耳鼻咽喉科展望
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カラーアトラス
綜説
  • 櫻井 結華
    原稿種別: 綜説
    2024 年 67 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    耳鼻咽喉科領域が発展を続けるために,人材育成の原点となる教育は非常に重要である.その医学教育の近年の動向は目まぐるしく変化している.医学教育の質保証,診療参加型臨床実習の拡充,共用試験の公的化,医学教育モデル・コア・カリキュラムの改訂は,その中でも重要な事項である.医学部教育の段階からどのように医学教育に関わり,卒後も関わり続けていくかは,耳鼻咽喉科の将来展望と密接に関わると考える.そのような視点から,近年の医学教育の動向と,耳鼻咽喉科が関わるべき事項について解説する.

原著
  • 常見 泰弘, 中山 次久, 柏木 隆志, 阿久津 誠, 斎藤 翔太, 春名 眞一
    原稿種別: 原著
    2024 年 67 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    後部副鼻腔である後篩骨洞や蝶形骨洞は,副鼻腔嚢胞の発生部位としては比較的稀であるが,視神経や上眼窩裂と隣接するため視力障害や眼球運動障害といった視器障害を来す可能性がある.しかし,視力障害を伴わず動眼神経麻痺単独で発症する症例は稀である.今回我々は,動眼神経単独麻痺を来した後篩骨洞嚢胞の症例を経験したので報告する.

    症例は,副鼻腔手術の既往がある78歳男性.頭痛,右眼瞼下垂,複視を主訴に当院を受診した.画像検査では,右後篩骨洞から前床突起にかけた嚢胞性病変および前床突起と上眼窩裂の境界の骨壁に菲薄化を認めたため,副鼻腔嚢胞の圧迫による動眼神経麻痺が考えられた.内視鏡下鼻副鼻腔手術による嚢胞開放術を行ったところ,翌日より自覚症状の改善傾向を認めた.術後2ヵ月で自覚症状は消失し,眼科的評価においても異常所見は認めなかった.さらに,術後2年間の経過観察でも内視鏡下に嚢胞は開放されていることが確認され,症状の再燃も認めなかった.本報告では,副鼻腔嚢胞による動眼神経単独麻痺を呈した過去の報告例を収集するとともに,動眼神経麻痺の機序に関する考察を行った.

  • 武山 慧, 菊地 瞬, 渡邉 菜月, 柳原 太一, 高津 南美子, 尾田 丈明, 原山 幸久, 飯田 誠
    原稿種別: 原著
    2024 年 67 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    今回,急性咽頭炎の診断にて入院加療としたが治療に難渋し,経過中の身体所見よりCOVID-19関連小児多系統炎症性症候群の診断に至った症例を経験したので若干の文献的考察を加えて症例報告とする.

    症例は15歳男性,当院受診2ヵ月前にCOVID-19のPCR検査が陽性であった.症状は発熱,鼻汁,嗅覚障害で10日間の自宅安静で症状は軽快した.当院受診4日前から発熱および咽頭痛,下痢を認め当院受診となった.急性咽頭炎の診断にて経口摂取不良のため輸液および抗菌薬点滴目的で入院とした.入院加療後も症状の改善に乏しく治療に難渋していた.経過中に川崎病に類似した所見を認め,COVID-19関連小児多系統炎症性症候群の診断に至った.γグロブリン治療開始し速やかに症状の改善を認めた.COVID-19関連小児多系統炎症性症候群は毒素性ショック症候群または川崎病を疑わせるような多臓器系にわたる強い炎症を起こし重症化リスクがある.発症年齢の中央値は8.4歳とやや高く,本症例のように青年期の患者は耳鼻咽喉科外来にて遭遇する可能性がある.鑑別疾患として念頭に置き,迅速に治療に繋げる必要性がある.

  • 志村 英二, 菅野 万規, 阿久津 泰伴, 三浦 拓也, 佐久間 信行, 麻植 章弘, 永井 美耶子, 黒栁 拓樹, 竹下 直宏, 水成 陽 ...
    原稿種別: 原著
    2024 年 67 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    レンバチニブは根治切除不能放射線ヨード治療抵抗性甲状腺癌に適応のある分子標的薬であり,本邦でも2015年3月に保険収載され,当科でも同年5月よりレンバチニブ療法を開始している.

    2015年9月から2021年11月までの間に東京慈恵会医科大学附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科にて,根治切除不能甲状腺癌に対する治療としてレンバチニブ療法を施行された11例について,治療効果や有害事象を中心に後向きに検討した.年齢の中央値は66歳で,組織型は乳頭癌が6例,濾胞癌が1例,未分化癌が4例であった.観察期間の中央値は14ヵ月であり,全例で有害事象が生じたが,Grade 3以上の有害事象で最も多かったものは高血圧(54.5%)であった.最良治療効果はPR:3例(27%),SD:7例(64%),PD:1例(9%)であり,奏効率は27%,病勢コントロール率は91%であった.また,全体の無増悪生存期間の中央値は8.3ヵ月であった.今後レンバチニブの開始量の見直しや減量・休薬の調節方法を工夫することで,治療成績改善の可能性があると考えた.

  • 宮澤 渉, 弦本 惟郎, 小林 俊樹
    原稿種別: 原著
    2024 年 67 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    鼻性視神経症は鼻性眼窩内合併症に含まれる概念であり,副鼻腔炎や,副鼻腔嚢胞による視神経の圧迫といった副鼻腔病変が原因となって,視力障害を生じたものとされているが一定の定義はない.診断にはCTやMRIなどの画像検査が必要であり,視神経の走行と副鼻腔病変の解剖学的位置関係を把握することが重要で,中でもOnodi蜂巣は鼻性視神経症の関連について報告が多く,意識的に画像を評価する必要がある.治療は手術が基本であり,緊急手術の適応となるが,治療介入のタイミングによっては予後不良となる症例がある.ステロイドの使用に関しては一定の見解は得られていないが,糖尿病や真菌症の場合など一部の症例を除いて投与が推奨されている.今回,一例は発症3日目の比較的早期,もう一例は発症15日目と時間が経過しており,視力予後が不良と考えられた鼻性視神経症に対して,内視鏡下鼻副鼻腔手術を行い視力回復が得られた2症例を報告する.

  • 島田 顕央, 由井 亮輔, 藤川 桃紀, 加藤 孝邦, 和田 弘太
    原稿種別: 原著
    2024 年 67 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans: DFSP)は皮膚組織に生じる悪性軟部腫瘍であり,耳鼻咽喉科医として遭遇する頻度は非常に稀な疾患である.今回我々は顎下部に発生したDFSPを経験したので報告する.

    症例は26歳男性で,3ヵ月前から頸部腫瘤を自覚し当院を受診した.術前の穿刺細胞診では診断がつかず,診断・治療目的に腫瘍摘出術を施行しDFSPの診断となった.

    DFSPはComputed Tomography(CT)で,造影増強効果のある孤立性の皮下結節を認め,病理検査で花むしろ状構造の紡錘形線維芽細胞の増殖が特徴的であり,免疫染色ではCD34が陽性となる.治療の第一選択は外科的拡大切除である.切除不能例に対する放射線治療や,遠隔転移に対する分子標的薬投与の効果も報告されている.予後に関しては,遠隔転移が1%程度であり比較的良好であるが,局所再発の頻度が高い.本症例では術前にDFSPの診断に至らなかったため,十分な切除範囲を確保することができなかった.5年以上経過して局所再発を来す例も報告されているため,本症例においても長期間の観察が必要であると考える.

境界領域
  • 上羽 瑠美
    原稿種別: 境界領域
    2024 年 67 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2025/02/15
    ジャーナル フリー

    嚥下障害の原因はさまざまで,嚥下機能改善には嚥下障害に対する多方面からのアプローチが重要である.摂食嚥下のリハビリテーションでは,①機能回復,②機能低下がある状態でも生活の質の向上,③対象者の社会参加を促すことが大きな目的である.本稿では,嚥下障害に対する非侵襲的な対応として,「嚥下リハビリテーション」の中でも食べ物を用いない基礎訓練(間接訓練)を中心に,感覚のリハビリテーション・運動機能のリハビリテーションという視点から説明する.

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