Otology Japan
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29 巻 , 1 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
第28回日本耳科学会総会特別企画
日本耳科学会賞受賞研究
  • 水足 邦雄
    2019 年 29 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    根本的な治療法の存在しない騒音性難聴・耳鳴に対して,詳細な病態解明と,病態に基づく新規治療法の確立を目標にこれまで研究を行ってきた.まず自衛隊の検診データを活用した,騒音性難聴関連遺伝子の検討を行い,動物実験で確認されたNRF2の発現量の違いが,難聴との関連があることを発見した.続いて,動物実験による音響外傷モデルとして,爆傷による難聴のモデルを開発した.その結果,爆傷曝露後には従来の騒音負荷による難聴と比べ外有毛細胞の障害はむしろ少なく,一方で内有毛細胞のシナプス減少によるcochlear synaptopathyが生じることが明らかになった.続いて,同モデルにおいて耳鳴が生じていることを確認し,大脳辺縁系で可塑的変化が見られることを発見した.本研究のゴールとして,ヒトへの臨床応用が可能な騒音性聴覚障害に対する新規治療法を確立することを目指している.

  • 稲垣 彰
    2019 年 29 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    カルシウムイオンは細胞内シグナルのトリガーとしての機能を持ち,生体機能の制御に深く関与している.聴覚系も例外ではなく,広いダイナミックレンジを持ち持続的な感覚受容を行う聴覚機能に応じて進化した,ユニークなカルシウムイオン制御機構が重要な機能を持つことが明らかになりつつある.これらカルシウムイオン制御機構の分子生理学的なメカニズムの解明は,新たな治療起点を検討する上での手掛かりとなる.加えて,カルシウムイオンを制御する新たな薬剤は,新たな作用点を持つ治療への道を開く可能性があり,その開発が望まれる.

海外招待講演3
  • Yang-Sun Cho
    2019 年 29 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    Canaloplasty is corrective surgery for congenital aural atresia (CAA), and this surgery aims to provide patients with serviceable hearing by restoring the sound-conducting mechanism of the ear and creating a patent, well-epithelialized external auditory canal. The author performed more than 350 cases of canaloplasty until recently and the surgical procedures and outcomes in terms of hearing, sound localization, speech understanding in noise and appearance scale were introduced.

    Hearing improved to within 30 dB of air-bone gap in 58% at long-term follow-up. Sound localization ability improved at 6 months and the SSQ questionnaire also showed improvement in spatial domain. Hearing in noise test revealed that signal-to-noise ratio (SNR) improved when the noise comes from the newly-opened atretic ear or from the normal ear as well, which means a restoration of binaural processing. Analysis of an appearance scale shows that canaloplasty has positive aesthetic effects on the appearance of the ear and can effectively reduce related distress. Postoperative stenosis can effectively be prevented by application of a long-term stent.

    Canaloplasty is a safe, effective method for restoring hearing and binaural advantages, and should be considered as a first management option for patients with CAA.

特別企画 耳科手術の歴史
シンポジウム1
  • 鎌倉 武史
    2019 年 29 巻 1 号 p. 25-28
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    人工内耳埋込後の蝸牛には

    ①骨ラセン板,基底膜,らせん靱帯への即時的損傷

    ②炎症,線維化,骨新生等電極や損傷への組織反応

    が見られる.

    三次元解析の結果,人工内耳後の言語聴取能は蝸牛内骨新生の体積%と負の相関を認め,蝸牛内骨新生の体積%は蝸牛内損傷と正の相関を認めた.以上の結果から人工内耳後の言語聴取能の改善には蝸牛内骨新生の抑制が重要であり,蝸牛内骨新生の抑制には蝸牛内損傷の抑制が重要であることがわかった.

    また,片側人工内耳後の側頭骨の免疫組織化学的検討の結果,Deiters細胞や内外柱細胞等の支持細胞は人工内耳挿入の有無に関わらず基底回転側でダメージが大きく,頂回転側でダメージが小さいことがわかった.Deiters細胞や内柱細胞等の一部が有毛細胞に分化転換され得る幹細胞や前駆細胞としての役割を担う可能性が報告されており,将来内耳有毛細胞再生が実用化された場合,人工内耳後の蝸牛でも有毛細胞再生の可能性が考えられた.

  • 神田 幸彦
    2019 年 29 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    日本における人工内耳(以下CI)小児の実態調査からCI小児症例は増加し,両側CI(以下BCI)症例も増加傾向にある.両側CIの効果は初回人工内耳よりも静寂時,雑音下においても語音明瞭度が優位に改善され,また方向性の改善や逐次CI側からの聴取の改善,耳鳴の改善など有効な報告が多い.一方で一側ろうの症例のハンディキャップも近年クローズアップされ,海外では一側ろうへのCIも開始され有効性も報告されるようになってきた.BCIすなわち両耳聴の効果を挙げ,BCI装用児の通常学校就学率(82/100 = 82%)を述べる.インターバルの統計から導き出された逐次CI手術時期のcritical periodや同時・逐次CIへの考え方などを言及し,BCIや両耳聴の未来について考察する.

パネルディスカッション1
パネルディスカッション2
  • 岩崎 聡, 高橋 優宏
    2019 年 29 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    先天性外耳道閉鎖症による難聴はほとんど高度伝音難聴であり,これまでの治療法は外耳形成術や骨導補聴器であった.これらの欠点を改善できる治療法として人工聴覚器である,人工中耳(VSB)と骨導インプラント(Baha, Bonebridge)が期待されている.音質の面からはVSBが優位と思われる.VSBの術式を外耳道形成術前と後でまとめてみた.外耳道形成術後の場合は振動子をアブミ骨に直接設置する方法,正円窓が明視下におければ正円窓膜に設置する.顔面神経走行奇形により明視下におけない場合はretrofacial approachをとる.外耳道形成術前の場合はアブミ骨にclip-coupler を使用して振動子を設置する方法が第1優先であり,アブミ骨奇形があれば正円窓アプローチに切り替える.術前の画像評価でVSB手術が困難と判断された場合は骨導インプラントを選択する.

原著論文
  • 藤川 太郎, 大庭 聖也, 川島 慶之, 真壁 彩音, 伊藤 卓, 竹田 貴策, 堤 剛
    2019 年 29 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は初期において耳症状が主症状であることが多い.今回我々はEGPAの臨床像を明らかにするために,耳症状を主症状とするEGPAの一症例を呈示し,さらに自験例のEGPAと好酸球性中耳炎の臨床所見を比較した.EGPAに特徴的な耳内所見はツチ骨周囲と外耳道後壁の肉芽性炎症であり,造影3次元T1強調画像(3D-SPGR法)から示唆された後耳介動脈炎との関連が考えられた.他方,合併する難聴やめまいは別の血管炎の存在も考えられた.また好酸球増多症や末梢神経障害,顔面神経麻痺はEGPAに特徴的な臨床所見であった.これらの所見を認めた場合は積極的な全身検索を行うことがEGPAの早期診断につながると考えられる.

  • 浅野 敬史, 伊藤 吏, 窪田 俊憲, 古川 孝俊, 二井 一則, 新川 智佳子, 欠畑 誠治
    2019 年 29 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    広角で死角の少ない低侵襲な経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)をアブミ骨手術に応用しており,その有用性について検討した.対象は内視鏡下にオールテフロンピストンを用いFischのreversal steps stapedotomyを施行した22例25耳で,術後聴力成績と合併症の有無を後方視的に解析した.

    術後聴力成績は気骨導差15 dB以内が24耳,聴力改善15 dB以上が24耳,聴力レベル30 dB以内が13耳であり,日本耳科学会基準で25耳,全例が成功であった.AAO-HNS基準では術後気骨導差で10 dB以下が22耳,10–20 dBが3耳であった.合併症の頻度はめまい4例,耳鳴り3例,味覚障害2例であり,めまいの1症例を除き全て一過性のものであり,顕微鏡下手術による過去の報告と比べて少ない傾向であった.低侵襲でアブミ骨周囲を明視下におけるTEESは,アブミ骨手術においても有用な術式と考えられた.

  • 長嶺 尚代, 福島 典之, 平位 知久, 呉 奎真, 西田 学
    2019 年 29 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    多発性先天性真珠腫症例の一例を経験し,文献的考察を行った.症例は7歳女児であり,学校健診で右難聴を指摘され紹介受診となった.初診時右鼓膜後下方に白色病変が透見された.鼓膜に内陥,穿孔,肉芽形成を認めず,鼓膜切開等の既往もないことから先天性真珠腫と診断した.初回手術では鼓室後方から乳突洞にかけて散在し,大きさも形態も様々な計11個の真珠腫を認めた.1年後に実施した2nd look手術の際には,乳突洞内に2個の遺残性再発を認め,これらを摘出し鼓室形成術IV cを実施した.術後8ヶ月の時点で再発は認めておらず,聴力も良好に保たれている.多発性真珠腫については,2nd look手術において明らかな病変が見られなかった部位にも,これから数年の内に新たに真珠腫が形成される可能性も否定はできない.当面は年1回のCT検査を行い慎重に経過観察を行う予定である.

  • 玉江 昭裕, 野田 哲平, 岡 正倫, 西山 和郎
    2019 年 29 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    症例は86歳女性.当院受診までに70日間の治療を受けるが右耳漏,右耳痛が増悪し当科紹介受診.前医での右耳漏からの細菌検査で多剤耐性緑膿菌とメチシリン耐性黄色ブドウ球菌が検出されており,合併症として2型糖尿病を認めた.悪性外耳道炎の診断で入院治療を行った.当科での細菌検査では多剤耐性緑膿菌のみが検出されたが,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌も含めて抗菌薬治療を行った.ドレナージ及び悪性腫瘍の鑑別目的に手術を施行し,その後抗菌薬による治療を継続した.治療中,バンコマイシンにより腎障害が発生するなど治療に難渋したが,75日間の入院治療および20日間の外来での抗菌薬内服治療により治療後1年時点まで再発は認めなかった.バンコマイシンは治療域とされているトラフ値でも薬剤性腎障害がおこりうるため注意が必要である.

  • 北野 公一, 西村 忠己, 山中 敏彰, 北原 糺
    2019 年 29 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    耳かき外傷によるアブミ骨の損傷は不可逆的な感音難聴の原因となり迅速な対応が必要となる.しかし過去の報告では受傷当日に緊急手術が行われた例は稀である.今回我々は,耳かきで受傷した12歳男児に当日緊急手術を施行し比較的聴力を維持可能であった症例を経験したので報告する.症例は受傷約3時間後に当科を受診し,約6時間後に緊急手術を施行した.術中所見で,耳かき棒の破片を鼓室内に認めた.アブミ骨は粉砕骨折し,開放された卵円窓を通して内耳内に空気を認めた.空気を生理食塩水で置換し,側頭筋膜で卵円窓を閉鎖し,加工したキヌタ骨で伝音再建した.術後の骨導聴力は過去の報告と比較して保たれていた.アブミ骨が損傷されている例でも早期に外科的治療を行うことで聴力予後に貢献したと考えられた.

  • 松見 文晶
    2019 年 29 巻 1 号 p. 74-80
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/25
    ジャーナル フリー

    外耳道前壁深部には骨欠損が認められることがありHuschke孔(H孔)と呼ばれる.H孔に関連した症状を呈すると特発性外耳道骨欠損症といい本邦では顎関節ヘルニアの合併が多い.今回,外耳道再建を施行した顎関節ヘルニア例を経験した.症例は74歳,男性.主訴は右耳痛,耳漏.右外耳道前壁深部の発赤,腫脹を認め外耳炎として局所治療を開始したが改善に乏しく,側頭骨CTで同部位に7 × 8 mm大の骨欠損を認め,MRIで顎関節後部組織の外耳道への陥入所見があり顎関節ヘルニアと診断した.消炎後も同部位の咀嚼時の膨隆陥凹とそれに伴う耳雑音が続くため,全身麻酔下に内視鏡を用いてextended endaural approachで耳珠軟骨と側頭筋膜,結合組織を用いて右外耳道前壁再建を施行した.術後11ヶ月経過時点でも右外耳道前壁深部の咀嚼時の膨隆陥凹はわずかで,耳雑音は改善した.本アプローチは整容的に優れ内視鏡を用いることで下顎窩側の操作も十分可能であり有用と考えられた.

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