Otology Japan
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27 巻 , 3 号
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原著論文
  • 田中 康広, 大村 和弘, 蓮 琢也, 海邊 昭子, 深美 悟, 春名 眞一
    2017 年 27 巻 3 号 p. 173-178
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    Over-underlay法は比較的新しい鼓膜形成法ではあるが、本邦での報告はほとんどない。今回、2014年から2015年の2年間に当教室で施行したover-underlay法の術後成績に関し、穿孔閉鎖率、聴力改善成績、術後合併症の観点より検討を行った。対象は52例であり、手術時年齢は8歳から74歳までの平均46. 5歳であった。術後12ヶ月における穿孔閉鎖率は96. 2%であり、鼓膜穿孔の大きさと穿孔閉鎖率には有意な関係は認めなかった。日本耳科学会の術後聴力成績判定基準(2010)に基づいた聴力改善率は全体で90%であった。鼓膜穿孔の大きさおよび耳小骨再建方法は聴力改善成績に影響を与えなかった。また、鼓膜の浅在化をはじめとする重篤な合併症は1例も見られなかった。

    Over–underlay法は手術成績が良好で合併症も少なく、慢性化膿性中耳炎や外傷性鼓膜穿孔などの鼓膜穿孔に対して理想的な術式と考えられる。

  • 道田 哲彦, 山本 典生, 平海 晴一, 岡野 高之, 伊藤 壽一
    2017 年 27 巻 3 号 p. 179-184
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    垂直部から水平部の内頸動脈管の欠損を伴った右迷路下型錐体部真珠腫に対し、経下顎窩アプローチにより、大きな合併症をきたすことなく真珠腫を全摘出し得た症例を経験した。症例は67歳男性で、幼少時より両側重度の感音難聴であり、中耳手術歴があった。半年前から右耳漏が出現し、側頭骨CTで乳突腔から上鼓室、蝸牛の前下方、下鼓室に至るまで軟部組織陰影を認め、内頸動脈管骨壁の水平部、垂直部での骨融解を認めた。MRIでも同部位に病変を認めた。術前は内頸動脈周囲の安全な操作のため側頭下窩法(infratemporal fossa approach)type Bが必要と想定していたが、真珠腫の前方内側への進展が中硬膜動脈近傍にとどまっていたため、頬骨弓離断や硬膜露出を伴うことなく、下顎骨頭を脱臼させ、下顎窩を削開することで病変を全摘出することができた。術後の開口障害はなく術後3年で再発はない。

  • 小林 泰輔, 池園 哲郎, 松田 帆, 小森 正博, 兵頭 政光
    2017 年 27 巻 3 号 p. 185-192
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    外リンパ瘻は特異的な症候や検査所見がなく、診断困難な疾患の一つである。近年、外リンパ特異的タンパクであるcochlin-tomoprotein(CTP)が測定可能になり、外リンパ瘻の診断が大きく進歩した。本研究では、外リンパ瘻が疑われCTPを測定した患者28人、29耳のCTP値、臨床データと経過を検討した。その結果、5耳(17%)がCTP陽性、7耳(24%)が疑陽性、17耳(59%)が陰性であった。カテゴリー1の症例では、CTP高値であるものが多いものの、ばらつきが大きかった。これに対して、カテゴリー2、3、4の症例ではCTP値が低いものが多かった。陽性5耳のうち、3耳で他のめまい疾患を合併していた。疑陽性7耳のうち1耳で、陰性17耳のうち1耳で最終的に外リンパ瘻確実例と診断された。複数回測定した耳でCTPの判定結果が異なった症例もあり、外リンパ瘻疑い例でめまいが持続する症例では、複数回の測定が望ましい。

  • 鍋倉 隆, 梶原 啓
    2017 年 27 巻 3 号 p. 193-198
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    発症時期が曖昧である顔面神経麻痺に対して、Bell麻痺に準じてステロイドを投与した。麻痺スコアに変化はなかったが、ENoG値は大きく改善した。しかし、その2週間後にENoG値は再び悪化した。早急に撮影したMRIにて松果体腫瘍による髄膜播種を疑い、神経内視鏡にて生検を行い松果体乳頭状腫瘍と確定診断に至った。顔面神経麻痺の原因を探っていく上で、詳細な病歴聴取は大事であり、少しでも違和感を感じる点があれば、早急に検査を進めていくことが大事であると考える。

テーマセッション2
  • 松原 篤
    2017 年 27 巻 3 号 p. 199-203
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    好酸球性中耳炎は、好酸球浸潤が著明な中耳貯留液(好酸球性ムチン)を特徴とし、適切な治療が行わなければ難聴が進行する難治性の中耳炎として知られている。その診断基準は、2011年に以下のように提唱された。すなわち大項目を好酸球優位な中耳貯留液が存在する滲出性中耳炎または慢性中耳炎、としその他に4つの小項目として、1)ニカワ状の中耳貯留液、2)中耳炎に対する従来の治療に抵抗性、3)気管支喘息の合併、4)鼻茸の合併、のうち二項目以上を満たすものである。

    好酸球性中耳炎の治療としては、好酸球性ムチンを除去した後の局所ステロイド投与が有効である。また、長期管理薬として抗ロイコトリエン薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、第二世代抗ヒスタミン薬などを組み合せた治療も行われる。また、合併する気管支喘息の良好なコントロールも重要である。

テーマセッション10
  • 池園 哲郎
    2017 年 27 巻 3 号 p. 205-209
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    我々は新たな診断マーカーCTP(cochlin-tomoprotein)が外リンパ特異的蛋白であることを見いだした。CTPは室温放置や凍結融解の影響を受けにくい安定した蛋白であり、診断マーカーとしては理想的な蛋白であることを報告してきた。2014年から2015年の間に全国のCTP検査共同研究施設から提出された症例レジストリの結果を検討した。この研究は我が国独自の臨床研究である。

    一方で、外リンパ漏出は無いが骨迷路に欠損のある外リンパ瘻として前半規管裂隙症候群が知られている。黄色人種に比べて白人に多い疾患である本疾患の臨床研究が海外では盛んである。北米で新たな手術術式としてround window reinforcementが報告され、その治療効果が報告されている。日本で通常行われている手術法との比較を文献的に行った。

  • 中川 隆之
    2017 年 27 巻 3 号 p. 210-216
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    近年、内耳保護、再生に関連する基礎的研究の進捗に伴い、感音難聴に対する創薬研究が注目されている。感音難聴は、頻度の高い身体障害として知られているが、感音難聴に対し、米国食品医薬品局が認める薬物は存在しない。突発性難聴は、感音難聴の中では頻度の低いものであるが、診断、治療に関する臨床研究の蓄積があり、新規治療薬の対象疾患としての条件は比較的整っている。本総説では、感音難聴治療開発の現況、インスリン様細胞増殖因子1局所投与による突発性難聴治療に関わる基礎的研究、臨床研究の概要について述べ、薬事承認に向けた今後の展開について展望する。

テーマセッション13
  • 朝戸 裕貴, 加我 君孝
    2017 年 27 巻 3 号 p. 217-221
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    小耳症・外耳道閉鎖に対して形態と機能の再建を両立させることを目的として、われわれは耳介形成術と外耳道形成術を形成外科・耳鼻咽喉科の同時共同手術として行うことに取り組んできた。

    小耳症に対する耳介形成術は、患者が10歳になるまで待機した上で、第1期手術として肋軟骨移植術を、半年経過後に第2期手術として耳介拳上術を行う二段階手術法が一般的である。この第2期手術において、適応のある患者については耳介拳上術とともに外耳道形成術を同時共同手術として施行する。

    1999年から2015年までに17年間に200例の同時共同手術を施行した。うち片側例は133、両側例は37例67件であった。術前後の聴力改善に関しては約60%の症例で15dB以上の改善がみられるが、正常聴力レベルに達するには補聴器の使用が必要であった。合併症として5例に顔面神経麻痺が見られたがうち4例は保存的に治癒した。術式の詳細について解説する。

テーマセッション14
  • 藤岡 正人
    2017 年 27 巻 3 号 p. 223-229
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/02/13
    ジャーナル フリー

    再生医療とは、自己修復能が限られている部位での失われた組織・臓器の人為的再構築による治療を指し、イモリなどの生物と異なり元来内在性再生能に乏しい人類にとっては大きなチャレンジである。我が国のように治療目的でのヒトの臓器や細胞の確保が困難な医療状況下においては、再生医療の実用化に対する社会的要請がとくに大きく、再生医療新法の成立や再生医療製品の早期承認制度など、技術革新を産業化に結びつける試みが国家レベルで急速に推し進められている。かつては再生能がないと考えられていた内耳においても、科学の急速な進歩により、蝸牛幹細胞の採取1)やES/iPS細胞を用いた内耳細胞の作成が可能となり2)〜4)、現在、企業も含めた「内耳再生医療」の開発競争が国内外で始まりつつある。

    本稿では産・学・官をまたいだ本邦における再生医療全体の概要を整理し、実用化に向けて我々が求められるステップやハードルについて概観したのちに、基礎研究レベルでの内耳再生に関する国内外の知見を整理したい。

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