した。 鼓膜は正常, 純音聴力検査で左伝音難聴を認めた。 側頭骨 CT 画像検査では, 両側の前庭部から蝸牛周囲を取り囲むように脱灰像を認めた。 耳硬化症の診断に対しアブミ骨手術を施行したところ, 術中所見でアブミ骨上部構造と底板との間に離断を認め, 耳小骨離断を伴う耳硬化症の症例であった。 摘出アブミ骨の病理学的所見では破骨細胞の浸潤および骨内の空隙が多く確認された。 術前に中耳腔内に感染の遷延はなかったこと, 解剖学的構造異常はみられなかったこと, van der Hoeve 症候群を疑わせる症状や特徴はないことから, 本症例でみられた耳小骨離断は耳硬化症の病態より生じたと考えられた。 本症例のように耳硬化症に耳小骨離断を合併する症例があるため手術前に精査及び術式の計画をよく確認する必要がある。

  • 柳 徳浩, 清水 雄太
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 4 号 p. 158-165
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2021/08/15
    ジャーナル フリー

     症例は87歳, 女性。 右滲出性中耳炎にて受診し, 徐々に顔面神経麻痺, 反回神経麻痺を生じ, 初診から1年8ヵ月で死亡し, 剖検に至った。 死因は副鼻腔菌球形成を端緒とする慢性浸潤性副鼻腔真菌症による両側声帯麻痺による呼吸不全と考えられた。

     Garcin 症候群とは, 頭蓋底部の腫瘍性疾患や炎症性疾患または血管病変により, 一側性多発性に脳神経が侵されるもので, 四肢麻痺および頭蓋内圧亢進症状を認めないものとされている。 本症例の場合, 右滲出性中耳炎を契機に受診し, 緩徐に右顔面神経麻痺, 続いて右反回神経麻痺が出現し, 受診から約1年後に Garcin 症候群が成立した。

     頭頸部において病変の除去が困難な部位に組織診断がつかない浸潤影を認めた場合, 背景に副鼻腔菌球形成があれば, 血清学的補助診断も用いて, 浸潤性副鼻腔真菌症としての治療を検討するべきと考える。

  • 黒柳 拓樹, 結束 寿 , 竹下 直宏, 内尾 紀彦, 志村 英二, 小島 博己
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 4 号 p. 166-171
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2021/08/15
    ジャーナル フリー

     降下性壊死性縦隔炎は, 歯原性感染症や咽頭を中心とした上気道炎が深頸部感染症に進展したのちに縦隔に降下する, 重篤な感染症である。 今回われわれは, 縦隔膿瘍を伴う降下性壊死性縦隔炎に対し CT ガイド下ドレナージ術を施行し, 良好な経過をたどった症例を経験した。

     症例は特記すべき既往のない79歳女性。 咽頭痛と頸部腫脹を主訴に前医を受診した。 ガス産生を伴う降下性壊死性縦隔炎の診断にて, 同日頸部外切開による切開排膿を施行した。 その後縦隔内と後頸部に膿瘍を形成したため, CT ガイド下膿瘍ドレナージを第2病日, 第17病日に施行し第65病日に経口摂取が開始できた。 自宅退院前のさらなる ADL の回復を目的に, 第141病日にリハビリ病院へ転院となった。

     侵襲の少ない CT ガイド下ドレナージが有効な治療法であることが示唆された。

  • 中澤 宝, 松浦 賢太郎, 松井 秀仁, 大平 真也, 和田 弘太
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 4 号 p. 172-176
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2021/08/15
    ジャーナル フリー

     咽喉頭真菌症は, 局所および全身的な易感染状態を原因として発症する日和見感染症である。 喉頭に真菌症を生じることは少ないが, 嗄声や呼吸困難を呈することがある。

     今回われわれは呼吸困難をきたした咽喉頭カンジダ症の1例を経験したため報告する。 症例は41歳男性, 呼吸困難を主訴に受診した。 咽喉頭に白苔があり, 喉頭粘膜の浮腫を認めていた。 入院治療を推奨するも希望せず, 咽頭擦過による真菌学的検査を行い, アムホテリシン B の内服で治療した。

     咽喉頭真菌症の多くは予後が良好であるが, 喉頭粘膜の腫脹や肉芽腫形成によって気道狭窄を起こし呼吸困難を生じる可能性がある。 初期治療が奏功しない場合や, 菌種の薬剤感受性によっては抗真菌薬の変更が必要である。

  • 木下 慎吾, 大崎 政海
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 4 号 p. 177-181
    発行日: 2020/08/15
    公開日: 2021/08/15
    ジャーナル フリー

     Medial meatal fibrosis (MMF) は, 鼓膜上皮層と鼓膜固有層の間に肥厚した線維性組織を認める疾患である。 発症の誘因はさまざまで治療は手術が中心となる。 今回われわれは誘因がない66歳女性の Medial meatal fibrosis を経験した。 これまでの報告を参考に手術を行い, 鼓膜上皮層を直上切開し皮弁として挙上後に病変を摘出した。 鼓膜上皮層と鼓膜固有層は可能な限り温存し, 移植片として鼓膜浅在化を防止するため穿孔部と前方処理に薄切軟骨を使用した。 摘出組織の病理検査は肥厚し線維化した間質が観察された。 術後は良好な上皮化を認め, 純音聴力検査の気導骨導差は改善した。 薄切軟骨は鼓膜固有層上に固定され前方では折り返すことがないため, 浅在化を起こしにくく Medial meatal fibrosis の手術に有用な移植片であると考えられた。 また再発をきたしやすい疾患であるため長期間の経過観察が必要である。

境界領域
画像診断
feedback
Top