Otology Japan
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26 巻 , 3 号
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原著論文
  • 岡上 雄介, 庄司 和彦, 堀 龍介, 児嶋 剛, 藤村 真太郎, 奥山 英晃, 北野 正之
    2016 年 26 巻 3 号 p. 121-126
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    当科では接着法(鼓膜形成術)を、①graftとなる結合組織の強固な固定、②創傷治癒のための湿潤環境の維持に重点を置いた方法で行っている。まず結合組織と穿孔縁が接した状態を維持安定させるために外耳道側にテルダーミス®を入れ、結合組織とテルダーミス®をフィブリン糊で接着することで、結合組織のずれや落ち込みを防止するようにした。さらに、抗菌点耳薬を浸したスポンゼル®を充填し外耳道内の湿潤環境を維持できるようにした。今回2010年4月から2014年11月までに当科で改良した接着法を行い12か月以上経過観察できた45耳に対して検討した。鼓膜穿孔閉鎖率は全体で91.1%であり、日本耳科学会の聴力成績判定基準に基づいた聴力成績では全体の成功例としては94.6%であり、良好な結果が得られた。

  • 西池 季隆, 今井 貴夫, 大島 一男, 田中 秀憲, 鶴田 幸之, 富山 要一郎
    2016 年 26 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    耳小骨奇形に対する中耳手術では出血は少なく、経外耳道内視鏡下耳科手術(Transcanal endoscopic ear surgery:TEES)は良い適応になると考えられる。2013年3月から2015年12月までに、当科にてTEESを行った耳小骨奇形9例10耳に対して臨床的検討を行った。男性4名(5耳)、女性5名(5耳)で、平均年齢は29歳であった。船坂らの分類では、Ⅰ群は7耳、Ⅲ群は3耳であった。術式は、Ⅲ型変法を4耳に、Ⅳ型変法を3耳に、stapedotomyを3耳に行った。日本耳科学会による術後聴力判定基準(2010)に基づくと、成功例は8耳(80%)であった。TEESでは、術中に非常に明るく繊細で広角な視野を耳小骨周辺に得ることができ、耳小骨奇形における聴力改善手術に有効と考えられた。

  • 片岡 祐子, 菅谷 明子, 假谷 伸, 大道 亮太郎, 前田 幸英, 福島 邦博, 西﨑 和則
    2016 年 26 巻 3 号 p. 134-142
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    小児の健全な心身の育成のためには、人工内耳装用児においてもスポーツ参加は望ましいことであるが、機器の故障やコミュニケーションのしにくさなど問題を抱えている児も少なくない。今回我々は、人工内耳装用児のスポーツ実施状況に関するアンケート調査を実施した。有効回答者76例中スポーツ経験者は53例(69.7%)であり、その73.6%がスポーツ中も人工内耳を装用していた。人工内耳体外機器の故障はほとんどが経験しており、その内容としてはケーブル断線、プロセッサやコイルの故障、サビなどがみられたが、スポーツによるインプラントの故障例はなかった。スポーツ経験者は体外機器の落下、コミュニケーションの困難さ、汗・雨などで濡れるといった不便さを有しており、工夫や注意をすることで対処していた。

    人工内耳装用児はスポーツ参加において留意は必要であるが、過剰に制限を加える必要はない。医療、療育者として適切な情報提供や指導を心がけたい。

  • 川﨑 泰士, 和佐野 浩一郎, 山本 さゆり, 小川 郁
    2016 年 26 巻 3 号 p. 143-147
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    Heerfordt症候群はぶどう膜炎、耳下腺腫脹、顔面神経麻痺、微熱を主徴とする稀な症候群である。我々は当初、複数の脳神経麻痺と右上下肢、体幹の感覚障害を呈したが画像検査や血液検査で異常を認めず、耳下線腫脹と顔面神経麻痺を契機にHeerfordt症候群を疑われ耳下腺生検で確定診断に至った症例を経験した。本症例は画像からHeerfordt症候群に神経根障害が合併したと考えられた。完全型Heerfordt症候群の神経根障害の合併例は本症例で4例目となり大変稀少である。また上記合併例の耳鼻咽喉科からの報告は初めてとなる。過去の文献を踏まえて本疾患について報告したい。

シンポジウム
  • 茂木 英明, 宇佐美 真一
    2016 年 26 巻 3 号 p. 149-153
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    「残存聴力活用型人工内耳」は高音急墜あるいは漸傾型感音難聴に対する画期的な治療方法として2014年に保険収載され、本邦でも広く行われつつある。低音部の聴力を音響刺激で増幅するため、その温存のために、細くしなやかな電極の開発と低侵襲手術である正円窓アプローチなど、多くの研究がなされてきた。しかし、残存聴力活用型人工内耳の症例の長期経過については、いまだ明らかでない。今回の検討において、短期の経過では、術後1ヶ月に閾値上昇を認めるものの、その後1年までは低音部の聴力は安定して温存されていた。5年までの長期の経過では、低音部の難聴が進行した症例と、温存されていた症例が存在した。難聴が進行した症例群では、非術側耳の難聴の進行が比較的早く、難聴の自然経過での聴力悪化が関係していることが示唆された。短期的な聴力低下に対しては、電極の改良や薬剤の投与により改善することができる可能性が考えられた。残存聴力活用型人工内耳の対象になる症例は、程度の差はあるが進行性の難聴を呈するため、原因を特定することで、その進行の程度を推定し、将来的な聴力悪化に備えた電極の選択が重要であると考えられた。

ミニシンポジウム
  • 内田 育恵, 杉浦 彩子, 中島 務, 植田 広海
    2016 年 26 巻 3 号 p. 155-160
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    難聴は高齢者にとって最も一般的な感覚障害で、中高年地域住民を対象としたわれわれの調査によると、日常生活に支障をきたす程度の40dBHLを超える難聴者は、70歳代男性で5-6人に1人、女性で10人に1人程度である。難聴の存在は、個人や社会にさまざまな負の影響をもたらすことが、国内外の疫学研究から数多く報じられている。高齢期の難聴は、コミュニケーション障害、社会活動の減少から、抑うつ、意欲低下(アパシー)、認知機能低下、脳萎縮、フレイルや転倒、日常生活動作低下に関与する。ヘルスリテラシー低下や医療介入へのアドヒアランス不良、要介護リスクや死亡率の増加にまで関連することや、自動車運転、雇用、収入についても不利であることが指摘されている。難聴への介入としての補聴器活用が、これらの不利益を抑える効果に期待したい。

  • 新鍋 晶浩
    2016 年 26 巻 3 号 p. 161-168
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    高齢者に対して鼓室形成術をおこなう機会は増加している。高齢者の慢性中耳炎症例の特徴として、活動性の炎症を抱えていること、真菌の割合が多いという特徴がみられた。また真珠腫症例では内耳瘻孔や高度感音難聴を伴う重症例が多く、型別にみると二次性真珠腫が最多であった。耳漏、難聴、めまいといったQOLに影響を及ぼす症状が耳科手術により改善し、高齢者が社会で活躍できるようになることが治療の大きな目標である。手術をより安全で効果的におこなうためには、適切な術式は何か、術前に他科へ相談すべきかどうか、抗血栓薬内服はどうするべきか、など個々の症例毎によく検討しなければならない。

臨床セミナー2
  • ~Hints and Pitfalls~
    長谷川 信吾
    2016 年 26 巻 3 号 p. 169-172
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    外側側頭骨切除術(外耳道全摘術と同義)は軟骨部および骨部外耳道を鼓膜、ツチ骨を付けて一塊切除する術式であり、外耳道癌であれば外耳道や鼓膜を越えずに外耳道内にとどまった症例が適応となる。この術式は乳突削開、上・前鼓室開放、後・下鼓室開放に加えてキヌタ・アブミ骨関節の離断や顔面神経同定など中耳手術に必須の手技が満載に含まれている。しかも、そのほとんどは乳突蜂巣の発育が良好であるため解剖学的に理解しやすく、対象が生命に関わる癌病変であるため腫瘍に近接した部位の操作を除けば、比較的経験の浅い術者にも経験しやすい術式といえる。一方、外耳道前方深部つまりは骨部耳管の処理については詳細が記述されている手術書が少なく、また視野も顎関節が存在するために十分に関節窩を展開することが難しい。ここでは、Hints(コツ)とPitfalls(落とし穴)と題してこれから始める術者に対しては基本的な手技について、ある程度経験を積んだ術者に対しては自身の経験から得た応用的な工夫について、新しい知見を交えて解説したい。

パネルディスカッション3
  • 武田 英彦, 三澤 建, 小林 万里菜, 小山 一, 渡部 涼子, 熊川 孝三
    2016 年 26 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    当科では人工内耳手術を開始してから28年間に32耳の再手術を経験した。その原因としては電極故障が9耳で最多であった。再手術の方法としては、同側入れ替え術が16耳で最多であった。入れ替え手術の際は、ほぼ全例で旧電極と同じタイプの電極を使用して行われた。近年、電極の選択範囲が広がり、電極アレイは、より細くて短い電極の選択も可能になり、インプラントは、より薄くて安定性が良いインプラントを選択することも可能になった。近年、我々が再手術につながる合併症を予防するために行っている皮膚切開のデザイン、インプラントの固定、電極リード固定、外耳道の補強・再建について提示する。

  • 森鼻 哲生, 太田 有美, 猪原 秀典
    2016 年 26 巻 3 号 p. 179-182
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    近年人工内耳の普及とともに再手術の頻度は見逃せなくなっている。大阪大学医学部附属病院において1992年1月から2015年3月末までに607耳(518例)の人工内耳手術が行われた。このうち、同時もしくは短期間の間に摘出と再埋め込みを行う入れ替え手術は47耳(7.7%)であった。入れ替えの原因として小児では器械の故障や外傷が多く、成人では電極のスリップアウトが目立っていた。我々の経験から入れ替えにあたっての手術側の決定について考察した。同側への入れ替えをまず考えるが、言語獲得期の小児で同側への入れ替えは2期的に行わざるを得ない場合や、髄膜炎後の症例、マップ調整では対応困難な顔面痙攣がある症例などでは対側への手術を考える。

パネルディスカッション4
  • 大石 直樹, 平賀 良彦, 鈴木 法臣, 宮崎 日出海, 小川 郁
    2016 年 26 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    聴神経腫瘍に対する手術法として迷路削開を要する経迷路法を選択する場合、極力回避すべき合併症は顔面神経麻痺である。顔面神経麻痺を確実に避けるためには、信頼性の高い術中神経モニタリングシステムが必須である。近年、利用可能となってきた術中持続神経モニタリングシステムの一つとして、顔面神経根を持続的に刺激してモニタリングする顔面神経根刺激誘発筋電図(facial nerve root exit zone-elicited compound muscle action potential(FREMAP)monitoring)があり、精度が高い。本報告では、従来の神経刺激装置を用いた経迷路法の一例、およびFREMAPを用いた経迷路法の一例の経過をそれぞれ示し、より確実な顔面神経機能温存手術について論じた。また将来展望として、経迷路法における蝸牛神経温存術および人工内耳挿入による聴覚機能の再獲得と、持続モニタリングを併用した後迷路法による聴覚機能温存手術についても論じた。

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