Otology Japan
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20 巻, 3 号
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原著論文
  • 宇佐美 真一, 工 穣, 鈴木 伸嘉, 茂木 英明, 宮川 麻衣子, 西尾 信哉
    2010 年 20 巻 3 号 p. 151-155
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    低音域に残存聴力を有する高度感音難聴患者に対し人工内耳埋め込み術を施行した。症例は60歳女性。40歳頃から難聴を自覚した。50 歳頃からは右耳の補聴器の装用効果が認められなくなった。この症例にMED-EL社人工内耳(COMBI 40+:standard電極)埋め込み術を行った。電極挿入は、より低侵襲な正円窓からのアプローチにより行った。全電極を挿入したにもかかわらず、挿入後の低音部聴力が保存できた。残存聴力の保存が確認できたため、Electric acoustic stimulation用のスピーチプロセッサであるDUET®を用い、低音部は補聴器、高音部は人工内耳により音情報を送り込んだ。
    8ヶ月後の語音弁別能を評価した結果、術前15%であった最高明瞭度が50%にまで改善が認められ、日本語の聴取においても有用であることが明らかとなった。
  • 小森 学, 安藤 裕史, 露無 松里, 飯村 慈朗, 波多野 篤, 小島 博己, 森山 寛
    2010 年 20 巻 3 号 p. 156-163
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:救急診療での抗菌薬投与が小児急性中耳炎に与える影響を調べること。
    対象:2008年10月からの半年間で急性中耳炎にて救急外来を受診した15歳未満の患者137人中、翌日再受診し経過観察が可能であった65人を対象とした。
    方法:急性中耳炎の軽症例と重症例はガイドラインに準じた治療を行った。中等症例ではガイドラインと異なり鎮痛薬服用後に再度疼痛を訴えた場合のみ抗菌薬を服用してもらった。翌日再受診時と初診時との比較検討を行った。
    結果:中等症例ではガイドラインに準じた治療法より抗菌薬の使用症例が4.6%((43 + 13 - 43 - 10)/65 :(初診時中等症例+初診時重症例-再受診時中等症例-再受診時重症例)/総再受診数)減少した。抗菌薬投与群と非投与群において、翌日認めた重症度の改善には有意差を認めなかった。中等症例全体の23.3%(10/43)が保護者の判断で抗菌薬を投与した。
    結論:救急診療では重症例以外はセーフティネットを使用することで抗菌薬使用を減らす可能性が示唆された。
  • 大田 隆之, 松井 和夫, 呉 晃一, 内藤 聡, 三好 豊
    2010 年 20 巻 3 号 p. 164-172
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    我々は、真珠腫性中耳炎の手術において、tympanoplasty with transcanal atticotomy and sctumplastyまたは、canal wall down tympanoplasty with canal reconstruction を行い、明視下に真珠腫を摘出し、上鼓室・外耳道の形態の再建を行っている。
    その上鼓室・外耳道の再建は、独自の工夫を行っており、耳介軟骨を用い、再形成性再発を予防するように設置している。
    対象は、2006年4月から2008年3月の2年間に初回手術を行った上鼓室型真珠腫新鮮例91耳である。
    日本耳科学会 上鼓室型真珠腫進展度分類案2008に従って分類し、各stageごとに、術式、聴力改善率、段階手術の割合、段階手術での遺残真珠腫の有無と、術後CTでの含気化と聴力との関連も検討したので報告する。
  • 深美 悟, 春名 眞一, 平林 秀樹, 月舘 利治, 岡田 真由美, 金谷 洋明
    2010 年 20 巻 3 号 p. 173-179
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    耳症状を初発とし、C-ANCA、P-ANCA陰性で、鼓室開放術での組織検査でも特徴的所見がなく、経過中に肥厚性硬膜炎を合併したWegener肉芽腫症疑い症例を経験した。症例は67歳の女性で、4ヵ月前からの左耳痛、混合難聴にて鼓膜換気チューブ留置術、抗菌薬とステロイド薬の投与を行ったが、耳漏持続にて当科紹介された。3ヵ月後の左試験的鼓室開放術での組織検査では非特異的炎症性肉芽であった。その後、右耳漏、めまい、頭痛、鼻症状が出現した。経過中にC-ANCAの上昇、脳MRIで肥厚性硬膜炎を認め、肥厚性硬膜炎を伴ったWegener肉芽腫症疑い例と診断した。プレドニンとサイクロフォスファマイド療法を開始し、症状が軽減した。Wegener肉芽腫症の初期病変では、特徴的病理組織所見、C-ANCA値が陽性にならないことがあるため、本疾患を疑った場合には定期的な血液検査や画像検査、病理組織検査が重要と考えられた。
  • 倉田 奈都子, 古宇田 寛子, 喜多村 健
    2010 年 20 巻 3 号 p. 180-185
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    74歳女性の急性中耳炎に続発した、S状静脈洞血栓症、髄膜炎、硬膜外膿瘍、脳膿瘍の耳性頭蓋内合併症症例を経験した。外科的処置としては鼓膜切開を施行したのみで、抗菌薬による保存的治療により軽快した。本症例は、耳疾患の既往及び全身的な基礎疾患のない成人の急性中耳炎に伴う耳性頭蓋内合併症であり、中枢所見が主症状で鼓膜所見は軽微であった。耳性頭蓋内合併症は今日では稀であるが重篤な合併症である。耳鼻咽喉科、脳神経外科がよく協議し、患者の経過を注意深く観察しながら、症例ごとに治療方針を検討する必要があると思われた。
  • 伊藤 まり, 相馬 啓子, 小関 芳宏, 池上 奈歩
    2010 年 20 巻 3 号 p. 186-189
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    他覚的耳鳴は身体内部に耳鳴となる明らかな音源がある場合で、他覚的耳鳴は筋性耳鳴、血管性(拍動性)耳鳴、その他に分けられる。血管性(拍動性)耳鳴は脈拍と一致しており、原因疾患として局所疾患と全身疾患に分けられ、全身疾患による拍動性耳鳴は循環動態の変化と関係があり、貧血や甲状腺機能亢進、beri-beri(ビタミンB1欠乏症)、褐色細胞腫、妊娠が挙げられる。全身疾患による拍動性耳鳴が他覚的に聴取されることは極めて稀である。今回、我々は子宮筋腫に伴う不正出血、貧血により、左他覚的拍動性耳鳴を引き起こし、子宮筋腫摘出術後、貧血の改善に伴い耳鳴が改善した症例を経験し、その耳鳴音を記録、解析し得たので報告する。
シンポジウム
  • 樫尾 明憲, 山岨 達也
    2010 年 20 巻 3 号 p. 191-196
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    酸化ストレス、ミトコンドリア遺伝子障害と老化の関連が示唆されている。我々はPolgおよびゲルマニウム慢性摂取マウスという2つのミトコンドリア障害モデルで、聴覚系の変化を検討し、加齢に伴う有意な聴力閾値上昇・蝸牛組織の変性を確認した。ゲルマニウム摂取モデルでは蝸牛でミトコンドリア関連遺伝子発現低下を認め、その機能低下が蝸牛組織変性・難聴につながると考えられた。次に抗酸化剤であるビタミンC合成能欠損マウス(SMP30/GNL KOマウス)を用い、ビタミンCの投与量による聴覚系の変化を検討した。ビタミンC制限は蝸牛内ビタミンC濃度低下、聴力閾値上昇とラセン神経節細胞の減少を来たした。しかし、ビタミンC補充は野生型マウスでも蝸牛内ビタミンC 濃度の上昇はなく、聴力・ラセン神経節の保護効果はなかった。ビタミンCの欠乏は老化に伴う難聴を加速させるが、補充は難聴の進行を予防できないことが示唆された。
  • 木村 百合香
    2010 年 20 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    ヒト内耳組織は死後開頭剖検が得られた際にしか採取できず、組織検体数が非常に限られていること、また、側頭骨という硬組織の中で高度に機能分化しており形態の温存が困難であることから、ヒト側頭骨検体を用いた分子病理学的解析は現代においても方法論が議論されている段階である。しかし、老人性難聴では約1/4の症例で原因を説明しうる光学顕微鏡的病理組織所見を持たないとされていることから、責任病変の同定など、ヒト側頭骨分子病理学的解析は厳然とした意義を有する。我々は、網羅的遺伝子解析の可能性を視野に置いた内耳の凍結保存の推奨や、パラフィン包埋内耳切片を用いた免疫組織学的検討、レーザーマイクロダイセクション法による蝸牛内機能単位別の遺伝子発現の同定といった分子生物学的手法の側頭骨病理学への導入を試みており、これらの手法をもちいた老人性難聴の病因解析の可能性について述べた。
  • 土井 勝美, 佐藤 崇
    2010 年 20 巻 3 号 p. 203-207
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    ヒト老化徴候を示すKlotho 遺伝子改変マウスの加齢性の聴力低下については、ラセン神経節細胞の生存、血管条機能の維持にKlotho蛋白が液性因子として必須であることを示した。Klotho蛋白は、FGFおよびInsulin/IFG-1 シグナルを制御することが報告されている。一方、p75NTR遺伝子改変マウスの加齢による聴力低下については、ラセン神経節細胞および感覚細胞の生存にp75NTR受容体の存在が必須であることを示唆している。神経細胞・感覚細胞の保持に、Trk受容体とp75NTR受容体との平衡バランスが重要であり、IGF-1シグナルが同平衡バランスを制御することが報告されている。
    聴覚の老化には、FGF、Insulin/IGF-1 シグナル、NGF、BDNF、NT-3などさまざまな神経栄養因子・細胞増殖因子が関与していることが示唆され、将来的にこれらの分子を標的とする遺伝子診断法の確立や新たな老人性難聴の予防法・治療法の開発がなされることが望まれる。
  • 菅原 一真
    2010 年 20 巻 3 号 p. 208-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    熱ショック応答とは生体がストレスに暴露された際、細胞内に熱ショック蛋白質を誘導する応答のことである。生体の老化に伴い熱ショック応答が減弱することが知られている。我々は老人性難聴における熱ショック応答の役割について着目し、モデルマウスを用いて検討した。
    老人性難聴モデルマウスC57BL/6の2ヶ月齢と8ヶ月齢を強大音に暴露し、24 時間後に内耳の熱ショック応答、聴覚について評価した。C57BL/6では8ヶ月齢になると、強大音曝露後の熱ショック蛋白質の発現増加が認められず、ABR閾値も上昇しており、老化による内耳の熱ショック応答の減弱により内耳障害を生じている可能性が示唆された。また、DBA/2Jマウスの4週齢より内耳にテプレノンを投与すると内耳に熱ショック応答を誘導でき、加齢による難聴の進行を予防できることを示した。
    今回の結果は、老人性難聴の病態のひとつの側面を示しているものと考えた。
パネルディスカッション1
  • 細田 泰男
    2010 年 20 巻 3 号 p. 213-215
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    今回、開業医として耳科手術を行っている施設のアンケート調査を行い、その現状と問題点について検討した。今回の調査で網羅できた開業医で鼓膜形成術あるいは鼓室形成術を実施している施設は43施設であり、これは耳鼻科開業医総数からすると50~100人に1人程度に相当し、かなり限られたものであると考えられた。開業医が耳科手術を行う上での問題点を検討した結果、手術トラブルが11件と最も多く、次いで費用対効果9件、時間的制約8件、保険制度上の制約6件、医療技術5件、医療連携3件、遠方の患者2件と続いた。また、肯定的コメントも9件あった。開業医として耳科手術に携わることには、手術リスク以外にも経済的、時間的、社会的制約もあることが分かった。最後に当院で行っている耳科専門性の向上を目指した診療工夫として、CT検査装置の導入、イリゲーションシステムを用いたベッド上での耳処置を紹介した。
  • 矢部 多加夫, 村上 信五, 時田 信博, 喜多村 健
    2010 年 20 巻 3 号 p. 216-221
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    市中基幹病院における耳科診療の実態を知るため耳科診療・耳科手術を多く行っている施設を対象にアンケート調査を行い、結果を報告した。回答41施設(回答率53%)の診療責任者のプロフィールは、年齢50歳前半、卒後年数30年弱、勤務年数13年。耳鼻咽喉科医師数は約6人で、常勤医が4名。年間鼓室形成術件数は76件、慢性中耳炎29件、真珠種性中耳炎32件。平均鼓室形成術執刀総件数1329件で、半数以上が頭頸部悪性腫瘍治療を行っている。病診連携は全施設が行っており、紹介数は71件、手術件数の7割を占め、良く紹介を受ける診療所は11件、逆紹介は95%、病診連携の会は76%で実施されていた。病病連携はほぼ全施設が、病院─医育機関連携は半数の施設が実施していた。経営状況は9割の施設が良好ないし普通、DPCは7割近い施設が導入。9割弱の回答者が収入・術者評価について低いと感じていた。
  • 矢部 多加夫, 村上 信五, 時田 信博, 喜多村 健
    2010 年 20 巻 3 号 p. 222-227
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    耳科手術を多く行っている施設を対象に後進の指導、医事紛争・予防、基幹病院の役割分担、病院オープン化、退職後の手術治療、耳科診療の今後のあり方、についてアンケート調査を行った。術者委任経験年数は平均卒後5.1年、助手経験症例数は平均66.4、医事紛争は88%の施設でなく、予防として術前検討、十分な手術説明、術後のフォローアップとフィードバックがされていた。役割分担は必要51%で、大都市圏と地方で差がみられ、病院のオープン化はない59%で、ある7施設でも利用は1施設のみであった。退職後手術治療希望は35%であったが、困難な実情の回答が多かった。専門医制度を肯定する回答は63%であったが、やはり大都市圏と地方での差がみられた。状況改善・保険改定、後進育成に関し率直な自由意見がみられた。
  • 結縁 晃治
    2010 年 20 巻 3 号 p. 228-230
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科でもサブスペシャリティーとしての耳科専門医の確立が検討されており、特殊診療科のまた特定の一分野を中心として診療をおこなっていくことが可能かどうか注目されている。めまい・耳鳴・難聴などの神経耳科に特化した診療所を開業して6年が経過したので現状を報告する。私の診療所では欧米の診療所と同じく完全予約制で1時間あたり4~5名程度の診療をおこない、神経耳科疾患に特化した診療機器をそろえることにより専門的な外来診療をおこなうことが可能であった。その結果めまい患者については71.7%の紹介率があり、そのうち27.1%の患者が耳鼻咽喉科からの紹介であり、他科を含めて専門的な診療に対する要望にある程度答えていると考えている。日本では欧米と違って耳鼻咽喉科専門医がプライマリーケアも担っているが、その中で耳科専門医として他施設と連携しながら診療所での診療をおこなうことは、医学的にも経済的にも可能であった。
パネルディスカッション2 その(2)
  • 小川 郁
    2010 年 20 巻 3 号 p. 231-237
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    耳硬化症をはじめとするアブミ骨周囲の疾患に対するアブミ骨手術は鼓室形成術に次いで頻度の高い聴力改善手術であるが、内耳の開窓が必要となることから、術後に感音障害を来たす可能性が常にある。Dead earと呼ばれる術後に聾または聾に近い高度感音難聴を来たすことは、いかに多くの症例を経験しているエキスパートでも0.6~3%程度の頻度で生じうるとされている。本稿では「私の経験した最悪のアブミ骨手術症例」としてdead earを来たした4例のなかから典型的な2例を呈示し、さらに、術後にやはりdead earを呈したが、実は心因性難聴であったという稀な症例の経験から、注意深い術後症状の観察の重要性を述べた。
ランチョンセミナー4
  • Claude Jolly, J. Mueller, S. Helbig, S. Usami
    2010 年 20 巻 3 号 p. 239-246
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    Depending on the etiology of sensory neural hearing loss and patient age, it is postulated that a significant number of cochlear implant candidates today have a rich neural substrate consisting of nondegenerated dendrites and a large number of spiral ganglion cells with associated axons. In addition, many patients have some residual hearing especially in the low frequencies, demonstrating neural survival in the apical regions. With long electrodes covering the scala tympani from base to apex, it has become feasible to improve tonotopic stimulation. Key to the long-term success of implantation is preservation of intracochlear structures during electrode insertion. Round window membrane insertion combined with free-fitting lateral wall electrode placement tends to preserve residual hearing. New coding strategies providing fine structure information in the apex can enhance patient performance. Delicate intracochlear tissues must also be preserved during the multiple explantations and reimplantations that young patients face during their 80+ year life span, otherwise some benefits will be lost over time.
ランチョンセミナー5
  • 松根 彰志
    2010 年 20 巻 3 号 p. 247-250
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    好酸球性副鼻腔炎は、鼻茸、副鼻腔粘膜などの局所に著しい好酸球浸潤を認める難治性、易再発性の副鼻腔炎で難治性の嗅覚障害を伴うことが多い。高頻度に成人発症の非アトピー型の喘息を伴い、一部はアスピリン喘息を呈する。更に、好酸球性中耳炎を合併している例も少なくない。一方、アレルギー性鼻炎の合併は少ない。末梢血中の好酸球数も亢進し、尿中のロイコトリエンが増加していることなど、気道系全体あるいは全身性の疾患としてとらえる必要がある。その病態については、スーパー抗原説、真菌の関与などの報告があるが、未詳の点が多い。現時点での治療の基本は、内視鏡下鼻内副鼻腔手術による炎症巣の可及的減量と、内服ステロイドの漸減療法である。慢性疾患として、呼吸器内科などとも連携して、長期に経過観察と再発時の治療を行う必要がある。
  • 石戸谷 淳一
    2010 年 20 巻 3 号 p. 251-256
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    好酸球性中耳炎は粘稠な耳漏を特徴とし、従来の治療法に抵抗する慢性中耳炎である。また、コントロール不良の場合には感音難聴も生じることから、早期に的確に診断されなければならない。好酸球性中耳炎のほとんどの症例は気管支喘息を合併し、好酸球性副鼻腔炎を合併する症例も多い。すなわち、好酸球性中耳炎は一個体に発症する気道の慢性好酸球性炎症の一つと考えられよう。耳所見は比較的特徴的で、耳漏はニカワ状と表現されるように非常に粘稠である。重症な症例では鼓膜穿孔がみられることが多い。治療としてはステロイドの局所または全身投与が著効する。維持療法としてはステロイドの鼓室内注入が有効であるが、永久的な鼓膜穿孔を生じさせないためには必要に応じてステロイドの全身投与を適時併用することも重要である。本稿では、好酸球性中耳炎の疫学、臨床的特徴、そして重症度に応じた治療法について述べる。
第4回人工内耳・中耳研究会
  • 羽藤 直人, 小池 卓二, 神崎 晶, 暁 清文
    2010 年 20 巻 3 号 p. 257-261
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/11/30
    ジャーナル フリー
    半埋め込み型の新しい骨導補聴器の開発を行っている。システムは、体外ユニットで集音プロセッシング後、コイルで音情報を体内ユニットに送信し、磁場で超磁歪振動子を駆動させるもので、超磁歪素子はチタンカプセルに封入し骨への融合を確実にする。BAHAとの主たる違いは、1)皮膚面への露出がない埋め込み型振動子、2)超磁歪素子で駆動するため高利得、広周波数対応が可能であることである。現在、体内ユニットは試作機が完成し、振動および音響の解析により特性の検証を行っている。また、体外ユニットのマイク、コイル、サウンドプロセッサー部は設計段階であるが、これらには既存の人工中、内耳や補聴器のテクノロジーを流用予定である。これまでの実験結果では高音域で十分な利得を示しており、高音障害型高度感音難聴、特に現状の気導補聴器では十分な聴覚補聴が困難な老人性感音難聴患者にも適応拡大できるデバイスとして開発を行っている。
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