耳鼻咽喉科展望
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63 巻, 5 号
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カラーアトラス
綜説
  • 岩﨑 真一
    原稿種別: 総説
    2020 年 63 巻 5 号 p. 198-205
    発行日: 2020/10/15
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

     前庭誘発筋電位検査 (vestibular evoked myogenic potential: VEMP) は, 強大な音響刺激によって誘発される, 前庭由来の筋電位である。 胸鎖乳突筋から記録される前庭誘発頸筋電位 (cVEMP) と外眼筋から記録される前庭誘発眼筋電位 (oVEMP) とがあり, cVEMP は球形嚢の機能を反映し, oVEMP は卵形嚢の機能を反映する。 これらの検査と, 半規管機能検査である温度刺激検査や video head impulse test を組み合わせて行うことによって, 前庭機能の詳細な評価が可能となる。 本稿では, oVEMP, cVEMP の原理と記録法, 臨床での活用例について概説する。

臨床
  • 嶋村 洋介, 弦本 有香, 石井 正則, 月舘 利治
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 5 号 p. 206-213
    発行日: 2020/10/15
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

     IgG4 関連疾患は, 高 IgG4 血症, 組織への IgG4 陽性形質細胞浸潤, 高度の線維化が特徴である全身性慢性炎症性疾患であり, 耳鼻咽喉科領域においてもさまざまな臓器症状を呈する。 頭頸部領域における IgG4 関連疾患は Mikulicz's 病, Küttner 腫瘍, Riedel 甲状腺炎などが挙げられるが, 近年 IgG4 関連疾患に伴う鼻副鼻腔病変の報告が増えている。 われわれが経験した慢性鼻副鼻腔炎を伴った IgG4 関連疾患4例について報告する。

     症例1 (47歳男性) と症例2 (49歳男性) は, 慢性鼻副鼻腔炎として手術を行ったが, その数年後に他臓器症状が出現したため, 手術検体の追加病理検査および鼻ポリープ組織の再生検を行ったところ, IgG4 陽性形質細胞浸潤が認められた。 症例3 (64歳男性) と症例4 (65歳男性) は, 初診時に他臓器症状を伴う鼻症状を主訴に受診し, 外来で鼻ポリープを生検したところ, IgG4 陽性形質細胞浸潤が認められた。 4症例いずれも, 他臓器症状に鼻副鼻腔炎を伴い, 鼻ポリープの病理組織学的検査により比較的低侵襲で確定診断を得ることができた。 同時性あるいは異時性に全身症状を伴う鼻副鼻腔炎症例では IgG4 関連疾患を念頭に入れ診療するべきと考える。

  • 永井 美耶子, 水成 陽介, 中澤 圭史, 櫻井 凛子, 弦本 惟郎, 杉本 直基, 池田 このみ, 小森 学
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 5 号 p. 214-220
    発行日: 2020/10/15
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

     軟部好酸球性肉芽腫症は全身の軟部組織に無痛性腫瘤を形成する, 末梢血好酸球, 血中 IgE の増加を特徴とする比較的稀な疾患である。 今回われわれは巨大な腫瘍を呈した木村氏病の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する。

     症例は27歳男性, 主訴は10年前より増大する左耳後部腫瘤であった。 末梢好酸球および血中 IgE の高値を認め, 生検の結果木村氏病の確定診断を得た。 ステロイド漸減療法を行い腫瘍は縮小したが, 余剰皮膚を認め, 審美的な面から外科的切除を行った。 木村氏病の治療は確立されていないが, ステロイド内服, 手術療法などを適宜組み合わせていく必要があると思われる。

  • 小黒 亮史, 茂木 雅臣, 松下 豊, 豊川 怜子, 渡邊 統星, 飯田 誠, 山本 裕, 小島 博己
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 5 号 p. 221-227
    発行日: 2020/10/15
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

     Gradenigo 症候群とは中耳炎, 三叉神経痛, 外転神経麻痺を3主徴とする疾患概念である。 症例は10歳の女児。 側頭部痛と耳後部痛で発症するも近医耳鼻咽喉科・小児科診察で異常所見はなく, 鎮痛薬のみで経過観察したところ約1ヵ月後に外転神経麻痺を来した。 当院受診時に中耳炎所見を認め, 本症と診断した。 抗菌薬およびステロイド投与による保存的加療が奏功し, 症状・所見の改善を得た。 画像検査や治療経過より, 原発性錐体尖炎や中耳炎による続発性錐体尖炎が原因と推測された。 退院後6ヵ月時点で再燃を認めず経過良好である。

  • 宮村 洸輔, 大村 和弘, 森 恵莉, 鴻 信義, 小島 博己
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 5 号 p. 228-234
    発行日: 2020/10/15
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

     多形腺腫は唾液線由来の良性腫瘍であり, その多くが大唾液腺に生じ, 鼻腔内での発生は稀である。 治療は外科的切除が基本であり, 一定の確率で悪性合併が存在し, 再発の可能性もあるため, 腫瘍の一塊切除が原則である。

     今回われわれは内視鏡下に一塊切除しえた鼻中隔原発多形腺腫の1例を経験した。 症例は54歳男性。 鼻閉を主訴に近医を受診し, 右鼻内の腫瘤性病変を指摘され精査加療目的に当院紹介となった。 CT 検査にて鼻腔内に限局する腫瘍性病変を認め, 内視鏡下鼻腔腫瘍摘出術を施行した。 腫瘍の鼻中隔軟骨・骨との癒着はなく, 切除断端を十分にとって摘出し, 病理組織学的検査にて多形腺腫と診断され完全切除を確認した。 現在外来で経過観察中である。

     これまで本邦で報告された鼻腔多形腺腫は157例である。 過去の報告の術式を調べると, 特に近年では内視鏡技術の進歩に伴い鼻内法が選択される症例が増えている。 腫瘍の大きさや位置によっては基部が確認できず術中操作が困難となるため, その適応を十分に確認し, アプローチ法を検討して一塊切除を目指すことが重要である。

     今回, われわれの用いた術式・手術戦略を紹介し, 近年発表された新規術式についても考察を加え報告する。

  • 斎藤 翔太, 鄭 雅誠, 加藤 孝邦, 小島 博己
    原稿種別: 臨床
    2020 年 63 巻 5 号 p. 235-241
    発行日: 2020/10/15
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

     副甲状腺癌は原発性副甲状腺機能亢進症 (primary hyperparathyroidism: pHPT) の中で, 5%以下と稀な疾患である。 今回, 副甲状腺癌の1例を経験したので報告する。

     症例は62歳, 男性。 腎機能障害, 両側腎結石の精査目的に, 当院腎臓内科を紹介受診した。 高カルシウム血症を認め, 当院内分泌内科で精査し, 左副甲状腺腺腫による原発性副甲状腺機能亢進症の診断となった。 血清カルシウム値が異常高値のため内服治療を行うも, 血清カルシウム値の正常化は得られず, 当科に摘出手術依頼となり, 当科で左副甲状腺腺腫摘出術を施行した。 術後病理組織所見から副甲状腺の adenocarcinoma との診断に至り, その病理組織所見上で被膜浸潤を認めることから, 微小転移の存在が危惧されること, また初回手術は腫瘍切除のみであったため, 根治手術になっていない可能性が否定できず, 追加手術として甲状腺左葉切除, 左気管傍リンパ節郭清術を行った。 術後1年経過したが, 局所再発, 遠隔転移は認めていない。

     副甲状腺癌では被膜を損傷すると播種をきたす危険があるため, 穿刺吸引細胞診や針生検は原則禁忌である。 pHPT の患者において術前の臨床所見から, いかに副甲状腺癌を見落とさないかを念頭におき, 治療介入する必要がある。

境界領域
  • 田中 真琴
    2020 年 63 巻 5 号 p. 242-246
    発行日: 2020/10/15
    公開日: 2021/10/15
    ジャーナル フリー

     認知症と味覚障害との関連についての研究は, 嗅覚障害に関する研究を比べて非常に少ない。 アルツハイマー病において, 味覚障害は生じないとする報告, 特定の味質のみの味覚が低下するとする報告, すべての味質の味覚が低下するとする報告などその結果もさまざまで, 一定の見解が得られていない。 味覚機能は加齢に伴い低下するものの, その感受性は個人差が大きいこと, また, 味覚機能の評価法が統一されていないため一貫性のある研究に繋がらないことなどが問題であり, 今後の研究の発展が期待される。

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