2008年1月~2017年4月の期間に当院で施行した中耳真珠腫の初回手術例を対象とし、真珠腫進展度と鼓索神経損傷率および術前CTによるアブミ骨周囲評価を試みた。
対象は鼓索神経損傷の有無を評価し得た218例223耳、鼓索神経損傷は53/223耳(24%)であった。真珠腫の病態区分別の鼓索神経損傷率は弛緩部型:18%、緊張部型:46%、先天性:18%、二次性:29%であり緊張部型で有意に高かった。解剖学的区分別の鼓索神経損傷率はT領域への進展有り群:37%、進展無し群:11%でT領域の進展で高かった。アブミ骨病変別の鼓索神経損傷率はS0:10%、S1:42%、S2:58%とアブミ骨への進展例で有意に高かった。アブミ骨病変の術中所見と術前CT所見は相関していた。
真珠腫の緊張部型例・T領域への進展例・アブミ骨周囲への進展例で損傷率が高いことより、真珠腫が中後鼓室へ進展する例で損傷率が高かったと考えられる。術前CTによるアブミ骨周囲への真珠腫進展評価が鼓索神経損傷リスク評価へ有用と考えられた。
抄録全体を表示