Otology Japan
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23 巻 , 3 号
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原著論文
  • 白馬 伸洋
    2013 年 23 巻 3 号 p. 183-192
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    当科での鼓膜再生外来で行われている、アテロコラーゲン膜/シリコン膜とbFGF製剤を用いた穿孔性中耳炎に対する鼓膜再生治療について詳細な検討を行った。2009年7月から2011年8月までの2年間に鼓膜再生外来を受診し、1年以上の経過観察が可能であった140症例(男性45例、女性95例)を対象とした。年齢は13歳から90歳で平均64.8歳(中央値67歳)であった。
    (1)鼓膜閉鎖成績は、術後3カ月の時点において完全閉鎖が117例/140例(83.6%)であったが、術後1年以上では、94例/140例(67.1%)であった。術前の穿孔の大きさ別の閉鎖率では、小穿孔では48例/67例(71.6%)、中穿孔では35例/51例(68.6%)、大穿孔では11例/22例(50.0%)であった。また完全閉鎖した94症例における閉鎖までの平均処置回数は1.38回であった。
    (2)閉鎖成績に影響する術前要因の解析では、1)穿孔縁の観察が困難、2)鼓膜石灰化が著しい、3)辺縁性の穿孔である場合に有意差を持って鼓膜穿孔残存の頻度が高かった。
    (3)鼓膜再生治療の合併症として、術後の耳漏が18例/140例(12.9%)で認められた。術後のepithelial pearlの形成は7例(5.0%)で認められた。また、bFGF製剤を添加したアテロコラーゲンが中耳腔に落ち込んだ症例では、新生鼓膜と中耳粘膜が癒着し、癒着部に炎症を伴う線維組織が増殖する症例を1例経験した。bFGF製剤の使用にあたっては、中耳粘膜への安全性が確立されていないので、中耳腔に流れ込まないよう注意して添加することが肝要と考えられた。
  • ─高い偽陽性率と検査法の位置づけ─
    菊地 俊晶, 小林 俊光, 大島 猛史, 高田 生織, 大島 英敏, 池田 怜吉, 川瀬 哲明
    2013 年 23 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    1) 耳管開放症の診断における音響耳管法 (sonotubometry) の信頼性、特にその偽陽性率を検討する目的で、耳管開放症の症状あるいは既往のない急性感音難聴症例51名の患側と健側合計102耳に対してsonotubometryを施行した。
    2) 患側群 (51耳) の耳管開放時間は417.8±516.3msec、提示音圧は114.4±516.3dB、健側群 (51耳) の耳管開放時間は522.4±590.9msec、提示音圧は113.8±4.9dBで、平均値はいずれも従来報告された正常範囲にあった。また、両群間に耳管開放時間および提示音圧とも、有意差は認めなかった (Wilcoxon順位和検定)。
    3) 全102耳において、提示音圧が115dB以下の症例は52耳51.0%、110dB以下の症例は22耳21.6%、105dB以下の症例は8耳7.8%に認めた。提示音圧の最低値は102dBであった。
    4) 全102耳において、耳管開放時間が800msecより長い症例は20耳19.6%、900msecより長い症例は18耳17.6%、1000msec以上を示したものも13耳13.3%認めた。耳管開放時間の最大値は2795msecであった。
    5) 耳管開放症診断のcut off値を、仮に過去の報告にある、耳管開放時間の延長800msec以上もしくは提示音圧105dB以下とした場合は27耳26.5%が偽陽性、耳管開放時間の延長900msec以上もしくは提示音圧105dB以下とした場合は、25耳24.5%が偽陽性であった。
    6) 嚥下時に耳管が開放してそのまま開放が持続するいわゆる「開放プラトー型」は1耳も認めず (0%)、耳管開放症に特異度が高い所見と考えられた。
  • 新鍋 晶浩, 長谷川 雅世, 原 真理子, 松澤 真吾, 金沢 弘美, 吉田 尚弘, 飯野 ゆき子
    2013 年 23 巻 3 号 p. 198-203
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    高齢者の鼓室形成術の利点および問題点を検討するために、当科における慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎、中耳炎術後症にて鼓室形成術をおこなった70歳以上の高齢者83症例97耳の臨床像をretrospectiveに評価した。主訴は耳漏が最多で、次に難聴が多く、真珠腫性中耳炎においてはめまいも多くみられた。慢性中耳炎での細菌培養にて、黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、真菌、緑膿菌のいずれかが検出された症例は44.2% (23/52耳) であった。真珠腫の型は緊張部型が最多であった。鼓室硬化症の所見を認めた割合は18.6% (18/97耳) と多く、聴力改善が十分に得られない症例も比較的多いが、97% (94/97耳) の症例が術後ケアフリーとなり、術後の有意な骨導閾値上昇や遷延するめまいもみられず、高齢者においても鼓室形成術の果たす役割は大きいと考えられた。
  • 鈴木 宏明, 岩崎 聡, 茂木 英明, 工 穣, 宇佐美 真一
    2013 年 23 巻 3 号 p. 204-209
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    我々は両側混合難聴に対して正円窓刺激法を用いた人工中耳Vibrant Soundbridge®(VSB) 埋め込み術を施行し既存の補聴器との比較を行ったので報告する。症例は68歳、女性で、右真珠腫性中耳炎に対して3回の鼓室形成術を受けた既往がある。57歳時から左補聴器装用を開始した。左耳は鼓室硬化症がみられ、両側混合難聴を認めた。当科における補聴器適合検査の指針 (2010) にそって補聴器の適合を評価したが適合不十分と判断され、右耳は語音明瞭度の低下が認められ、CTにおいても右耳は鼓室形成術かつ乳突腔充填後で中鼓室の含気が認められなかったため、左側に人工中耳埋め込み術を施行した。正円窓に骨化がみられたため、RW-Couplerを使用して振動子を設置した。音入れ後1ヶ月かけて利得調整を行い、補聴器よりも良好な音場閾値、静寂下・雑音下語音明瞭度、APHAB (音に対する不快感以外) によるアンケート調査結果が得られた。
  • 立石 優美子, 高橋 正時, 喜多村 健
    2013 年 23 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    Bezold膿瘍は中耳炎の頭蓋外合併症として乳様突起から骨瘻孔を経て頸部膿瘍を形成する病態であり、近年では稀な疾患となっている。今回、健康保険未加入、生活保護未申請のため医療費の支払いを心配して医療機関を受診せずに放置された中耳炎を基礎として3ヵ月後に発生したBezold膿瘍の1例を経験した。症例は30歳女性、右頸部腫脹と頸部痛を主訴に当科受診した。頸部超音波検査で右頸部に膿瘍を疑う領域が認められた。右耳鏡所見では外耳道壁の腫脹があったが、明らかな耳漏や鼓膜穿孔は認めなかった。CTでは右頸部膿瘍に加えて乳様突起と後頭蓋窩の骨欠損を認め、Bezold膿瘍と診断した。また、HbA1c10%と未治療の糖尿病も認められた。血糖コントロールを開始し、緊急乳突削開術と膿瘍腔開放術を施行した。術後はABPC/SBTを投与したところ全身状態・混合性難聴共に軽快、第22病日退院となった。隠蔽性乳様突起炎を経て発生したBezold膿瘍と考えられた。術後6ヵ月の時点で再発なく経過している。
  • 平松 隆, 水田 啓介
    2013 年 23 巻 3 号 p. 216-220
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    報告例が少ないHuschke孔に関連した外耳道骨欠損に起因し顎関節内容が外耳道へ脱出したと考えられる症例を経験した。症例は64歳女性。1週間前より続く左耳痛にて来院した。初診時には左外耳道に痂皮、落屑を認めたが腫脹はなかった。顎関節症による開口障害もあり、耳痛は外耳道炎と顎関節症によると診断した。約10日後にスルメを噛んだ後に耳の痛みがひどくなったと再受診した。左外耳道には開口すると凹み、閉口すると突出する腫脹を認めた。CTでは外耳道骨欠損があり同部より外耳道に突出する軟部陰影を認めた。生検により腫瘍は否定された。顎関節症に対するスプリント治療開始後より、次第に腫脹は目立ったなくなっていった。Huschke孔の遺残による外耳道骨欠損は10数人に1人は存在すると推測されるので、日常診療ありふれた耳漏、耳閉感、耳鳴り、難聴、耳痛などの症状であってもこれに関連する病態も忘れないようにすべきである。
  • 和佐野 浩一郎, 神崎 晶, 川崎 泰士, 鈴木 法臣, 小川 郁
    2013 年 23 巻 3 号 p. 221-226
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    症例は50歳女性、10歳時からの断続的な耳漏にて紹介受診。CTにて鼓室から乳突洞に充満する軟部陰影および耳管骨部の拡大性の破壊像を認めた。手術所見では拡大した耳管内にコレステリン結晶の貯留を認め、病理所見とも合わせコレステリン肉芽腫症と診断した。
    CTを再評価し三次元再構築を行ったところ、両側ともに耳管の骨部から軟骨部に移行する部位に下方から耳管内に突出する骨棘を認め、これが耳管を閉塞しているものと推測した。
    肉芽が再増生したため再手術を行った際に、耳管内ファイバースコープにて骨性の閉塞を認め、耳管通気も不能であった。画像で認めた奇形 (骨棘) により耳管が閉塞し、コレステリン肉芽腫が形成されたものと考えられた。
    耳管は画像診断が難しい部位であったためか過去に同様の奇形の報告はない。今後三次元再構築技術を用いることで、耳管機能障害の原因の中に本症例のような器質的な閉塞が明らかになるかもしれない。
  • 本田 圭司, 野口 佳裕, 加藤 智史, 奥野 秀次, 喜多村 健
    2013 年 23 巻 3 号 p. 227-232
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    ミトコンドリアDNA3243A>G変異(以下m.3243A>G)は、その表現型が多彩であり、診断が困難となることがある。今回我々は、母系遺伝が疑われず、耳小骨奇形を合併したm.3243A>Gの1例を報告する。症例は47歳女性。母方の祖父に難聴、母に糖尿病、母の妹に糖尿病と難聴を認めた。幼少時より両難聴を指摘され、18歳時に鼓室形成術にて左耳小骨奇形と診断された。その後、44歳時に行われたミトコンドリアDNA変異網羅的解析により偶然m.3243A>Gが検出された。本症例の左難聴は33歳時の再手術後に再々増悪を示していたが、本遺伝学的検査結果は難聴に対する治療方針の決定や糖尿病の早期治療に有用であった。m.3243A>Gの診断においては、他の耳疾患の合併や病歴上の遺伝様式にとらわれず、糖尿病などの合併症が埋没していないかを念頭におき診療にあたることが重要な点と考えられた。
  • 堀 龍介, 中川 隆之, 庄司 和彦, 山本 典生, 濱口 清海, 伊藤 壽一
    2013 年 23 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    PGE1全身投与は急性感音難聴の治療法の一つであるが、効果については議論が別れており詳細な作用機序は解明されていない。PGE1受容体にはEP1~4の4つのEP受容体が同定されている。今回我々はRT-PCRによりマウス蝸牛でのEP受容体の発現を調べ、免疫組織化学にて内耳でのEP受容体の分布について検討した。RT-PCRでは蝸牛にEP受容体は発現していた。蝸牛の免疫組織化学では、EP1は内・外有毛細胞、支持細胞に発現を認めた。EP2・EP4は内・外有毛細胞、支持細胞、ラセン靭帯、血管条、ラセン神経節細胞で発現を認めた。EP3は内・外有毛細胞、支持細胞、ラセン靭帯、ラセン神経節細胞で発現を認めた。前庭・半規管膨大部の免疫組織化学はEP1~4とも感覚上皮で発現を認めた。4つのEP受容体の内耳での分布とPGE1との親和性の違いが、PGE1の急性感音難聴に対する作用機序にかかわっていると考えられた。
  • 中島 崇博, 東野 哲也, 奥田 匠, 松田 圭二, 高木 実, 林 多聞, 花牟禮 豊
    2013 年 23 巻 3 号 p. 238-242
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    近年の植込み型人工聴覚器医療の展開に伴い、蝸牛窓周辺の臨床解剖の重要性が増している。
    鹿児島市立病院にてCBCTを施行した37症例50耳を対象とし、再構築画像にて蝸牛窓径を計測したところ、蝸牛窓径は1.55mmであった。また、蝸牛窓小窩のroofから顔面神経管への接線 (a)、道上棘基部と蝸牛窓小窩底部を結ぶ直線 (b)、および蝸牛窓の接線 (c) を設定し、直線 (a)(b) 及び (b)(c) がなす角度をそれぞれ角A、Bとすると、角Aは25.7°、角Bは31.5°であった。
    蝸牛窓径は過去の組織学的検討とほぼ同様であった。角Aは乳突削開後後鼓室開放した際に蝸牛窓を確認できる範囲、角Bは道上棘付近からみた蝸牛窓面の角度ととらえられる。蝸牛窓全景を確認する方向は限定されること、蝸牛窓は術者の視軸に対して斜めに確認されること、何れも個人差が大きいことがわかった。CBCTは蝸牛窓に対する有用な術前評価方法と思われた。
  • 木戸口 正典, 南 修司郎, 竹腰 英樹, 加我 君孝
    2013 年 23 巻 3 号 p. 243-247
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    鼓室に逸脱する内頸動脈走行異常は比較的まれな奇形であり、通常無症状で耳科手術時に大出血をきたし発見されることがある。今回我々は、先天性重度感音難聴で、鼓室に逸脱する内頸動脈走行異常を合併し、人工内耳埋め込み手術に難渋したが無事終了した症例を経験したので報告する。症例は、補聴器装用効果を認めない先天性重度感音難聴の女児。CTでは両側とも内耳蝸牛神経管狭窄があったが、MRIでは右蝸牛神経が欠損し、左蝸牛神経は確認できた。左耳は100dB程度の音に反応もあり、人工内耳適応と考えられたが、左中耳岬角から正円窓にかけて逸脱する内頸動脈奇形を認めた。2歳7ヶ月時に左人工内耳埋め込み手術を行った。術中に鼓室内の頸動脈走行を注意深く確認し、出血を来した際の止血対応のため外耳道後壁を削開し、正円窓上後方を削開し全電極挿入できた。術後に特記すべき合併症なく、人工内耳装用を開始している。
  • ─骨導聴力閾値の上昇を呈した9例16耳─
    森田 由香, 山本 裕, 大島 伸介, 高橋 邦行, 根本 美歌, 桑原 優子, 高橋 姿
    2013 年 23 巻 3 号 p. 248-255
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    最近当科で経験したANCA関連血管炎による難治性中耳炎の臨床的特徴を検討した。過去3年間で難治性中耳炎の経過中にANCAの上昇が認められたもの、もしくは多臓器障害によりANCA関連疾患を強く疑われたものを対象とした。
    年齢は55歳から81歳、性別は男性1例1耳、女性8例15耳、両側性が7例、片側性が2例であった。初診時の診断は全例滲出性中耳炎であったが、発症後平均2.9か月で骨導聴力閾値の上昇と認めた。治療後聴力評価が可能であった6例10耳のうち3例6耳は著明改善をみたが、1例1耳は軽度改善、2例3耳は聾となった。聴力予後が不良であった3例4耳について検討すると、2例3耳でMRIにて内耳道硬膜や蝸牛の造影効果を認め、2例3耳で尿潜血陽性であった。一方、著明改善例ではこれらの所見は認めなかった。以上より、MRIの内耳所見や尿潜血反応が聴力予後因子となる可能性が示唆された。
シンポジウム 2
  • 司会のことば
    原渕 保明, 飯野 ゆき子
    2013 年 23 巻 3 号 p. 257
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
  • 小林 茂人
    2013 年 23 巻 3 号 p. 258-262
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    血管炎は、血管壁の壊死と炎症細胞の浸潤と定義される。抗好中球細胞質抗体 (anti-neutrophil cytoplasm antibody: ANCA) に関連する血管炎 (ANCA-associated vasculitis: AAV) には、1) 顕微鏡的多発血管炎 (microscopic polyangiitis: MPA)、2) 多発血管炎性肉芽腫症 (granulomatosis with polyangiitis: GPA)(旧Wegener肉芽腫症)、3) 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (eosinophilic granulomatosis with polyangiitis: EPGA)(Churg-Strauss症候群) がある。臨床上重要なことは、1) 生死に関わる、2) 重篤な障害を残す、3) 治療による合併症を残すことである。このために早期診断・治療が必要であるが、診断が難しいことを経験する。全身疾患のため、感染症、悪性腫瘍、膠原病など除外診断が重要であり、診断および治療に関しては多くの臨床科医の医療連携が特に重要である。
  • 岸部 幹
    2013 年 23 巻 3 号 p. 263-267
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    難治性中耳炎で初発した、ANCA関連血管炎性中耳炎の2例を報告した。症例1は36歳の男性である。初診時、両側の耳漏と回転性めまいを伴っていた。血清のPR3-ANCAは陽性であり、両側の混合性難聴をきたしていた。多発血管炎性肉芽腫と診断し、プレドニゾロンとサイクロフォスファミドの投与により耳症状は改善した。しかし、肥厚性硬膜炎が続発し、プレドニゾロン、サイクロフォスファミドの増量により肥厚性硬膜炎は改善した。症例2は64歳の女性である。両側の耳漏と難聴で初発し、両側の混合性難聴を呈していた。初診時にPR3-ANCAは陰性であったが、臨床的に多発血管炎性肉芽腫症と考えプレドニゾロンとサイクロフォスファミドの投与を行ったところ、耳症状は改善した。しかし、肥厚性硬膜炎が続発した。開頭による硬膜生検の結果、多発血管炎性肉芽腫症と確定診断された。肥厚性硬膜炎はプレドニゾロンとサイクロフォスファミドの投与により改善した。ANCA関連血管炎性中耳炎では、中耳炎を伴わないANCA関連血管炎より肥厚性硬膜炎、神経障害が合併しやすいと思われた。
  • ─聴力像を中心に─
    吉田 尚弘, 飯野 ゆき子
    2013 年 23 巻 3 号 p. 268-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    難治性中耳疾患には、好酸球性中耳炎、コレステリン肉芽腫、中耳腫瘍などに加えANCA関連血管炎性中耳炎がある。1) 抗菌薬、鼓膜切開などを併用した治療に抵抗性、2) 中耳の肉芽、滲出液の細胞診、病理組織診断にて炎症所見が中心、3) 感音難聴の進行 といった従来原因不明とされていた難治性中耳疾患の中にANCA関連血管炎性中耳炎が存在するのではないかと近年考えられている。本疾患は早期診断、副腎皮質ステロイドと免疫抑制薬投与が必要である。診断例と疑われる症例を提示し、当科で治療、経過観察を行っている8症例の治療前後の聴力変化を検討した。聴力像、臨床所見から、1. 急速な難聴の進行 2. 副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬の投与により、感音難聴はわずかでも骨導聴力が残っていれば改善 3. 高音域も聴力が改善する例が多い 4. 聾の症例では聴力は回復しない 5. 聴力回復後、語音弁別能は低下していないという特徴があった。
  • 立山 香織
    2013 年 23 巻 3 号 p. 275-278
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    近年耳症状を初発症状とするANCA関連血管炎性中耳炎の報告が増加しているが、初診時の段階ではANCA陰性の場合もあり、診断に難渋する症例も少なくない。臨床的に多発血管炎性肉芽腫を疑うANCA陰性の難治性中耳炎2症例を呈示した。また、現在維持療法を行っている多発血管炎性肉芽腫患者9名について、血清中のANCAをWieslab® capture ELISAと同社のdirect ELISAを用いて測定し、陽性率を比較した。その結果、direct ELISAでは9人中1人 (11.1%) が陽性であったのに対し、capture ELISAでは9人中3人 (33.3%) が陽性であった。経過中、再燃を認めた症例は9症例中3例存在したが、Capture ELISA陽性例と一致していた。direct ELISAによるPR3-ANCA測定法で陰性であってもcapture ELISAで陽性となる症例が存在する。陽性例については、再燃との関連が示唆された。
  • 原渕 保明, 飯野 ゆき子, 岸部 幹, 吉田 尚弘, 立山 香織, 小林 茂人
    2013 年 23 巻 3 号 p. 279-281
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    ANCA関連血管炎に合併する難治性中耳炎 (ANCA関連血管炎性中耳炎: Otitis media with ANCA associated vasculitis (OMAAV)) が知られている。本論文では、OMAAV32例の臨床像を検討した。全例、抗菌薬および鼓膜換気チューブが無効の難治性中耳炎を呈しており、初診時に鼓室・乳突洞の貯留液または肉芽を全例で認めた。血清PR3-ANCAまたは血清MPO-ANCAが陽性であった症例は25例 (78%) であった。急速に進行する骨導閾値の上昇を30例 (94%) に認めた。顔面神経麻痺、肥厚性硬膜炎、肺・腎病変の合併はそれぞれ、14例 (44%)、8例 (25%)、10例 (31%) に認めた。2例が、脳底動脈の血管炎によるくも膜下出血で死亡していた。我々は、これらの臨床像からOMAAVの診断基準案を提唱した。
  • ─ANCA関連血管炎性中耳炎を正しく診断するために─
    飯野 ゆき子, 原渕 保明, 岸部 幹, 小林 茂人, 立山 香織, 吉田 尚弘
    2013 年 23 巻 3 号 p. 282-284
    発行日: 2013年
    公開日: 2015/04/16
    ジャーナル フリー
    ANCA関連血管炎に伴う中耳炎 (ANCA関連血管炎性中耳炎; OMAAV) は非常に難治性であり、診断に苦慮することが多い。しかしANCA関連血管炎は生命を脅かす全身性疾患であるため、早期の診断、そして適切な治療が必要である。ANCA関連血管炎性中耳炎と鑑別を要する難治性中耳炎には好酸球性中耳炎、コレステリン肉芽腫症、結核性中耳炎、等があげられる。これらを鑑別するための診断アルゴリズムとOMAAVを正確に診断するための血清学的検査、細胞診、画像診断等の検査一式を提唱する。
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