Otology Japan
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26 巻 , 5 号
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招待講演
  • 森内 浩幸
    2016 年 26 巻 5 号 p. 633-638
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    感染症は小児の難聴の原因として古くから重要で、先天性感染では先天性風疹症候群や先天梅毒が有名であり、後天性感染では髄膜炎、脳炎、中耳炎をはじめ、麻疹や猩紅熱のようなありきたりの感染症も難聴を起こしていた。

    幸い、ワクチン(風疹、麻疹、日本脳炎、肺炎球菌、Hibなど)や抗生剤(ペニシリンなど)の開発と普及によって、先進国では多くの感染症が稀な疾患となり、その後遺症として難聴をきたす子ども達の数も少なくなった。しかし世界に目を向けると、まだ風疹ワクチンが普及していないため先天性風疹症候群の被害(その中でも最多の障害は難聴)を受けている子ども達が少なくないし、その他の感染症も制御されているとはとても言えない状況が続いている。そしてわが国においても今なお対策が不十分な感染症、そしてそのために生じる難聴の問題が残されている。先天性感染ではサイトメガロウイルス、後天性感染ではムンプスである。

原著論文
  • 畑 裕子, 奥野 妙子, 竹内 成夫, 吉田 亜由, 松本 有, 山崎 葉子
    2016 年 26 巻 5 号 p. 639-643
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    鼓膜炎は外耳と中耳の境界である鼓膜に限局した炎症がおきている状態で、治療は感受性のある抗生剤の内服や点耳などを行うとされている。今回我々は、保存的治療に抵抗し、外科的治療を行った鼓膜炎の1例を経験したので報告する。症例は34歳女性で、前医で保存的治療を試みたが軽快なく、中耳病変の否定のため当科へ紹介受診した。鼓膜所見から腫瘍性病変を否定する必要があると考え手術を施行した。鼓膜病変は軽快した。病理結果は異型性の無い角化上皮に覆われたリンパ濾胞との診断であった。本例は掻痒感のため綿棒などで鼓膜を刺激し炎症を繰り返していた。このため鼓膜の全層に及ぶ不可逆的変化をもたらし、保存的な治療に抵抗したものと考える。再発の予防は、機械的な刺激を避ける事、掻痒感が生じた折はできるだけ早急に局所治療を行う事である。保存的治療に抵抗する場合、病変部分の外科的切除も選択肢の一つにいれて治療にあたるのが良いと考える。

  • 河野 浩万
    2016 年 26 巻 5 号 p. 644-649
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    高度な浅在化鼓膜に対する手術では、残存外耳道・鼓膜上皮が限られているため、骨部外耳道のほとんどを上皮で覆うことができず広範囲に骨壁が露出してしまう。この広範囲な皮膚欠損部分をどのように対処するかは、本疾患の手術において大きな問題点のひとつである。当院では、露出した骨壁の被覆材料として耳後部下方に茎を有し頭蓋骨膜から作成した有茎弁を用いている。これまでに6例の浅在化鼓膜に対して本術式を行った。外耳道皮膚欠損部分をすべて遊離皮弁で覆う従来の方法に比べ、術後の外耳道上皮化は速やかであった。今回の手術で用いた有茎耳後部頭蓋骨膜弁は、鼓膜まで達する十分な長さを有しかつ厚みがさほどないため、外耳道内の被覆材料として非常に有用と考えている。また作成方法は非常にシンプルで、術後例でも活用が十分期待できることも利点の一つとして挙げられる。

  • 竹内 万彦, 北野 雅子, 坂井田 寛, 増田 佐和子
    2016 年 26 巻 5 号 p. 650-656
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    Klippel-Feil症候群は、短頸、後頭部の毛髪線低位、頸部の可動域制限を3徴とし、約8割に聴覚障害が合併する。両側アブミ骨奇形に対しアブミ骨手術を行った症例を経験した。症例は10歳男児で主訴は両側難聴である。初診時、標準純音聴力検査では、気導閾値右76.7dB、左70.0dB(3分法)の両側混合性難聴であった。非良聴耳の右耳について試験的鼓室開放術を行った。キヌタ骨長脚短縮、アブミ骨欠損、卵円窓閉鎖、顔面神経走行異常を認め、stapedotomy-Mを行い、聴力改善が得られた。術後一過性の顔面神経麻痺がみられた。反対側でも同様な耳小骨奇形がみられ、stapedotomy-Mを行ったが、ワイヤーをツチ骨柄に締結できず、ツチ骨頸に締結した。術後聴力改善はみられたが、気骨導差が残存した。本症候群では多彩な奇形を合併するため、副損傷に十分留意し、聴力改善手術に臨む必要がある。

  • 中江 進, 足立 直子
    2016 年 26 巻 5 号 p. 657-663
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    52耳のアブミ骨固着のある鼓室硬化症に対し、アブミ骨可動術を33耳(可動術群)、小開窓アブミ骨手術を8耳(SFS群)、malleus attachment prosthesis(MAP)を使用したアブミ骨手術を3耳(MAP群)、total ossicular replacement prosthesis(TORP)を使用したアブミ骨手術を8耳(TORP群)施行した。術後聴力改善、術後気骨導差を比較すると統計学的にはこれら3群のあいだに有意差はなかったが、2010年日本耳科学会聴力判定基準での聴力改善成功率はTORP群が最も良かった。

    術後重篤な眩暈がMAP群で1例、TORP群では2例あり、CTで迷路気腫を認めた。合併症が発現した場合、早期のCT撮影の重要性を強調し、その所見により合併症の対処法を示すフローチャートを提案した。

  • 木村 百合香, 大野 慶子, 本庄 需, 奥野 秀次, 小林 一女
    2016 年 26 巻 5 号 p. 664-667
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    病的共同運動は末梢性顔面神経麻痺の後遺症として患者に大きな苦痛を与える。近年のリハビリテーション法の進歩により、その発症頻度は減少傾向であるが、末梢性顔面神経麻痺の診療において常に留意が必要な病態である。そこで、今回我々は、Ramsay Hunt症候群後による表情筋─アブミ骨筋間病的共同運動により生じたアブミ骨筋性耳鳴と慢性中耳炎に対し、鼓室形成術・アブミ骨筋切断術を行い耳鳴が消失した一例を経験したので報告する。症例は70歳男性、両難聴・耳漏と左耳鳴を主訴に当科を受診。両鼓膜穿孔があり両慢性穿孔性中耳炎と診断した。純音聴力検査上、閉眼時に左低音部の閾値上昇を認めた。両鼓室形成術、左アブミ骨筋切断術の施行により、閉眼時の閾値上昇は消失し、さらに耳鳴も完全に消失し、非常に高い満足度を得ることができた。病的共同運動としてのアブミ骨筋性耳鳴は、外科的治療により治療が可能な病態であることに留意を要する。

  • 竹内 成夫, 奥野 妙子, 吉田 亜由, 畑 裕子
    2016 年 26 巻 5 号 p. 668-673
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    今回当院で初回手術を行った36例の先天性真珠腫症例をPotsic分類に基づいて分類し、術中映像・手術所見からキヌタ骨・アブミ骨病変の部位と再建方法について検討した。真珠腫が耳小骨に及ぶStage III、IVはそれぞれ24例と3例であり、存在部位は14例でツチ骨裏面から前後方向、11例で後方のみに存在しており、2例は他部位発生と推測された。Stage III 24例は多様な病変像を呈しており、2例のみアブミ骨底・前脚が融解するもキヌタ骨長脚が残存し、I型に再建された。他例は全てキヌタ骨長脚が融解しており、アブミ骨正常例は2例、アブミ骨片脚の融解例は4例あり、これらはIII型もしくはIV型に再建された。更にアブミ骨両脚融解例が5例、底のみ残存例が11例あり、IV型に再建された。真珠腫によるキヌタ骨・アブミ骨融解は真珠腫の形態・位置・大きさにより多様な病変を呈することが確認された。

  • 奥田 匠, 中島 崇博, 東野 哲也, 髙木 実, 花牟禮 豊
    2016 年 26 巻 5 号 p. 674-680
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    鼓室の先天性真珠腫には嚢胞状のclosed型と、島状に存在するopen型がある。前者は鼓膜越しに白色塊が透見され判別は容易だが、後者は耳鏡所見での判別は困難である。一方、鼓膜弛緩部に陥凹を伴わず緊張部に穿孔を有した例で、穿孔縁上皮が鼓室の炎症に乗じて鼓膜裏面に侵入して形成される二次性真珠腫という病態がある。大穿孔、ツチ骨柄付近からの上皮侵入、高齢、長い穿孔歴、乳突腔の発育抑制が特徴とされる。しかし、辺縁性小穿孔で、若年、穿孔原因不明、蜂巣の発育含気が良好という、異なる病態が想定される症例を3例経験した。何れも当初は穿孔がなく鼓膜の大半が白色のため滲出性中耳炎や急性中耳炎、石灰化などと考えられていた。これらは鼓膜裏面のopen型先天性真珠腫が穿孔したものと考えられた。穿孔のない白色鼓膜では真珠腫の存在が滲出性中耳炎や急性中耳炎、石灰化として看過される危険があり注意を要する。穿孔を来した病変は二次性真珠腫との鑑別を要する。

  • 桝谷 将偉, 湯浅 有, 湯浅 涼
    2016 年 26 巻 5 号 p. 681-686
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    当院では鼓室形成術に際し、主として鼓膜形成術接着法を応用した耳鏡内操作のみによる低侵襲性術式を施行している。だが、耳鏡内操作のみでは術野が狭いため外耳道弯曲症例や大穿孔症例において、一枚の大きな移植弁それ自体が視野や術操作の妨げとなる場合がある。その際、比較的小さな移植弁を複数枚使用し処置部位を明視下に置く事で、より確実な術操作を行うことが可能となる。今回我々は、2011年1月から2013年12月に当院で施行された鼓室形成術Ⅰ型症例613耳における複数枚の移植弁使用症例、および一枚の移植弁使用症例間の術後鼓膜穿孔閉鎖率と術後聴力を比較検討した。その結果、大穿孔症例における穿孔閉鎖率が、一枚移植弁使用例に比し複数枚使用症例において有意に高かった。また移植弁の枚数による術後聴力の差は認めなかった。耳鏡内での大穿孔に対する穿孔閉鎖の際には、複数枚移植弁使用による明視下での確実な術操作が有用であることが示唆された。

  • 大石 直樹, 山田 浩之, 藤岡 正人, 平賀 良彦, 鈴木 法臣, 松崎 佐栄子, 小川 郁
    2016 年 26 巻 5 号 p. 687-695
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    側頭骨悪性腫瘍は稀な疾患であり治療法は未だ確立していないが、手術的加療が治療の中心である。切除断端陰性の達成が治療成績に関連する重要な因子であり、そのための確実な手術手技の確立が、予後の改善に極めて重要となる。側頭骨悪性腫瘍への標準術式としては、進展範囲によって、側頭骨外側切除および側頭骨亜全摘の2種がある。本報告では、側頭骨外側切除の適応症例として外耳道癌cT2N0M0の一例を、側頭骨亜全摘の適応症例として中耳癌cT4N0M0の一例を提示し、当科における手術手技の工夫について述べた。特に、側頭骨外側切除術では前壁の処理について、側頭骨亜全摘術では腫瘍の進展範囲による骨削開ラインの設定について、それぞれ論じた。手術における基本的なコンセプトは、「すべての手術操作を明視下に行い」「なるべくノミを使わない」手術手技である。確実な手術操作は、重要解剖を明視下に同定していくことの積み重ねで達成されると考えている。

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