Otology Japan
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23 巻, 1 号
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原著論文
  • 山本 耕司, 内水 浩貴, 近藤 悠子, 森山 寛
    2013 年 23 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    6歳以下の幼児滲出性中耳炎症例を対象に、アデノイド切除術の有用性も含め、鼓膜換気チューブ抜去後経過に影響を及ぼす因子について検討を行った。初診時の乳突蜂巣発育度は、予後良好例が予後不良例に対して有意に良好であった。チューブ留置期間とチューブ抜去後経過との関係では、チューブ留置術を単独で施行した群では、チューブ留置期間が18ヶ月以上の群は18ヶ月未満の群と比較し、有意に予後良好であったのに対し、アデノイド切除術を併用した群では留置期間による差を認めなかった。6歳以下の幼児において、アデノイド切除術はOMEを早期に改善させる効果があることを認めた。幼児OMEに対するアデノイド切除術の併施に関しては、長期的予後には影響がないが、OME再発の予防的効果が期待できることなどを考慮して検討する必要がある。
  • 平野 隆, 児玉 悟, 川野 利明, 森山 宗仁, 藤田 佳吾, 鈴木 正志
    2013 年 23 巻 1 号 p. 6-12
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    耳管閉塞およびインフルエンザ菌による慢性中耳炎症マウスモデルを用いて、中耳慢性炎症病態におけるIL-17産生T細胞の動態につき検討した。BALB/cマウスを用いて、中耳炎モデル作成後3日目、14日目、2ヶ月目に中耳貯留液、中耳粘膜および側頭骨を採取し、中耳貯留液中のIL-17濃度の測定、中耳粘膜下のリンパ球のフローサイトメトリーによる解析およびIL-17mRNAの発現につき解析を行った。中耳粘膜において、Th17細胞およびIL-17産生γδT細胞の増加を急性期から慢性期に認め、中耳貯留液中のIL-17濃度においても2週間目から2ヶ月の慢性期に至るまで、明らかに対照群と差を認めた。中耳粘膜の単核球細胞のIL-17mRNAの表出も、対象群と比して明らかな強発現を認めた。中耳粘膜におけるTh17細胞やIL-17産生γδT細胞が中耳局所の慢性炎症に関与している事が推測された。
  • 小林 泰輔, 小森 正博, 兵頭 政光
    2013 年 23 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    近年早期に発見され鼓室に限局した先天性真珠腫例が増加している。鼓室内に限局している例では、内視鏡下に摘出術を行うと低侵襲で確実な摘出が可能になると考えられる。本報告では内視鏡下耳科手術で摘出した症例を検討し、先天性真珠腫に対する内視鏡下耳科手術の適応を考察した。過去2年あまりの間に、手術を行った9例の小児先天性真珠腫について検討を行った。そのうち6例で内視鏡下耳科手術での摘出が可能であった。6例のCT上の真珠腫直径は平均3.6mmで、Potsicらの病期はI期またはII期であった。一方3例では乳突削開型鼓室形成術を段階手術として行い、これらはいずれもIII期であった。いずれの症例でも手術合併症はなく、経過観察期間が短いながらも再発はない。以上よりCT上の直径4mm以下、I期またはII期の症例が経外耳道的内視鏡下摘出術の適応になると考えられる。特に前上部型でclosed型の症例は良い適応であると思われた。
  • 伊藤 文展, 新田 清一, 坂本 耕二, 甲能 武幸, 西山 崇経, 小川 郁
    2013 年 23 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    済生会宇都宮病院では、真珠腫診療でBert De Foerらの提唱しているnon echo planar拡散強調MR(non EP DW)を実施している。この撮像方法では、典型的な真珠腫は脳実質と比較して著明な高信号病変として描出されるのが特徴である。2011年1月から10月まで、中耳疾患患者63例に対しnon EP DWを実施、うち29例30耳を手術などで診断の確認を実施した。Non EP DW陽性であったものは21耳、全例が真珠腫であった。検出しえた最小のサイズは3mmであった。陰性であったのは9耳、真珠腫1耳・コレステリン結晶1耳・グロムス腫瘍1耳・慢性中耳炎1耳・外耳道皮膚骨化1耳・滲出性中耳炎3耳・再発のなかった真珠腫術後耳1耳であった。浅在化鼓膜裏面の真珠腫診断やcanal wall up術後の再発診断に、non EP DWが特に有用であった。
  • 佐久間 直子, 荒井 康裕, 高橋 優宏, 松田 秀樹, 小河原 昇, 折舘 伸彦
    2013 年 23 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    2000年から2009年までの間に、神奈川県立こども医療センター耳鼻咽喉科を受診したGHARGE syndrome 7例について検討を行った。目の欠損症は7例全例に、心奇形は6例に、後鼻孔閉鎖は2例に認められた。精神運動発達遅滞または中枢神経奇形は7例全例に、生殖器低形成または尿路奇形は6例に、難聴は7例全例に認められた。難聴が指摘されたことにより、さらなる精査で確定診断に至った例が多く、また6例で新生児聴覚スクリーニングが施行され難聴が疑われていたことから、難聴の有無が疾患の確定に重要な症状の1つであるため、耳鼻咽喉科領域に奇形を認めない児にも新生児聴覚スクリーニングを行う必要性が再認識された。聴覚障害は全例中等度難聴以上であり、補聴器は全例で使用されていた。早期から補聴器の装用や言語訓練などの介入があった6例のうち、補聴器が長時間使用できており且つ補聴器使用下での聴力レベルが軽度から中等度難聴程度であった4例では単語や文章の発語が可能となっていた。このことからも補聴により、CHARGE症候群の児であっても、聴覚がコミュニケーションの手段の1つとなりえると考えられた。
  • 山野 貴史, 菅村 真由美, 上野 哲子, 樋口 仁美, 中川 尚志, 森園 哲夫
    2013 年 23 巻 1 号 p. 31-34
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    ブロー液は難治性の耳漏の治療に有効である。この薬剤は市販されていないため、各医療施設で作製することが必要である。薬剤作製後の有効期間や内耳毒性の変化についての報告はない。我々はブロー液の外観の変化、pH、浸透圧、殺菌力、内耳毒性について作製直後、作製後1、3、6、9ヶ月後経過したものについて比較検討した。作製後時間の経過とともにアルミニウム成分が析出した。
    作製直後のpHは3.6であったが1ヶ月では4.0となりその後の変化はみられなかった。浸透圧は作製直後には920mOsmであったが次第に減少した。殺菌作用は1ヶ月では変化を認めなかったが9ヶ月では600mOsmとなった。内耳毒性はCAPの変化によると3ヶ月では変化がなかったが、9ヶ月でトーンバースト4kHzの閾値上昇を認めた。これは析出したアルミニウム成分が鼓膜、耳小骨、正円窓上へ沈殿、堆積しているためと推測された。
  • ─TORPによる底板損傷─
    山道 怜, 石坂 成康, 中江 進
    2013 年 23 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    交換時のタンポンの圧迫によりApaceram-T®を介して、アブミ骨底板損傷をきたした稀な症例を経験したので報告した。
    アブミ骨固着を伴う鼓室硬化症の女性に対し2期的にアブミ骨手術を行う予定で1次手術としてApaceram-T®を用いてツチ骨柄とアブミ骨底板を連結し、鼓室形成術IVi-Mを行った。
    術後19日目、交換の為にタンポンを挿入した直後に強いめまいと患側向き眼振を認めた。Apaceram-T®による底板損傷を疑い、CTを撮るとApaceram-T®の軸が前庭窓内に嵌入していた。即日、鼓室開放を行い、前庭窓に嵌入したApaceram-T®を抜去し、底板も摘出して前庭窓に筋膜をあて、新しいApaceram-T®を用いてTORP型再建とした。
    鼓室形成術IVi-Mではタンポンによる圧迫でも梃子作用により底板損傷をきたす例がある事に注意を喚起したい。
  • 留守 卓也, 渡部 涼子, 晝間 清, 三橋 敏雄
    2013 年 23 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    HIVの治療中断に伴い発症した顔面神経麻痺の1症例について報告する。症例は34歳男性で境界型人格障害による精神症状が顕著であった。HAART治療中であったが、抗HIV薬を大量服薬したため治療が中止となっていた際に顔面神経麻痺を発症した。経過観察を拒否したため、ステロイド治療を行ったが改善が見られなかったため、本人の強い希望により第20病日に顔面神経管開放術を行った。術後に著明な改善が見られ、第47病日に完全回復を得た。他科との連携により臨床的判断をもとに治療を進めたが、retrospectiveには、より詳細なウイルス学的検討が望ましいと思われた。HIV患者における顔面神経麻痺の発症は有意に高率であり、今後も同様の症例が生じる可能性は高いと思われた。
海外招待講演
  • Richard L. Goode
    2013 年 23 巻 1 号 p. 47-49
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    As surgeons, most of our ideas involve new devices rather than new drugs but it could be a new smart phone application or computer program to improve our day to day practice. The purpose of this paper is to encourage the reader to act ..... not be one who later tells friends “I thought of that, but didn't have the time/money to develop it”.
    The process starts with understanding what you need that you do not have or, as important, how to do the same thing at less cost. Since I practice in the United States, the rules of developing a new product will be different than in Japan. But the principles are no doubt similar. Does it do a better job? Easier to use? Lower cost? Nothing like it available?
特別講演
  • 岩堀 修明
    2013 年 23 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    魚類から、陸棲動物を経て、水棲に戻ったクジラ類に到るまでの聴覚器の変遷を概観した。内耳の耳石器の中に、振動に反応する有毛細胞が分化し、やがてラゲナや球形嚢などの耳石器が魚類の聴覚器に進化していった。陸棲動物になると、エネルギーの小さい空気の振動を受容するため、中耳、外リンパ嚢、基底乳頭などが形成された。陸に棲息していたクジラ類が水中で生活するようになると、鼓膜を保護するために外耳道を閉鎖し、オトガイ孔と下顎管が音波の取り入れ口となった。
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