Otology Japan
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26 巻 , 2 号
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原著論文
  • ─改善・治癒の判定の検討と診療ガイドラインの検証─
    宇野 芳史, 工藤 典代
    2016 年 26 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    当院で経験した小児急性中耳炎735例を対象に「小児急性中耳炎診療ガイドライン2013」に沿った診療の臨床的検討を行った。改善と治癒判定についての判定基準を明らかにし、治療アルゴリズムに沿った治療の経過を検討した結果は以下のとおりである。

    1)重症度分類では、軽症例117例、中等症例478例、重症例140例であった。

    2)改善率は、第1選択治療後、第2選択治療後、第3選択治療後、第4選択治療後(軽症例のみ)の順に軽症例で63.2%、87.1%、91.5%、99.1%、中等症例で50.9%、73.5%、92.1%、重症例で35.3%、62.7%、83.5%であった。

    3)治癒率は第1選択治療後、第2選択治療後、第3選択治療後、第4選択治療後(軽症例のみ)の順に軽症例で57.3%、84.6%、88.9%、98.3%、中等症例で45.7%、69.4%、86.8%、重症例で28.7%、54.0%、71.4%であった。

    4)追加治療を行った後の最終治癒率は軽症例100%、中等症例93.4%、重症例82.1%であった。

    5)再発率および再燃率はこの順に、軽症例では0%、0%、中等症例では3.6%、3.0%、重症例では6.7%、10.0%であった。

    6)治療の継続あるいは変更の判定にはスコアリングによるスコアの点数変化率を用いた有効度A、Bを、治癒判定にもスコアリングシステムを用いた判定を行うのが、客観的判定を行う上で有効な方法であると考えられた。

    7)治療に難渋する症例はあったが、鼓膜換気チューブ留置を必要とした例は2006年版による治療例と比較し半減しており、その要因として新規経口抗菌薬の登場および治療アルゴリズムにこれらの抗菌薬の 投与を追加したことが考えられた。

    以上のようにこのガイドラインは小児急性中耳炎を治療する上で非常に有用であることが確認された。また、重症度スコアを用いた改善の判定および治癒の判定は、有効な判定方法であると考えられた。

  • 加藤 健, 曾根 三千彦, 寺西 正明, 吉田 忠雄, 大竹 宏直
    2016 年 26 巻 2 号 p. 71-79
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    進行性の感音難聴を合併したANCA関連血管炎性中耳炎は、免疫抑制薬や副腎皮質ステロイド投与により炎症 反応が陰転化するにもかかわらず、難聴が残存する症例を経験する。感音難聴を発症した症例の聴力予後と、内耳造影 3D-FLAIR MR画像の関連性について、8例16耳(男性1名2耳、女性7名14耳)の検討を行った。初回撮影時の造影後MR画像の蝸牛信号強度は聴力不変例と聴力改善例では有意差が無かったが、造影前後の比は正常聴力例に比べて聴力不変例では有意に高値であった。聴力改善例の造影MR画像では蝸牛高信号は減弱もしくは消失していたが、聴力不変例では造影MR画像で蝸牛高信号が残存もしくは増強していた。3D-FLAIR MR画像はANCA関連血管炎性中耳炎の内耳障害の状態把握の一助となりえる。

シンポジウム
  • 神崎 晶
    2016 年 26 巻 2 号 p. 81-83
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    残存聴力がある症例に対してelectro-acoustic stimulation(EAS)が行われるようになっている。残存聴力を温存して人工内耳埋込手術を行い、将来の内耳再生医療につなげていくことを考えると内耳機能や構造を温存・改善する必要がある。内耳機能温存・改善を実現しうる薬物の探索・創薬ならびに、内耳への薬物投与法、手術法の検討が重要である。さらに、急性感音難聴に対する治療として内耳局所投与が行われているが、海外ではカテーテルの正円窓留置術による薬物投与手術も治験が実施されており、将来的には実現するであろう。これらの観点から内耳への薬物投与法の解析、開発が今後もますます重要となるであろう。

パネルディスカッション1
  • 金丸 眞一, 金井 理絵, 尾前 薫
    2016 年 26 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    新規治療法の開発と実用化には、数多くの問題点と乗り越えなければならないハードルがある。開発から実用 化への過程の初期の段階では、特許申請を学会や論文の発表よりも優先することが重要であり、それに伴ってパートナー企業を見つけることが最も重要な課題となる。そのためには、単なる良い治療の開発というだけでなく、企業にとっても魅力ある長期的な視点に立った戦略を持たねばならない。また、医師単独では限界があることを知り、優れた専門家集団の組織を構築することが不可欠である。このためには、アカデミア、先端医療振興財団、PMDAなどの支援組織に戦略相談を行うのもよい方法である。

    開発者である医師・研究者は、つねに『人類に貢献する新しい治療法を世に送り出すという強く高い志』を忘れずに、支援組織や企業の担当者と密に意思疎通を図り、新治療法の発展性を模索し、互いに新治療法の実用化への熱意を保ち続ける努力を怠ってはならないと思われる。

パネルディスカッション3
  • 原 稔, 神田 幸彦, 田中 克己, 吉田 晴郎, 髙橋 晴雄
    2016 年 26 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    術後合併症の中でも最も重症で重要なのが術後皮弁壊死であるが、再手術の手技や時期、術側の決定等に関して、未だ定まった対処法がないのが現状である。そこで、長崎大学病院での術後皮弁壊死症例の経験をもとに、再人工内耳入れ替え手術時に行っている工夫を提示する。

    1997年から2015年に当施設で行った人工内耳手術数は483例で、術後皮弁壊死の症例数は13例(2.7%)で、再手術時の平均年齢は10.8歳、初回手術から人工内耳抜去までは平均641.6日であった。

    現在の当施設における術後皮弁壊死の対応法は、人工内耳抜去して皮弁感染が落ち着くまで数ヶ月待機し、二期的に同側へ再埋め込みをするが、この時必ず側頭筋膜弁を用いてデバイスを完全に被覆している。また、待機できない理由がある場合は、抜去と同時に対側へ再埋め込みを行う。

臨床セミナー4
  • 岩崎 聡
    2016 年 26 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    人工中耳と骨導インプラントは伝音・混合性難聴に対する人工聴覚器として発展した。Vibrant Soundbridge(VSB)は人工中耳の中で代表的なもので、感音難聴の適応として開発された。その後振動子であるFMTを正円窓に設置することで直接蝸牛に振動エネルギーを伝える方法で、適応を伝音・混合性難聴へと拡大した。2014年、本邦において伝音・混合性難聴に対して正円窓アプローチによる臨床治験を終了した。骨導インプラントは振動エネルギーを側頭骨を介して直接内耳へ伝える機器である。Bahaは半埋め込みタイプのもので、2006年から2009年に掛けて9施設による臨床治験を実施し、2013年に保険収載されている。人工中耳と様々な骨導インプラントが今後進化し、広く使用されてくることが期待される。

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