Otology Japan
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22 巻, 1 号
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日本耳科学会創立20周年記念講演
原著論文
  • 小嶋 康隆, 奥野 妙子, 畑 裕子, 松本 有, 田中 友佳子, 井之口 豪
    2012 年 22 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    当科で手術した先天性真珠腫症例39例について、Potsicの進展度分類別に初診年齢、受診動機、術式(乳突腔の処理法と伝音連鎖再建)、聴力予後について検討した。Stage Iが4例(10.2%)で平均年齢4歳、Stage IIが4例(10.2%)で平均年齢5.2歳、Stage IIIが18例(46.3%)で平均年齢12.1歳、Stage IVが13例(33.3%)で平均年齢12.7歳であった。受診動機は難聴を自ら訴えて受診したもの、難聴とめまいを自覚して受診したもの、健康診断で指摘されて受診したもの、たまたま耳鼻科を受診した折に指摘されたものなどに分けられるが、難聴を自覚する前に発見された群は手術年齢が若く、ステージの進行も軽いため、低侵襲な手術が可能であった。
  • 松田 圭二, 佐藤 伸矢, 奥田 匠, 平原 信哉, 直野 秀和, 東野 哲也
    2012 年 22 巻 1 号 p. 23-30
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    開放乳突腔障害12例に乳突皮膚、側頭筋膜、薄切耳介軟骨、有茎骨膜弁を用いた外耳道後壁再建型鼓室形成術を行った。鼓膜が正常か浅在化例では一期的再建を (10/12例)、鼓膜全面癒着例の一部で二期的再建を行った (2/12例)。乳突蜂巣未発達の8例では乳突腔を皮質骨片で充填し、蜂巣発達した4例では含気させて治す方針を取った。2年以上の観察で、全例の乾燥治癒、外耳道、鼓膜の再陥凹を各1例に認めた。聴力改善率は術後12カ月で67%(8/12例)だった。今回の方法は、骨性外耳道の再建ではなく皮膚軟骨一体型の後壁を作ることを意図したもので、長期的にも比較的安定した形態を示した。二期手術の際には、拳上した鼓膜・外耳道が適度な硬さと柔軟さを持ち、元の形、位置に戻すことが容易であった (形状記憶特性)。柔軟性のある筒状の構造物が、ちょうど履物のブーツを連想させるので、簡単に「ブーツ様再建」と呼ぶことを提唱した。
  • 道祖尾 弦, 原 稔, 穐山 直太郎, 福田 智美, 隈上 秀高, 高橋 晴雄
    2012 年 22 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    VSBは中等度から高度の感音・混合難聴に有効とされる埋め込み型の人工中耳で、欧米では多数の症例が施行されている。
    今回両側癒着性中耳炎による混合難聴の71歳の男性に対し、正円窓小窩アプローチによるVSB埋め込み術を施行した。左右それぞれの耳に対し2回ずつ鼓室形成術を施行したが、十分な聴力改善は得られなかった。また補聴器はハウリングや装用の不快感などから使用していなかった。今回、VSB術後に患者満足度の高い聴力改善が得られた。VSBは中耳手術や補聴器装用で聴力改善が得られない症例に対し効果が期待できる機器であることが示唆された。
  • 假谷 伸, 福島 邦博, 片岡 祐子, 前田 幸英, 西崎 和則
    2012 年 22 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    耳垢腺腫は外耳道の耳垢腺を発生母地とする良性腫瘍であり、多彩な組織所見を呈することから微少な組織からでは診断が困難であるとされている。今回、我々は術前の生検にて扁平上皮癌が疑われた耳垢腺腫症例を経験したので報告する。症例は59歳女性。主訴は耳漏であり、それ以外の自覚症状は認められなかった。術前の生検を2回行ったが、ともに扁平上皮癌の疑いという結果であった。耳内法による腫瘍切除術と耳後部有茎皮弁による外耳道再建を施行した。最終病理診断は耳垢腺腫であった。術後、1年半を経過し、再発は認められていない。
  • 吉村 豪兼, 岩崎 聡, 中西 啓, 西尾 信哉, 岩佐 陽一郎, 工 穣, 宇佐美 真一
    2012 年 22 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    Usher症候群は視聴覚障害を生じる疾患の代表であり、臨床症状により3つにタイプ分類されている。平成22年度より難治性疾患克服研究事業として「Usher症候群に関する調査研究」が全国13施設の共同研究で開始された。そこで我々は本症候群の実態把握のため全国アンケート調査を行った。
    対象は日本耳鼻咽喉科学会の定める認可研修施設 (697施設) とし、患者数、ならびにタイプ判定を質問項目とした。
    61.1%の施設より回答が得られたが、報告された患者数は111名に留まり、半数近くの52例 (46.8%) がタイプ判定困難な症例であった。患者数が極端に少ない理由として、本症候群患者であっても耳鼻咽喉科を受診していない場合や、受診してもその後経過観察されていないことが考えられ、タイプ判定が困難な理由は分類基準の曖昧さと思われた。
    より正確な実態把握をしていくためには眼科医との連携とタイプ分類をどの施設でも容易にする統一された分類方法の工夫が必要と考えられた。
  • 仲野 敦子, 有本 友季子, 松永 達雄, 工藤 典代
    2012 年 22 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    Auditory Neuropathy (AN) が疑われた難聴小児に対して、難聴遺伝子解析を行い、3症例にOTOF遺伝子の変異を確認した。1症例は2アレルに、2症例は1アレルにのみOTOF遺伝子変異が同定されたが、3症例ともABRの結果とDPOAEの結果に乖離があり、言語発達の面でも通常の内耳性難聴児とは異なる経過であった。3症例中1例は、新生児聴覚スクリーニング両側パスで、他の1例は一側要精査例であった。DPOAEは、初診時は正常でも徐々に異常となっている例や、初診時から一側は異常であった例も認められた。
    新生児聴覚スクリーニングの普及により早期にANと診断される難聴児の経過は様々であり、DPOAEが異常となる例も確認され、遺伝子解析がAN診断の一助となる可能性があることが示唆された。
  • 溝上 大輔, 田中 伸明, 栗田 昭宏, 松延 毅, 塩谷 彰浩
    2012 年 22 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    Ramsay Hunt症候群 (以下、ハント症候群) は膝神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルスvaricella-zoster virus (VZV) の再活性化により引き起こされる、1) 耳介・外耳道の帯状疱疹、2) 顔面神経麻痺、3) 耳鳴、難聴、めまいなどの内耳症状 を3徴候とする症候群である。VZVによる疱疹が汎発化した場合、通常は初感染か免疫不全を疑うが、今回、生来健康な自衛官のハント症候群で疱疹が汎発化した稀な1例を経験したので報告する。症例は45歳男性。初診時は、顔面神経麻痺はなく、発熱、咽頭痛、耳痛、めまいが主訴であった。典型的な耳介の帯状疱疹はなかったが、患側に限局した咽頭の特徴的な粘膜疹と全身の疱疹の性状が決め手となりハント症候群 (VZV感染症) と早期診断できた。ただちにバラシクロビルとプレドニゾロンを投与開始したところ、顔面神経麻痺を発症したものの後遺症を残さず治癒した。ハント症候群の3徴候は初診時には出揃っていないことが多く、本症例のような非典型例も存在するので初期診断が難しい。しかし、診断が遅れると顔面神経麻痺など後遺症を残す危険が高まるので、VZV感染症に特徴的な咽頭所見や皮膚所見も熟知する必要がある。
公募シンポジウム2
  • 工藤 典代
    2012 年 22 巻 1 号 p. 59-66
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/06/21
    ジャーナル フリー
    ハント症候群は水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により生じた帯状疱疹の一病型である。帯状疱疹は高齢者のありふれた感染症のひとつとされている。今回、ハント症候群に罹患した経験について述べた。特に前駆症状として全身倦怠感、上咽頭痛や耳痛がありながら、早期診断・早期治療には結びつかなかった。発症時は不全麻痺であったが、数日のうちに完全麻痺となった。初診日から抗ウイルス薬とステロイド内服による治療を行ったが、発症6週目には8/40点 (柳原法)、ENoG 8%であり、重症ハント症候群と診断され、後遺症残存が強く示唆された。ハント症候群では顔面神経麻痺のほかに聴覚過敏、味覚異常、平衡機能異常など多彩な症状があった。薬物治療やリハビリテーションにもかかわらず、不全麻痺、病的共同運動、顔面拘縮、顔面けいれんなどの後遺症を残す結果となった。このような経験から帯状疱疹やハント症候群の罹患と後遺症を予防するためには、ワクチン接種の普及が重要と思われた。
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