Otology Japan
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23 巻, 2 号
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第22回総会会長講演
原著論文
  • 原 真理子, 新鍋 晶浩, 金沢 弘美, 吉田 尚弘, 飯野 ゆき子
    2013 年 23 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    手術を施行した小児の慢性穿孔性中耳炎51症例59耳を対象とし、鼓膜穿孔の原因、鼓膜硬化症の合併の有無、穿孔閉鎖率に関して検討を行った。鼓膜穿孔の原因は、鼓膜換気チューブ留置後の症例が最も多く55.9%であった。鼓膜換気チューブの留置期間や年齢は、推奨される条件に当てはまる症例が多かったが、永久穿孔に至り外科的治療を要していた。さらに半数以上で鼓膜硬化症を合併しており、全症例が穿孔縁に接する硬化病変であった。このような硬化病変は自然閉鎖を妨げる要因となるため、外科的治療を考慮する指標となると考えられた。また、穿孔閉鎖率は全症例で91.8%、鼓室形成術は100%、接着法による鼓膜形成術は66.7%であった。再穿孔を来たした症例は、両側同時手術で鼓膜形成術を行った症例が多かった。両側罹患例の場合、上気道感染への罹患しやすさ、免疫能の不十分さ、耳管機能の未熟性が片側罹患例より重度と考えられ、より慎重な対応が求められる。
  • 内田 真哉, 上田 雅代
    2013 年 23 巻 2 号 p. 92-97
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    患者は66歳女性で、両側の進行性難聴と耳漏を認め、鼓膜の白色病変から真珠腫を疑われて紹介された。初診時、CRP陽性、MPO-ANCA陽性、両側肺尖部の結節性病変、両側聾などの所見を認め、ANCA関連血管炎である肉芽腫性多発血管炎 (GPA) を疑われた。肺・鼻腔からの生検では病理組織学的診断がつかずGPA疑いと判定されたが、臨床的にはGPAと考えられた。耳鼻咽喉科的にはANCA関連血管炎による中耳炎と診断し、速やかに寛解導入療法を開始したところ、聾まで進行した難聴が30dB程度まで改善した。
    通常GPAの中耳炎で聾になると、聴力の回復はほとんど望めないが、本例では治療開始までの期間が約1ヶ月と比較的短期間であったため回復したものと考えられる。また本例はANCA関連血管炎による中耳炎に特徴的と思われる鼓膜所見を示した。
  • 佐久間 康徳, 石戸谷 淳一, 平間 真理子
    2013 年 23 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    喘息治療薬であるオマリズマブ (抗IgE抗体) を投与し、気管支喘息に合併する好酸球性中耳炎・副鼻腔炎に効果を示した症例を経験した。症例は72歳の男性で、64歳から左好酸球性中耳炎に対してステロイド鼓室内注入を行っていた。当初は局所への注入のみでコントロールは良好であったが、次第に耳漏、耳痛、肉芽形成などを繰り返すようになり、頻回の処置を必要とするようになった。しかし、オマリズマブを投与開始するとその直後から好酸球性中耳炎は改善したため、ステロイド鼓室内注入は不要となった。投与開始後2年以上経過した現在に至るまで経過は良好である。本症例の経過を述べるとともに、好酸球性中耳炎の病態および抗IgE抗体が効果を示した機序について考察した。
  • 和田 忠彦, 岩永 迪孝, 白馬 伸洋, 吉田 尚生, 藤田 明彦, 平塚 康之, 隈部 洋平
    2013 年 23 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    緊張部型真珠腫は鼓膜後上象限の陥凹や癒着から始まるものや、癒着性中耳炎から移行するものがある。我々の施設では、真珠腫性中耳炎に対して2つの基本的な考えに基づいて手術を行っている。一つは、可能な限り外耳道後壁保存と中耳粘膜の保存に努めることである。もう一つは、真珠腫母膜の連続性を保ち除去することである。
    緊張部型真珠腫進展度分類2010改訂案1)に基づき進展度分類を行い、手術成績等について検討を行った。
    対象は、2006年1月~2008年12月までの3年間に鼓室形成術を施行した緊張部型真珠腫新鮮例で術後1年以上経過観察できた102耳である。年齢は6歳から78歳 (平均49.3歳)、男性56耳、女性46耳であった。
    Stageごとの内訳は、stage Iが37耳 (36.3%)、stage IIが15耳 (14.7%)、stage IIIが50耳 (49.0%) であった。
    進展度別の術後聴力成績は、stage Iが86.5% (37耳中32耳)、stage IIが46.7% (15耳中7耳)、stage IIIが68.0% (50耳中34耳) であり、進展度と術後聴力成績とに相関性は認めなかった。
  • ─真珠腫進展度分類2010改訂案による病態の比較─
    森田 由香, 山本 裕, 大島 伸介, 高橋 邦行, 根本 美歌, 桑原 優子, 高橋 姿
    2013 年 23 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    弛緩部型真珠腫と緊張部型真珠腫について、中耳真珠腫進展度分類2010年改訂案を用い、真珠腫の進展度、進展範囲、アブミ骨の状態、乳突蜂巣の発育を評価し、病態を比較検討した。
    真珠腫上皮の進展範囲は、弛緩部型では上鼓室から乳突腔のみへの進展例が最も多かったが、緊張部型では鼓室から上鼓室、乳突腔、前鼓室など複数亜部位への進展が多かった。また、緊張部型では、顔面神経麻痺や迷路瘻孔の合併率が弛緩部型より高く、アブミ骨上部構造消失率も高かった。乳突蜂巣の発育はいずれも発育不良例が多く、Stageがあがるごとに発育不良例が増加し、蜂巣発育の抑制と真珠腫の病勢との間に関連性が伺われた。
    また緊張部型では手術時年齢が高く、乳突蜂巣発育が著しく不良である例が多いことから、弛緩部型に比較して真珠腫発症には時間を要するのではないかと考えられた。
  • 竹内 万彦, 石永 一, 坂井田 寛, 北野 雅子
    2013 年 23 巻 2 号 p. 118-124
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    2010年1月から2011年3月までに、三重大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科にて手術的治療を行った中耳奇形8例8耳を対象に臨床的検討を加えた。年齢は9歳から34歳であった。舩坂らの分類では、I群3耳、II群1耳、III群1耳、II+III群1耳であった。この分類には当てはまらないものが2耳あった。耳小骨再建法では、I型1耳、IIIi型2耳、IIIc型1耳、IVi型1耳、IVc型1耳であった。stapedotomyが1耳、stapedotomy-Mが1耳であった。手術による聴力改善を日本耳科学会による「伝音再建の術後聴力成績判定基準(2010年)」に基づいて判定した結果、気骨導差15dB以内6耳(75%)、聴力改善15dB以上6耳(75%)、聴力レベル30dB以内5耳(63%)、成功率は88%(7耳/8耳)であった。術後気骨導差は、10dB未満が4耳(50%)、11~20dB 2耳(25%)、21~30dB 2耳(25%)であった。8例のうち3例について詳述した。
  • ─CT所見と術後成績の予測─
    力武 正浩, 小島 博己, 山本 和央, 田中 康広, 森山 寛
    2013 年 23 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    画像診断の進歩により高分解能側頭骨CTにおいて耳硬化症病変の有無や進展範囲を評価することが可能となりつつあるが、耳硬化症症例における術前CT所見と術後成績について検討した。側頭骨CTを施行し耳硬化症と診断され、初回アブミ骨手術を行った67人81耳を対象とした。術前CTにて卵円窓前方および蝸牛周囲の脱灰の有無を判断した。術後成績はAAO-HNSの基準案に準じ術後気骨導差が10dB以下に収まるものを成功とした。CTにてfenestral typeと診断されたものが59.3%、蝸牛にも脱灰像を認めたretrofenestral typeと診断されたものが9.9%、所見なし30.9%であった。卵円窓の狭小化例が9.9%あり、アブミ骨底板の肥厚例が22.2%であった。全症例における手術成績は79.0%であった。CT上、卵円窓の狭小化が認められた例の成功率は42.9%、アブミ骨底板の肥厚が認められた例では66.7%であった。病態が進行したと考えられる卵円窓狭小化、アブミ骨底板肥厚が認められた症例では手術成功率が低かった。
  • 古田 一郎, 山本 典生, 平海 晴一, 坂本 達則, 伊藤 壽一
    2013 年 23 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    当科で経験した8例10耳の耳硬化症再手術症例につき検討した。10耳中2耳は再々手術例であった。初回手術から再手術までの平均期間は4年9か月で、再手術のきっかけとなった主訴は9耳が難聴で1耳がめまいであった。術中所見では8耳(80%)でピストンの脱落を認めたが、術前にコルメラの評価を行った側頭骨CTでは、5耳しかピストンの変位を指摘できなかった。術前、術後の聴力評価は気導3分法で行ったが、再手術により難聴を主訴にした9耳のうち7耳で15dB以上の聴力改善を認め、再手術による内耳障害等、重篤な合併症を認めた症例は1耳もなかった。このことより、耳硬化症術後に難聴をきたした場合は、再手術により聴力改善が大きく期待され、原因精査の意味も含め、積極的に再手術を行うべきだと考えた。
公募パネルディスカッション5
  • 川島 慶之, 喜多村 健
    2013 年 23 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    内耳有毛細胞は音、重力、頭の動きといった機械的刺激を電気信号に変換する。この機械的シグナル伝達機構は有毛細胞の聴毛の先端近くにあるイオンチャネルが機械的刺激により開かれることにより開始されると考えられているが、このチャネルの正体は未だに解明されていない。Transmembrane channel-like 1遺伝子、およびTransmembrane channel-like 2遺伝子は、内耳有毛細胞の機械的シグナル伝達機構に必要不可欠であり、メカノエレクトリカルトランスダクションチャネル、あるいはメカノエレクトリカルトランスダクション複合体の構成要素をコードしている遺伝子である可能性が示唆されており、その最新知見を、筆者らはJ Clin Invest 121、2011に報告した。本稿ではそのデータを含めて、両遺伝子について概説した。
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