Otology Japan
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28 巻 , 3 号
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テーマセッション3
  • 小林 泰輔
    2018 年 28 巻 3 号 p. 123-126
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー

    多くの先天性真珠腫は鼓室に発生し、経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)のよい適応と思われる。本報告ではTEESを行った先天性真珠腫23耳と顕微鏡下耳科手術(MES)を行った6耳の結果を示す。年齢は1歳から13歳(中央値3歳)で、平均経過観察期間は40.6か月であった。TEES群は、stage Iaが14耳、IIbが1耳、Icが3耳、stage IIが5耳であった。鼓室形成術I型が18耳で、III型が3耳で、IV型が2耳で行われていた。MES群は全例stage IIで、後壁保存型鼓室形成術が段階手術で行われていた。聴力成績は、TEES群22耳中21耳で、MES群6耳中5耳で「成功」であった。合併症はなく、再発例はない。stage Iの先天性真珠腫はTEESで手術されるべきである。乳突洞に進展のないstage IIもTEESの適応となる。先天性真珠腫の治療でTEESの導入は、有効、安全で低侵襲な鼓室形成術を可能にした。

テーマセッション8
  • 山本 典生, 山原 康平, 西村 幸司, 扇田 秀章, 中川 隆之, 伊藤 壽一, 大森 孝一
    2018 年 28 巻 3 号 p. 127-131
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー

    残存聴力活用型人工内耳手術では、低音の閾値上昇を起こさないように、経正円窓アプローチ、細くて柔らかい電極の使用、ステロイドホルモン剤投与などが行われているが、純音閾値上昇は避けられない。

    一方我々は、これまでにインスリン様成長因子1(Insulin–like growth factor 1, IGF1)には蝸牛有毛細胞傷害から有毛細胞を保護する作用があることを様々な内耳性難聴モデル動物を用いて示し、突発性難聴に対して徐放性ゲルを用いた臨床試験を行い聴力回復に一定の効果を確認した。

    人工内耳挿入による聴力低下の原因の一つが有毛細胞死であること、人工内耳手術時には蝸牛鼓室階に薬剤の投与が容易であること、IGF1には有毛細胞のプログラム細胞死を防ぐ効果があること、臨床試験では難聴発症後短期間であるほどIGF1の効果が高いことなどから、我々は人工内耳挿入による聴力低下にIGF1が有効ではないかと考え、動物モデルを用いて検討を行った。

シンポジウム
  • 山本 和央
    2018 年 28 巻 3 号 p. 133-138
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー

    癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎の術後に正常な中耳腔を形成するためには中耳粘膜の早期再生が重要であるが、これらの疾患では中耳粘膜機能は元来障害されているため術後の粘膜の再生は遅延し、良好な含気腔を作ることが困難である。術後に障害された中耳粘膜を早期に再生させることが可能になれば、癒着性中耳炎では鼓膜の再癒着を防止し、また真珠腫性中耳炎においては外耳道後壁を保存した上で再形成性再発を予防することが可能になると考えられる。我々は細胞シート工学の中耳への応用に着目し、自己の鼻腔粘膜を用いた培養上皮細胞シートを作製し、外耳道後壁保存型鼓室形成術の際に術後の中耳粘膜の再生を目的として粘膜欠損部に細胞シートを移植するという新たな術式を開発した。この新規治療はヒト臨床実現化にすでに成功しており、5人の患者に細胞シート移植を施行し移植後の良好な経過が得られ、細胞シートの中耳への移植の安全性と優れた効果が示唆された。

原著論文
  • 真鍋 恭弘, 徳永 貴広
    2018 年 28 巻 3 号 p. 139-143
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー

    急性低音障害型感音難聴(以下、ALHL)は、比較的予後良好な疾患ではあるが、各種薬物治療に反応しない難治例が1割から2割程度存在すると考えられる。難治例の治療は、薬剤の選択や治療継続の判断が難しく、医師が治療を途中で断念したり、患者が高次医療機関への紹介を希望する場合も多い。したがって、ALHLの臨床上の課題の一つは難治例に対する治療であると考えられる。今回、我々はALHLの難治例に対し、人参養栄湯と五苓散をそれぞれ単独で投与し、その効果を検討した。その結果、人参養栄湯は五苓散よりも、ALHL難治例に対し、有意に効果を発揮した。そのことから、ALHLの発症に漢方医学で言われるところの「虚」の存在が示唆され、人参養栄湯が効果を発揮した可能性が考えられた。また、人参養栄湯の循環改善作用が蝸牛血管条に作用し、効果を発現した可能性についても考察した。

  • 小谷 亮祐, 鈴木 雅明, 細萱 理花, 杉本 晃, 長谷川 茂
    2018 年 28 巻 3 号 p. 144-148
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー

    ミエロペルオキシダーゼ-抗好中球細胞質抗体(MPO-ANCA)腎炎に罹患、治療による腎炎寛解後、鼓膜穿孔を呈するANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA-associated vasculitis:OMAAV)が発症した症例を経験した。症例は74歳女性。鼓膜切開の既往なし。病理所見、またMPO-ANCA値184IU/mlにてMPO-ANCA関連腎炎と診断され、副腎皮質ステロイド漸減療法が行われた後、MPO-ANCA値、および腎機能は正常化し腎炎は落ち着いた。しかしその後左耳漏が出現、穿孔が確認された。MPO-ANCA値10.6IU/mと上昇していたが耳処置を継続中、MPO-ANCA値の低下に伴い耳漏停止となり、局所麻酔下鼓膜形成術を施行した。術後半年経過したところでMPO-ANCA値再上昇となり、同側鼓膜の再穿孔・耳漏を来した。その後MPO-ANCA値は低下し、耳漏は停止した。MPO-ANCA腎炎の状態は寛解後継続して落ち着いている。MPO-ANCA腎炎寛解後に発症したOMAAVは珍しく、さらに穿孔を伴った中耳炎の鼓膜所見を呈するOMAAV の過去の報告は見られていない。また本症例ではMPO-ANCA値が中耳病態の活動性の指標となり得る可能性が示唆された。

  • 本多 伸光, 高木 太郎, 中村 光士郎, 山田 啓之
    2018 年 28 巻 3 号 p. 149-154
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー

    後頭蓋窩の骨破壊と鼓室内への進展をきたした再発性顔面神経鞘腫の1例を経験した。腫瘍は頸静脈孔近傍に進展して存在し、グロムス腫瘍との鑑別を要した。側頭骨腫瘍における顔面神経鞘腫とグロムス腫瘍の鑑別には、骨破壊の進展形式を評価するCT検査や腫瘍の診断に適する造影MRI検査が有用である。経後頭蓋窩および経乳突アプローチにて腫瘍摘出術を実施した。腫瘍被膜は脳硬膜、S状静脈洞、頸静脈球と高度に癒着しており、頸静脈孔付近は剥離困難であったため完全摘出は困難であった。剥離困難な部位は被膜内摘出にとどめ、鼓室内に進展した腫瘍を全摘出して鼓室形成術を行い、術後聴力は4分法で27.5dBまで改善した。残存腫瘍に対してサイバーナイフ治療を追加した。全摘出が困難な顔面神経鞘腫に対しては、残存腫瘍の再増大が認められる場合に手術に加えて放射線治療の併用を考慮すべきであると考える。

  • 中島 崇博, 福留 真二, 松田 圭二, 東野 哲也
    2018 年 28 巻 3 号 p. 155-159
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー

    アブミ骨固着症はほとんどが底板固着を指すが、まれに上部構造での固着症例がある。1989年から2012年の間に手術にて確認した先天性アブミ骨固着(疑いを含む)のうち、2例2耳で上部構造のみの固着を認めた。聴力検査でいずれもstiffness curveを呈し、術前側頭骨CTでは両症例とも異常所見を指摘できた。手術所見にて、1例は顔面神経管と前脚との間に骨橋を、もう1例は骨部外耳道から突出した骨と上部構造との固着を認め、それぞれ鼓室形成術IIIr型、I型を施行した。

    これまでの報告ではアブミ骨筋腱骨化が最も多く、他に錐体隆起、顔面神経管及び鼓室岬角との固着がある。症例1は後天的に異所性骨化が起きたものと思われた。発生学的には、錐体隆起はアブミ骨筋と腱の形成後に形態形成と骨化が起き、迷路骨胞は複数の骨化点から順次骨化し、顔面神経管は最も形成が遅い。症例2は錐体隆起形態異常に起因する先天性固着と思われた。

  • 宮下 武憲, 稲本 隆平, 高橋 幸稔, 森 望, 星川 広史
    2018 年 28 巻 3 号 p. 160-166
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/07
    ジャーナル フリー

    初回手術として内視鏡下に真珠腫剥離・摘出を行い、術後1年以上経過観察できた先天性真珠腫症例21名21耳を検討した。真珠腫癒着箇所が1箇所であった11耳のうち10耳(92%)は鼓膜張筋腱周囲に癒着していた。内視鏡下耳科手術では鼓膜張筋腱周囲も明視下に操作でき、真珠腫が鼓室に限局した症例での遺残は認めず、術後聴力も成功率100%であった。鼓室に限局した先天性真珠腫では内視鏡下耳科手術が特に有用であった。アブミ骨上部構造の破壊を認めた4耳中3耳で、アブミ骨底板上に真珠腫上皮の遺残を認めた(遺残再発14%)。アブミ骨底板以外には遺残を認めなかった。アブミ骨底板など遺残の可能性が高い部位では、顕微鏡下に真珠腫上皮を吸引しながら剥離面を剥離する顕微鏡下操作、もしくは、助手が内視鏡を保持し、術者が両手操作で剥離する内視鏡下three hands surgeryが適していると考えられた。

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