Otology Japan
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22 巻 , 5 号
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原著論文
  • ─Schüller法に代替しうるスクリーニング検査法として─
    吉岡 哲志, 犬塚 恵美子, 内藤 健晴, 藤井 直子, 片田 和広, 鈴木 昇一, 小林 正尚
    2012 年 22 巻 5 号 p. 803-813
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    現在主流である多列検出器型CT機器は、高速で、広い範囲を微細に描出できるが、多い被曝量と撮影時間が重要な問題である。それゆえ本機をスクリーニング的に使用することは適当ではない。我々は、320列面検出器CT (ADCT) を使用し小児耳疾患のスクリーニングの使用にも適用できる超低被曝のCT撮影法を考案した。ADCT (東芝Aquilion ONE<TM>を使用) で側頭骨標本を様々な撮影条件で撮影し、画質評価を行い、低線量で、かつ臨床に使用する画像として認容できる撮影条件を決定し、さらにCTと単純X線写真の被曝線量とを比較した。
    管電圧100kV・管電流10mA・照射時間1.5sec×1回転との撮影条件を考案した。線量の目安のCTDIvol値は1.7mGy (従来の0.7%) であった。最大線量は、単純X線写真 (左右両側) で平均2.12mGy、上記条件CTでX線写真を下回る同1.59mGyであった。本CT撮影法は、三次元データ量を具有しながらも、低被曝量で短時間の撮影が可能で、スクリーニング検査法として利用できる。
  • 後藤 隆史, 東野 哲也, 松田 圭二
    2012 年 22 巻 5 号 p. 814-819
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    本研究は、外耳道後壁の破壊程度を数値化し、骨部外耳道長を基準としてその比率を算出し、stageIIICW症例を抽出することを目的としたものである。弛緩部型中耳真珠腫症例を対象として、外耳道後壁の破壊程度をCT画像を用いて客観的に評価することを試みた。結果、CT上骨部外耳道前壁長の1/2程度の外耳道後壁破壊を認めた症例は臨床的にもStageIIICWと診断されていた。また、簡易的に鼓膜前後径と同程度の外耳道後壁破壊を認めた症例もStageIIICWと診断可能と考えられた。外耳道後壁の破壊程度を術前に評価する客観的な方法として本計測法が有用であると考えられた。
  • 長島 勉, 染川 幸裕, 正木 智之, 氷見 徹夫
    2012 年 22 巻 5 号 p. 820-826
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    1991年1月~2012年6月まで、当科において扱った先天性真珠腫42例において、鼓室形成術を予定していたが時間の経過とともに徐々に真珠腫の縮小を認めた1歳4ヶ月男児、2歳9ヶ月男児、3歳8ヶ月の女児の計3例と、逆に増大傾向を認めたため経鼓膜的摘出から鼓室形成術に変更した1歳9ヶ月男児の1例を供覧した。
    先天性真珠腫は手術治療が原則であるが、乳幼児の場合は感染や炎症の合併により急速に増大する例もあり、術前からも注意深い経過観察が必要と思われた。また、経過観察中に真珠腫の縮小傾向を認めた症例に限っては、再増大傾向を見逃さない様に慎重に経過を見つつ、耳管機能が安定し治療の協力が得られる時期の手術を見すえて、縮小の推移を観察していくことも選択肢の一つと思われた。
  • 阿部 純子, 長谷川 賢作, 山崎 愛語, 矢間 敬章, 國本 泰臣, 北野 博也
    2012 年 22 巻 5 号 p. 827-832
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    Treacher Collins症候群はmandibulofacialdysostosis (顎顔面形成不全) とも呼ばれ、第1鰓弓および第2鰓弓由来の先天性奇形症候群である。常染色体優性遺伝疾患であるが、突然変異も多く、その約60%が単発例とされている。High-resolution computed tomography (HRCT) を使用したJahrsdoerfer分類を基に手術適応を判断し、同胞内発生したTreacher Collins症候群2症例、計4耳に対して鼓室形成術を施行した。Jahrsdoerfer分類は手術適応と聴力予後の推定に有用であるが、アブミ骨奇形が評価項目に含まれておらず、HRCTでは詳細な評価が困難であるため、Treacher Collins症候群に対して鼓室形成術を行う際には、アブミ骨の操作を行う可能性を想定しておくことが必要である。
  • 上野 貴雄, 伊藤 真人, 杉本 寿史, 吉崎 智一
    2012 年 22 巻 5 号 p. 833-838
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    今回、我々は経過中に迷路気腫を伴った外傷性外リンパ瘻の2例を経験したので報告する。症例1は、保存加療中に迷路気腫の出現を伴う骨導閾値の上昇を認め、緊急手術となった。術後も骨導聴力の改善は認めなかった。一方、症例2は、受診時から迷路気腫を認めていたが保存加療にて、聴力は完全に回復した。
    この2例の相違点は、アブミ骨の前庭内への陥入の程度と、迷路気腫の存在部位であった。症例1はアブミ骨底板の前庭内陥入が強く、「鼻かみ」後に出現した迷路気腫は前庭および蝸牛基底回転に存在していた。一方症例2では、アブミ骨底板の陥入はわずかで、迷路気腫は前庭に限局していた。アブミ骨に沿った多断面再構築 (MPR: Multi Planer Reconstruction) 画像が、アブミ骨の前庭内陥入の程度を評価するのに有用であったので画像を呈示し、手術の時期と術式について検討した。
  • 中島 崇博, 河野 浩万, 松田 圭二, 東野 哲也
    2012 年 22 巻 5 号 p. 839-843
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    右内耳道内血管腫の確定診断が得られた稀な1例を経験した。症例は38歳男性。近医での聴力検査にて右聾、側頭骨MRIにて右内耳道腫瘍を指摘され当科紹介となった。顔面麻痺を認めなかったが、画像所見から顔面神経鞘腫を最も疑い、2005年4月経迷路法にて手術を行った。腫瘍は顔面神経から発生しており剥離困難であったため、顔面神経温存を第一に考え減量手術にとどめた。術後顔面麻痺を認めず、術後5年以上経過した現在までMRIにて違残腫瘍の増大を認めない。
    内耳道内血管腫は主に顔面神経周囲の毛細血管叢由来であり、内耳道底部に腫瘤を形成する場合神経鞘腫との鑑別が必要になる。臨床的には他の内耳道内腫瘍より早期に顔面麻痺が進行するといわれ、神経に対する機械的圧迫など種々の原因が考えられている。手術については、症例により剥離困難な場合もあり、顔面神経温存に関しては議論の残るところである。
パネルディスカッション1
  • 角田 篤信, 岸本 誠司
    2012 年 22 巻 5 号 p. 845-848
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    2003~11年にかけて手術治療が行われた外耳道扁平上皮癌18例を対象に術後顔面神経麻痺について検討した。錐体骨外側切除症例10例中7例では神経は直接操作は加えられず、術後神経麻痺も認めなかった。残り3例中1例で顔面神経のrerouteが行われ、House-Brackmann (H-B) grade IIの軽度麻痺が、2例で一時的切離・縫合が施行され本幹切断例がH-B grade IV、上行枝再建例がH-B grade IIIの不全麻痺を認めた。側頭骨亜全摘をうけた8症例中4症例で顔面神経-舌下神経吻合が行われ、術後半年でH-B grade IVまで回復した。残り4症例中2例に対して広背筋移植術等が施行され、H-B grade IIIまで回復がみられている。悪性病変の外科治療は十分な切除範囲が要求されるが、神経再建やリハビリテーション、機能再建手術により顔面神経機能の維持、回復がなされることが示された。
  • 志賀 清人, 川瀬 哲明, 小林 俊光
    2012 年 22 巻 5 号 p. 849-854
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    聴器癌の治療は、頭蓋底など側頭骨外へ浸潤した進行例では手術による根治は困難な場合が多い。我々は聴器癌症例の治療は基本的に化学放射線治療を第一選択として行い、その結果良好な治療成績を得ることができたので報告する。
    対象は2001年12月から2011年2月までの約9年間に当科で治療を開始した聴器癌の一次治療例23例で治療は基本的にStage Iは放射線単独で、Stage IIはDocetaxelの少量weekly化学療法を併用した放射線治療を行い、Stage III、IVの進行癌はTPF療法 (Docetaxel+CDDP+5-FU) を同時併用した化学放射線治療を行った。
    21例が扁平上皮癌であり、このうち11例がT4症例であった。19例が初回治療で (化学) 放射線治療を行った。19例中2例がPR、17例はCRの治療効果を得た。有害事象は対処可能で安全に治療ができた。Kaplan-Meier法で計算した疾患特異的5年生存率は全体で86.2%、T4症例で75%であった。
    聴器癌に対する治療の第一選択として化学放射線治療は有効と考えられた。特に側頭骨外に浸潤するT4症例の治療として用いることにより予後の改善が期待されることが示された。
  • 吉崎 智一, 近藤 悟, 遠藤 一平, 脇坂 尚宏, 室野 重之, 杉本 寿史, 波多野 都, 伊藤 真人
    2012 年 22 巻 5 号 p. 855-857
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    側頭骨扁平上皮癌は容易に骨浸潤を伴い、それゆえに、放射線抵抗性である。一方で頸部リンパ節転移の頻度は少なく、上顎洞癌と少なからぬ類似点を呈する。2006年までは手術による摘出+術後照射で加療していたがやはりPittsburg分類でStageIII以上のケース、とくにT4症例の局所制御は満足いく結果とはいえないものであった。これらの局所進行例に対して超選択的動注化学療法+放射線同時併用により加療した5症例について、局所制御は80%であった。有害事象は軽微でTPFなどの強力な全身化学療法が施行不能な症例でも、動脈硬化などが著しくなければ施行可能である。一方で頸部リンパ節制御は期待できない。
    本法は局所進行側頭骨扁平上皮癌に対する治療選択肢の一つとして考えてよいものと推察する。
パネルディスカッション2
  • 植田 広海
    2012 年 22 巻 5 号 p. 859-863
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    先天性真珠腫は、その存在が疑われれば年齢に関わらず手術を考慮する。手術法としては、含気のある乳突腔の形成により再発を予見できるので、術前CTにて乳突腔に含気のない場合は段階的鼓室形成術を考慮する。自験例において、過去10年間に1年以上経過観察できた先天性真珠腫の症例は40例40耳あった。これらの症例をPotsicらの分類に従って進展度分類した。Stage Iは6耳、Stage IIはなくStage IIIは27耳と最も多く、Stage IVは7耳であった。一期的手術は25耳 (62.5%)、段階的鼓室形成術は15耳 (17.5%) に施行した。第2次手術時の遺残を含めた再発はStage Iではなく、Stage IIIは27耳中7耳 (25.9%)、Stage IVは7耳中5耳 (71.4%) でありStageが進行するほど再発率が増加した。予定手術後の再発は4耳ありそのうち3耳が段階手術後であった。術後聴力改善成績は、36耳中33耳 (92%) と良好な成績であった。
  • 田邉 牧人
    2012 年 22 巻 5 号 p. 864-869
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    先天性真珠腫症例23耳を検討した結果、存在部位は鼓室限局が7耳、上鼓室や乳突洞に存在したのが4耳、鼓室から上鼓室や乳突洞にかけて存在したのが12耳であった。年齢は1歳から42歳まで分布し、小児例が多かった。主症状は10歳未満の症例では白色塊や耳漏が多く、10歳以上では全ての症例で難聴が主症状であった。真珠腫の形状は10歳未満の症例ではclosed型が多く、10歳以上の症例ではopen型が多かった。
    真珠腫が手術手技上死角になりやすい部位に存在した症例、鼓室から上鼓室や乳突洞に広く存在した症例、多発症例では原則として段階的鼓室形成術とする。鼓室限局型の真珠腫に対しては、真珠腫の大きさが鼓膜の1象限未満程度、かつ真珠腫の輪郭がほぼ透見できるclosed型の症例は鼓膜切開からの摘出も可能である。先天性真珠腫の遺残・多発の傾向、小児例が多いことなどの特徴を考慮して手術方針を決定すべきである。
  • ─当科における先行報告40耳との比較を含めて─
    日高 浩史, 高田 雄介, 宮崎 浩充, 小林 俊光
    2012 年 22 巻 5 号 p. 870-877
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    最近10年間に当科で手術を行った先天性真珠腫31例についてPotsicによるStage分類を適用し、その臨床像を検討した。
    Stage I、II(計7例)は低年齢で偶然発見されたケースがほとんどであった。Stage III、IV(計24例)はより高年齢で、偶然発見されたケースは8%と少なく、大半が難聴や中耳炎などが発見の契機となっていた。
    真珠腫の局在・形状に関しては、Stage I、IIの86%(6/7)が鼓室前方に位置するclosed型の病変であった。これに対し、Stage III、IVにおいて鼓室前方に位置する症例は2例のみで、50%(12/24)が鼓室後方の病変であった。Stage III中、4例にopen型の真珠腫を認めた。その中の2例とopen型とclosed型の両者が混在する1例の計3例に耳小骨奇形の合併を認めた。
    末武らが報告した当科の1990年前後の40例と同様にStage IIIが依然として60%以上で最多を占めた。PSQに発生してStage IIIに分類される例が多く、欧米のASQ型でStage Iに分類されるケースが過半を占める状況とは異なることは、先天性真珠腫の発生母地の多様性を支持すると考えられた。
  • 山本 裕, 森田 由香, 高橋 邦行, 高橋 姿
    2012 年 22 巻 5 号 p. 878-885
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    先天性真珠腫初回手術症例59名59耳の臨床的特徴を発生部位別に検討し治療方針について考察した。鼓室型 (54耳) の病変は鼓室上方、特に後上象限に多く認められた。乳突非削開で摘出した症例は28耳で、うち9耳は外耳道内切開で摘出し得た。鼓室内に限局した症例は外耳道内切開法のよい適応となると考えられた。乳突削開術を要した症例は26耳で、1耳を除き外耳道後壁を保存しつつ摘出可能であった。上鼓室、乳突腔進展がある症例は外耳道後壁保存型乳突削開術を適応すべきと思われた。錐体部真珠腫 (3耳) は内耳障害を併発していた。open法による乳突腔・迷路削開術を原則とするが、術中髄液漏が見られた場合は腹部脂肪の充填を要した。乳突型 (2耳) では内耳骨破壊はあったものの、内耳機能は保たれていた。迷路を温存した経乳突法が治療の原則と考えられた。
公募シンポジウム2(その4)
  • 高田 雄介
    2012 年 22 巻 5 号 p. 887-890
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    前庭神経鞘腫の手術を受けて10年が経つ。頭蓋底外科を志し、良き師に恵まれ、多くのことを教わった。現在、前庭神経鞘腫の執刀は30症例を超え、少しずつではあるが日々研鑽を積んでいる。
    現在、医療を取り巻く厳しい社会情勢から手術がときに敬遠される現状ではあるが、それでも尚、手術が必要な症例は必ずある。その時にこそ立ち向かえる医師でありたいと常々思う。
    小腫瘍は手術適応の判断も難しく、術者にかかる重圧は決して少なくない。しかしながら、顔面神経からの剥離は腫瘍径が小さいほど容易であり、全摘もより確実となる。加えて、合併症の頻度が少ないのもまた事実である。
    多くの経験と自信を兼ね備えた師の存在は、常に輝いている。少しでも追いつき、また追い越せるよう精進するのみである。
    私が手術を受けたとき、術前の執刀医による自信に満ちた言葉は今でも鮮明に記憶している。
公募シンポジウム3
  • 福田 智美, 小路 武彦, 高橋 晴雄
    2012 年 22 巻 5 号 p. 891-896
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    真珠腫性中耳炎では、重層扁平上皮細胞の異常増殖、中耳腔への進展が主な病因と考えられ、上皮異常増殖には様々なサイトカインが関与しているという報告がある。
    これまで我々はヒト真珠腫組織で、角化細胞増殖因子 (KGF) とその受容体 (KGFR) の発現が真珠腫再発率に有意に関係していることを示し、KGF/KGFRのパラクライン機構が真珠腫形成に強く関与しているとした。
    今回我々は新動物モデルを作成し、中耳真珠腫形成へのKGFの関与について検討した。SDラットを麻酔の後、エレクトロポレーションにより外耳道細胞内にKGFプラスミドもしくは空ベクターを導入し、各々の蛋白を強制発現させ、実験的真珠腫の発症の有無を比較検討した。結果、KGFプラスミド導入群では真珠腫形成が認められた。
    vivo実験結果はKGFの強発現が真珠腫組織を誘発する可能性を示唆するものと考えられた。
  • 樫尾 明憲
    2012 年 22 巻 5 号 p. 897-904
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    内耳障害の予防戦略として、アポトーシス関連タンパクなどを直接導入する内耳タンパク治療は有望であるが、内耳血液関門・蝸牛窓膜をタンパクが透過できないという問題から実現は容易ではなかった。これに対して、我々はタンパクなど高分子を効率的に細胞内へ導入できるProtein Transduction domain (PTD) を付加する技術を導入し、PTDをアポトーシス抑制タンパクBcl-xLの活性強化型タンパクであるFNKに付加したPTD-FNKを作製した。PTD-FNKを投与すると蝸牛有毛細胞培養系でカナマイシン (KM) による有毛細胞障害が抑制され、Caspase-9の発現も減少した。さらに、in vivoの系でPTD-FNKの有毛細胞への取り込みと、KM・エタクリン酸 (EA) による有毛細胞障害・難聴に対するPTD-FNKの予防効果を腹腔内投与および鼓室内投与の2経路で検討した。いずれの経路においてもPTD-FNKはPTDを付加することで有毛細胞への到達が可能となった。また、PTD-FNKが有意にKM・EAによる難聴・有毛細胞の障害を予防することも示し、その有用性が確認できた。
  • 北尻 真一郎, 伊藤 壽一
    2012 年 22 巻 5 号 p. 905-910
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    アクチンは微絨毛を形成する細胞骨格である。内耳の感覚上皮には巨大に発達した微絨毛 (不動毛) が存在し、これが感覚受容を直接担っている。不動毛を構成するアクチンの束は、細胞質内へ伸びて長い「根」を形成する。しかしこの根に特異的に局在する分子はこれまで知られておらず、ゆえに根の機能は解明されてこなかった。
    われわれはヒト難聴家系からTRIOBP遺伝子変異を同定し、TRIOBP蛋白は内耳不動毛の根に局在すること、Triobpをノックアウト (KO) すると不動毛の根が形成されなくなる事を発見した。Triobp KOマウスの根なし不動毛は剛性が下がり、音振動で変成した。またTRIOBP-4蛋白を精製してアクチンと反応させると、アクチンを束化した。このデータは、TRIOBPがアクチンを束化することで不動毛の根を形成すること、根は不動毛の剛性や構造を保つために必須であることを示している。
公募シンポジウム5
  • 池園 哲郎
    2012 年 22 巻 5 号 p. 911-917
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    内耳リンパ腔と周囲臓器のあいだに瘻孔が生じ、生理機能が障害される疾患が外リンパ瘻である。これまでは外リンパ瘻の診断は外リンパ漏出の有無を視覚的に判断していたが、これは主観的であると批判されてきた。そこで新たな診断マーカーを求めて内耳蛋白のプロテオーム解析を行った結果、遺伝性難聴の原因遺伝子COCHの蛋白産物のアイソフォームCTP (cochlin-tomoprotein) を見いだした。外リンパ瘻研究班の活動によりCTPが外リンパ瘻診断マーカーとして理想的な性質を兼ね備えていることが判明した。
    本邦には1983年 (昭和58年) に世界に先駆け発表された外リンパ瘻診断基準があるが、現在この改定作業を進めており、分類にも検討を加えた。開始当初はウェスタンブロット法を採用してきたが、より客観的な判定が可能となるエライザ法も開発できた。実際の診療に役立つ情報を含め本検査法の新展開について解説する。
  • 小池 卓二, 羽藤 直人, 神崎 晶
    2012 年 22 巻 5 号 p. 918-922
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    通常の気導補聴器の装用が困難な、先天性外耳道閉鎖症や難治性中耳炎患者は、その聴覚障害によりQOLを著しく損なっている。そこで、BAHAに代表される骨導による補聴器が開発されているが、骨導端子が皮膚に露出するために炎症が生じやすいことや、出力が不十分である点等課題も多い。これらの問題を解決するため、振動子として超磁歪素子を用いた、側頭骨の皮下に埋め込むタイプの骨導補聴器の設計・試作を行った。開発した骨導振動子の加振力評価を行った結果、本補聴器の出力は良好な線形性を有し、特に高周波数域の補聴に有効性が高いことが明らかとなった。一方で、低周波数域の加振力は相対的に低い可能性があり、マグネットと超磁歪素子によるハイブリッド型振動子を開発することにより、広い周波数域で高い補聴能力を実現することが今後の課題となった。
  • 中川 隆之
    2012 年 22 巻 5 号 p. 923-926
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/07/26
    ジャーナル フリー
    蝸牛有毛細胞の障害は、感音難聴の主因であり、有毛細胞再生が可能となれば、感音難聴に根本的治療の道筋が拓かれる。しかし、哺乳類における蝸牛有毛細胞再生による聴覚再生は、現時点では困難である。そこで、生物学的な再生へのストラテジーにこだわらず、超微細加工技術など工学的な技術の進歩を応用して、有毛細胞再生にテクノロジー側からのアプローチを試みた。蝸牛には、完全に有毛細胞が失われた状態でも、受動的周波数弁別能力が残っていることに着目し、この受動的周波数弁別能を利用し、振動刺激を電気刺激に変換することができる圧電素子膜を蝸牛の基底板近傍に留置することによる聴覚再生の可能性を検討した。音響による振動刺激を電気刺激に変換する圧電素子膜を開発し、人工聴覚上皮と命名した。本稿では、人工聴覚上皮の開発コンセプト、開発プロセス、今後の課題について解説する。
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